おにぎり屋ふくふく|クロのはじめてのおしごと
次の日も、その次の日も――
黒猫は、店の前に来ました。
ふくさんは笑って言います。
「いらっしゃい、クロ」
黒猫は、しっぽをゆらりと揺らしました。
もう、名前をもらったことが分かっているみたいに。
ミケが言います。
「新入りさんね」
まぐろがのぞき込みます。
「クールだねぇ」
トラはくんくん。
「シャケのにおいがするやつだ!」
シロは、そっと微笑みました。
「よろしくね」
クロは少しだけ目を細めて、
「にゃ」と小さく返事をしました。
その日、ふくさんは少し忙しそうでした。
お客さんが次々にやってきます。
「ふくさん、いつもの!」
「今日は多めにお願いねぇ」
ふくさんは、にこにこしながらおにぎりを握ります。
けれど――
「あらあら、ちょっと手が足りないねぇ」
すると、クロがすっと立ち上がりました。
カゴの中のおにぎりを、ひょいと。
器用にくわえて――
トコトコトコ。
お客さんのところまで運びます。
「おや、配達してくれるのかい?」
「かしこいねぇ!」
クロは、そっとおにぎりを差し出しました。
「ありがとうねぇ」
その声に、クロは少しだけ誇らしそうにしっぽを揺らします。
それを見て、ふくさんは笑いました。
「ふふ……お手伝いさんが増えたねぇ」
ミケたちも言います。
「クロ、やるじゃん」
「配達係だね!」
「似合ってる!」
クロは、少しだけ胸を張りました。
その日から――
クロは、おにぎりを届ける係になりました。
ふくふくのおにぎりと一緒に、ちいさな元気も運びながら。




