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君の願いを聞かせて

まおう・あっくんのぼうけん

作者: 河南
掲載日:2014/11/18

前世、というものを知っているか。

そう大方の諸君ご存じのアレである。輪廻転生・リインカーネーション呼び名はどうでもいいが、つまりアレだ。いわゆる中二病患者御用達な感じのヤツだ。

いまとなってはもう昔のことだが、周りのガキんちょ達がミルク臭い頃、つまり幼稚園年長組のころ、俺はとある野望を胸に秘めていた。だいそれた野望である。とうてい叶いそうにない大望である。まぁ、ここまで引っ張っといて、たんに言いたくないだけなのだが、俺は、将来なんらかの方法で世界の頂点になること決めていた。つまり、世界征服である。


当時わずか5歳のクソガキが何いってやがる、と思うかもしれないがそうだったものはそうだったので仕方がない。その頃俺は妙に頭の発達がよく、自分は周りと違って特別なのだと思っていた。読み書き計算も全部できたし、それどころか英語はもちろんのことフランス語やイタリア語、中国語の新聞だって読めた。当然レンジャーごっこやおままごとも馬鹿らしかったし、それよりも最近旬な黒魔術や海外の裏社会事情を学びたかった。


黒魔術?裏社会?馬鹿な小僧め、何言ってやがる、と話とびすぎてぽかーんとなさっている方もいるかもしれない。しかし俺はあえて言おう。そうだ、言ってしまおう。俺は、そう俺は、自分のことを巨大なる闇の力を持つ魔王の生まれ変わりだと信じていたのだ。



まて、頼む。頼むから笑わないでくれ。今思うとほんっと恥ずかしいから。



ちょっと物覚えがいいからってなんだ。口達者だからってなんだ。

どうして魔王、しかも闇の力(笑)なんて-…ああ、そうだ。アウトローな奴らに憧れちまう年頃だったのだ。ほっといてくれ。


小学校にあがり成長して、幼馴染だった皐月ちゃん(当時11歳)に、「あっくんってキモ~い」と言われて俺はようやく目が覚めた。

魔王なんてちょっと(かなり?)イッちゃってる危なっかしいものに憧れるのはやめよう。今度から俺は真人間として平凡かつ平穏に生きてみせる!っと。

そしてあわよくばかわいい女の子とうっふんあっはんな性活を、なんて……あばばば。それはともかく。


屈辱の小学校時代&中学校時代(悲しむべきことにほぼ同じメンバーのまま進学した)を終えて高校に進学し、そこそこに青春をして大学に入った。

残念ながら未だ「彼女」というものにはめぐり合えたことはないが、いつかたぶんおそらくきっと出会えるはずだ。

同郷の友人などは冷めた目で俺をみるが、まだ諦めていない。諦めたらそこで試合終了だって安○先生もいっていたぞ!


そんなわけで、ねばり強さには定評のある俺は今夕飯のメニューについて真剣に考え込んでいる。

もう、ね。二時間ぐらい考えているのだが一向に決まる気配がない。だって今財布に入っているのは銀色まぶしい100円玉一枚なのだ。週末バイト代が出るとはいえ、この三日間どう生き残れと?


たかが食事、とあなどってはいけない。人間の三大自然欲求は性欲、睡眠欲、食欲なのだ。三日間ということは3×3で9回の食事を100円玉一枚で用意しなければいけない。ちなみに冷蔵庫にはビールしかない。さて、どうする。


………どうもできない。無理、無駄、無意味だ。嗚呼、泣けてくる。

こうなったらわ●めしかないか。ふえるわか●くんで腹をみたすしかないのだろうか。


ふらふらと食品コーナーをのぞいていたら、余計腹がへったので、いい加減スーパー

から出て行くことにした。

店員の視線が心なしか痛い。ごめん、お金ないんだ。どうやっても増えないんだ。

だれか俺にお金を恵んでくれ。じゃなきゃ食べ物でもいい。この際食べかけだろうが、なんだろうが我慢する。生ごみは嫌だけど。


そう考えたところで、ふと一個下の後輩がコンビニでバイトをしていたことを思いだした。

…そういや廃棄品とかこっそり持ち帰ったりするって話してなかったっけ?してたはず、いや絶対してた!おぉ、これはいかねばならん。俺の灰色の脳細胞がいまこそ行動する時!と叫んでいる。


「やるぜ、俺はやるぜ、うおおおお!!」


馬鹿なことをした、と後になって俺は思った。

あの時、あの場所で、あんな中二なセリフを喋らず、走り出さずにいたらきっとこんなことにはならなかっただろう。

しかし、この時とその後、どちらが幸せなのか未だに俺はわからない。わからなくてもいいかもしれない。

どちらにしろ、俺は転んだから。


「ぶへっ!?」


無様な叫び声をあげ、俺は自分で自分の足にひっかかるという、ある意味器用なことをした。

慌てて体勢を立て直そうとするのもつかの間、眼前にありえないものを発見する。


「……あれ?」


穴、だった。とてつもなく大きな穴。

まさか明日のジョーよろしく網膜なんちゃら病にかかってしまったのではあるまいか!と思う暇もなく不自然な体勢だった体が傾ぐ。


「あれれ?」


これ、もしかしてやばいんじゃね?


