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第7回なろうラジオ大賞参加作品

〜戦時下の甘味物語〜そのホットケーキは機械油で焼かれていました。 

作者: 辻堂安古市



なろうラジオ大賞参加作品です。








ほかほか ふんわり。

その上には 甘〜いシロップがとろ〜り。


ホットケーキはなんて美味しそうなんでしょう。


でもね。

私が思い出すのは、ちょっと違うホットケーキなんです。






昔、世界中が大きな戦争をしていた時がありました。


その時は、兵隊さんに食べ物を沢山送っていたので、残っている人達の食べ物はすごく少なかったんです。少なすぎてお金があっても買えなくて、切符で食べ物を受け取ってたんですよ。



信じられないでしょう?



みんないつもおなかペコペコ。お米の代わりにサツマイモや麦が配られ、甘いお菓子なんて夢でしか食べられませんでした。






私のお母さんは、軍需(戦争で必要なもの)工場で服を作っていました。毎日毎日、一日中ミシンで服を作るのです。そのミシン達に機械油をさすのも、お母さんの仕事でした。



 ある日、お母さんはミシンにさす機械油を持っていた布きれに浸し、家に持って帰ってきたんです。



 なぜかって?



 その油をフライパンにひくためなんです。





 ……え?


「そんなの大丈夫なの?」ですって?



 そうですよね。今なら絶対お腹こわします。


 でもね。あの時は石油がなくて、代わりに菜種油とか松の根っこから採ったりしてたんです。お母さんが工場で使ってた油も、菜種油だったんです。



 それに気づいたお母さんは、こそーっと持って帰ってきたってわけです。



 で、それで作ってくれたのが「ホットケーキ」。


 もちろん、今のものとは全然違います。牛乳もホットケーキミックスもないですし、砂糖もシロップもないんですから。



 でも、お母さんはすごく工夫をしてくれたんです。



 シロップは配給のサツマイモを切って煮出した甘い水。煮詰めて少しだけとろりとしてました。


 ホットケーキは、小麦粉と卵とさっき煮たサツマイモをつぶして混ぜて。 



それから……


「でも、これじゃふくらまないわよね…そうだ!」


 お母さんは水に重曹を入れ、お庭で育っていた夏みかんを絞りました。



 しゅわ しゅわ …



 出来上がったのは炭酸水。少しでもふくらませようとしてくれたんです。そうやってお母さんが作ってくれたのが、私の記憶に残るホットケーキです。



 あの時のホットケーキはキラキラ輝いて見えて、本当においしかった。みんなで夢中で食べました。



 そりゃあ今のホットケーキに味は敵いません。でも、Γあの時のキラキラしたみんなの目は忘れられない」ってお母さんがよく言っていたように、あれほどワクワクした食べ物はなかったと、今でも思うのです。






お読みいただきありがとうございました。


このお話しは、

NHK「あちこちのすずさん」より

「機械油でホットケーキ」


https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=C0060948


より着想を得ています。



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― 新着の感想 ―
以前に「戦下のレシピ」という本を読んだ事があるのですが、砂糖が配給制になったりお菓子が作られなくなったりした大戦後期には、もち米と砂糖の代わりに里芋を使ったおはぎや米ぬかを炒ってチョコレートの風味を出…
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