17 門番
三日空きましたが、また更新していきたいと思います(活動報告に詳細)
引き続きお付き合いくださる方はよろしくお願いします。
「ジュール様! あれは『緋色の悪魔』じゃありませんか!? イズリーですよ!」
レイクが言っているのが、あのイズリー・オズウェルだとしたら――。
「まさか」
と、言いながら、ジュールも認めざるをえなかった。
あれほどの大男はそういない。
ジュールの身長もかなり高い方だが、イズリーに比べれば雛鳥のようなものだ。
イズリーは既に滅んだサンカ帝国の武人だ。
戦場で大国ラーシェンと闘った大立ち回りは伝説となっている。
槍の名手で、敵ながら天晴れの勇猛果敢な振る舞いだった。
圧倒的な負け戦だというのに獅子奮迅の活躍をしたイズリーは、一騎当千、一人で千人並みという類い希な武人だった。
「ラーシェンの地下牢で捕虜になっていたはずだが……革命後の混乱で外に出たのか」
「うわあ、本物ですよ。あんなデカイ男どこを探したっていません。どうします」
「どうってお前……サインでも貰うつもりか」
「ええ、だって本物のイズリー・オズウェルなんて! どういうことです!? あの狂犬のような男を手なずけるなんて」
「知るか、俺が聞きたい。全くここの城を買ったアスタリヤとかいう女はとんでもないぞ。絶対にただ者じゃ無い」
ジュールのこめかみにじんわりと汗が滲んだ。
あの緋色の悪魔と称されるイズリーを門番にするなど、地獄からケルベロスを連れてくるようなものだ。
一体全体どうしてそうなったのかは分からないが、絶対にありえない光景だ。
レイクはぼうっとした顔でイズリーを遠巻きに見ている。
歩けば距離は縮まる、当然のことながら。
桟橋をキシキシいわせながら、一行は歩みを進めた。
ジュールはそっと帯剣している腰に手を当てた。
相手は槍を使うだろうが、こちらは魔法と大剣がある。
身構えながらじりじりと距離を詰め、ジュールたちは門番として立つイズリーの巨体に向き合った。
エメラルド色の瞳をしたイズリーが、ぎょろりとジュールたちを見た。
「……ようこそ」
ジュールの人生史上、全く歓迎されている気分がしない『ようこそ』だった。
「……将校のジュールだ。レディ・アスタリヤに面会を願いたい」
「聞いている。だが」
空を突くような、普通のものよりもはるかに長い槍がどんと桟橋の板を叩いた。
「なぜこれだけの人数の兵隊が必要なのか?」
その一言でビリリッと空気が震えた。
あまりの緊張した雰囲気とイズリーの覇気に、最も若手の兵士がその場にへたりこんだ。
ジュールは腹をくくって、ぎょろついたイズリーの目を見据えた。
エメラルド色の瞳を見上げて冷静に告げた。
「彼らは私の護衛だ。一応これでも、守られる立場なんでね」
イズリーが鼻で笑う。
「ハッ! 将校に成り上がる程の実力があれば護衛など要らないはずだろ。革命の後のラーシェンは腑抜けばっかりなのか」
周囲の兵士たちが剣の柄に手を添え、臨戦態勢をとっている。
一触即発だ。
ジュールはなるべく相手を刺激しないように言った。
「何も無ければ彼らが貴殿らを攻撃することはない」
「何も無いに決まっている。この俺が門を守っているんだ」
台詞だけ聞けば、自身家のそれだが、イズリーが言うと重みが違う。
事実だろう。
イズリーほどの猛者が立っていれば、盗賊もならず者も古城に侵入することはできないだろう。
「護衛は3人までだ。それ以外は認めない」
ジュールは刃向かおうとする後ろの兵隊たちを押しとどめた。
大柄なジュールよりも上背のあるイズリーは槍を持っているとまるで鬼のように見える。
兵隊たちが怯んでいる時点でこちらの負けだ。
ジュールは小さく頷くと言った。
「分かった。それでいい。レイク、ライ、フィガー来てくれ」
レイクと一緒に精鋭の中から二人が前に進み出て、ジュールの周りを囲んだ。
猛者ぞろいの強者どもが、かたずをのんでなりゆきを見守っていた。
(レディ・アスタリヤはいったい、何者なんだ)
と、全員が不安じみた疑問を抱いていた。
ジュールをここまで手玉にとれる女など、世界中を見渡してもいないはずだった。
将軍と将校が入り交じってしまった……将校に統一したいのですが、見逃しているところがいっぱいある気がします。お気づきの点あらば誤字報告頂けると助かります。