行き場もない手が宙をつかむ。「あ」と口を開けたそのまま、後はまっさかさまに落ちていった。







目をあける。

視界にうつる見覚えのない天井。


「……し、」


おぉっと!危ない。またこんにちは黒歴史な台詞を言うところだった。

ははは、うっかりさんだなぁ、おれってば。


よいっしょ、と起き上がろうとしてふと違和感に気付く。

あれ、なんか手ちいさくね?


立ってみてさらに違和感。

あれ、なんか視界低くね?

てか、全体的に小さいというか、服もこども服というか…


「あれ?これもしかして、若がえ(ry」


ちょ、自重しろ俺ぇぇええっ!! 

部屋中をさがしまわって鏡を発見する。


「っ!!」


そこに映っていたのは、黒い目黒い髪、するどい目つきをした俺……の中学生時代の姿が。

誰か説明ぷりーずみー!!!


しばらく人を探してきょろきょろしていたが、部屋には誰も見つからず、見つけたぶ厚いドアを開く力もなく。


と、いうわけで只今人生の迷子中な俺。

もうどうするの、ってかどうなっちゃうの?

一応携帯持ってたんで、実家やら友人宅やらにかけてみようとしたんだが圏外だし、そもそもここ何処かわからないし。

半泣きになりつつ家探していたら、でるわでるわ。剣やら宝石やら杖やら人形やら、こーなんつうか、ファラオの墓にあるアレ。副葬品っぽいやつが、ね。ってか、今まで部屋部屋いって誤魔化してたけど、ここって全体的に石造りだし、窓は遥か遠く頭上に一つあるだけだし、酸素とか大丈夫なの?俺、このままだと窒息死するんじゃないの?

一体全体誘拐犯は何を考えて俺をこんなとこに連れ込んだんだ……と、現実逃避してみる。


いるよね?誘拐犯。某探偵少年よろしく俺をちっちゃくして薄暗い部屋に閉じ込めて、そんでもって俺を受け取りにきてくれる人いるよね?全財産100円な俺だけど、誰か助けてくれるって信じてる。だってそうじゃないと、死亡フラグじゃないですか……


やたらと豪奢で偉そうなドアをぶったたいたり、開けゴマと唱えてみたりしたけど全然ダメ。もうダメ。だいたい鍵穴ないってどういうことですか。訴えますよ!


「これはアレかな。魔法の力(笑)とかで開くパターンかな?」


ああ、若かりし頃の黒歴史まで蘇ってくるよ。これが走馬灯ってやつ?

疲れきってもう動きまわることもできない俺は、戯れに先ほど発掘した杖を振り回してみた。


「大いなる闇の力よ。我が声にこたえよ。閉ざされし門を開き、目覚める時がきた。魔王アウレカの名において命ず、門よ開け。我が呼び声に応えよ――」


……なーんてな、なーんてな!てへへへっ!

他人に見られたら発狂ぶりの台詞を唱えつつ、びしっとポーズを決めてみる。

両足を軽くクロスさせ体重は前にかけて、杖をもつ手を前に、もう片方の手をななめ後ろに。後はマントがあれば完璧――って、何をやってるんだ。

もう魔王とか、闇の力(笑)とかは忘れたはずだっただろ!こんなんじゃなくて、他の――


「ま、おう、さま……?」

「へ?」


唐突に聞こえた低い声に、俺は抱えていた頭をあげた。

いつの間にか、一人の男が俺の前に立っていた。

薄汚れた鎧を纏い、槍っぽい武器を手にした男はおそるおそる俺に近づき、片膝をつく。


「魔王様……魔王様ですよね!?ああ、その黒い髪!黒い瞳!貴方は魔王様ですよね!?」

「え、ちょっ、何」


え、何。なんなの、これなんかの撮影?下からずりずり近づいてくる男に軽く恐怖を覚えつつ逃げ場を探る。

あっ、ってかドア開いてる!開いてるよ!いつの間に?いや、それよりも今はここから逃げねば……


「魔王陛下…?」


あ、ダメだ。


男を引き離し、ドアから逃げようとしたところで俺は敗北を悟った。

何故なら逃げようとしたその唯一の出口から、また新たな刺客が飛び出てきたからだ。


「陛下っ……!お目覚めになられたのですねっ!よかった、本当によかったっ」


涙目の刺客が鎧の男を蹴飛ばして、抱きついてきた。

うぇっ…ちょ、勘弁して下さい。男の胸板とかノ―サンキューだからっ!いらないから!


男の腕の中で身悶える俺はまだ知らなかった。

この後、男達の王宮に連れられて、五万三千人(匹)ばかりの直属の部下(自称)から泣きつかれる運命だとは……

さらに、千年ぶりに目覚めた魔王としてこの異界の地で名をはせ、むくつき男達から羨望と尊敬の視線を集めることになるとは、その時の俺には全く予想できなかった。


そもそもどーしてここには強くて美しい女性がいないんだよっ!

泣き崩れる俺をよそに、俺の黒歴史はこうして、過去から未来へとつながっていく。


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