表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/43

用語集

おまけです。

〈最初に〉


 ■ 五十音順に記載しています。

 ■ 解りやすさを重視するために、度量衡は現実基準のものを使用します。

 ■ 作中と表記や内容に若干の差異があるものがあります。

 ■ 筆者の言い訳もあります。

 ■ ネタバレもありますので、本編を一読されてからがよろしいでしょう。





~あ行~


あか〉の貴族【文化】

 レスニア王国の貴族内でのみ使われる非公式の区分。新暦前、王位継承を賭けて争った双子王子の兄側に加担した貴族たちのこと。

 結局、勝利したのは弟王子側であるため、兄王子側についたほとんどの貴族が反逆者として粛清され、断絶した。しかし、様々な思惑で奇跡的に存続を許された家も少数ながら存在し、その血を引く者が現代まで残っている。

 この物語の主人公であるイングリッドが生まれたノルダール男爵家もその一つ。しかし、周囲からは未だ反逆者の末裔という認識で、風当たりが強い生活を送っている。



或いは、もう一人の少女剣聖【表題】

 第39話のタイトル。

 この世界における剣聖の条件がようやく開示された記念すべき回である。

 最初は「或いは、もう一人の――」のみだった。この回を読んでいただければ、そのあとに続く言葉に何が入るのか、きっとわかってもらえると思った……のだが、アップする直前、やっぱりストレートに書こうと心変わり。

 正直、この話を書いたおかげで、少女剣聖伝シリーズで伝えたい精神的テーマの半分はクリアした気がします。



アルバローズ【人物】

 →マルクスを参照。



アルバローズ【武具】

 イングリッドがとある甲冑師に依頼して特別に作製してもらった女性用の甲冑。

 正式な銘ではないが、愛称として呼んでいる。あれだ。機動警察パトレイバーで、主人公の野明が一号機をアルフォンスと呼ぶノリだ。

 作中でも語られている通り、飛剣という技をより効果的に使うために設計された改造甲冑。あちこちの隠し鞘に投擲用の短刀を内蔵しており、飛剣のデメリットである武器の喪失を補うだけでなく、敵対する者に対して『武器を失って、もう打つ手がない状態』を欺瞞することができる。

 そういった目的で作製されているので、純正パーツじゃないとメダチェンジできないメダ3のメタビーのごとく、胸甲鎧・籠手・脛当ての一式すべてが揃わないと最大限の力が発揮できない。

 その他の特徴としては、女性の筋肉でも扱えるよう出来得る限りの軽量化が試みられており、装甲に曲面構成を積極的に取り入れている。これは丸みを帯びた形状にすることで相手の攻撃を上滑りさせ、装甲が薄くても十分な防御効果が発揮できる工夫である。加えて、山なりに歪曲させたことで鎧の内側に空洞が生じるため、そこに女性ならではの胸の膨らみを収めることで快適に戦えるようになった。

 このおっぱい空間は非常に重要な要素で、アルバローズを手に入れる前までは男物の鎧を無理して装備していイングリッドは、着用するたびに胸が押しつぶされて呼吸がしづらいというデバフを常時抱えていた。それが解消されたことで、購入後の彼女の戦闘性能は二割以上高まっている。

 さて、お気づきの方もおられるかもしれないが、「新約・少女剣聖伝」で登場したローザリッタの鎧の正体がこれだ(旧約版は蔵から適当に持ち出した鎧)。もっとも、本人は来歴を知らなかったようなので、イングリッドは娘の前では自分の過去を語らなかったのかもしれない。



イール地方【地理】

 レスニア王国の西に広がる地方。エインセル・サーガシリーズでしばしば舞台となる土地でもある。



イングリッド【人物】

 女性。18歳。身長:156cm。体格:90/58/86(G65)

 この物語の主人公。

 没落貴族ノルダール男爵家の長女。十六の時に婚約者であるニガートから婚約関係を破棄され、それ以降は傭兵として生傷絶えない生活を送っている傭兵娘。

 戦闘では、父から手ほどきを受けた正統派騎士剣術と傭兵剣術を組み合わせた独自剣法を遣う。得意技は飛剣からの攻撃誘導後のカウンター。

 自分が何がしたいかよりも、自分に何ができるかを念頭に考える性格。仕事に対して夢とか理想を抱くことはない。傭兵を選んだのも、剣術が得意で、なおかつ生まれや育ちを問われないから、というだけ。

 現実主義者であるが故に、「生死を賭けた戦いにおいては、同じことを自分がされることを受け入れるのなら、どんな手段を取ってもいい」というシビアな判断基準を持っており、勝つためならば奇襲、不意打ち、騙し打ち、何でも肯定する。

 ただし、その覚悟のない人間がそういう手段を使うのは卑怯で理不尽な行為であると考えるため、終盤のエレーヌに対してあのような毅然とした対応を行った。

 ドライな性格に反して、家族を非常に大切に思っており、理不尽な結婚破棄を食らって傷ついたものの、そこで自身の血を憎んでしまうと自分を産んでくれた両親を憎むことになってしまうため、「だったら結婚のほうを諦める!」と割り切ることができるくらいには家族大好き。家族間の絡みがなかったのはひとえに筆者の構成力不足である。

 恋愛経験はほぼない。唯一と呼べるものは、野犬に襲われているところを助けてくれた少年剣士に対する一目惚れだけだが、それも美しい思い出くらいの認識。未来の旦那の正体が、まさか初恋の少年剣士だとは夢にも思うまい。

 作中で詳しく語られていないが、ものすごいわがままボディをしている。それを事細かに描写しなかったのは、イングリッドに性的な魅力があるように書いてしまうとライバルとして設定したエレーヌが霞んでしまうから。

 だったらもっと貧相な体型にすればよかったじゃん――という指摘もあるかもしれないが、のちに生まれてくる娘の存在がそれを許さなかったのだ。

 名前の由来は女優イングリッド・バーグマン。そして、同名の赤バラから。なんせ〈紅〉の家の娘なので。



ウルスラ【人物】

 女性。26歳。身長:175cm。体格:89/65/90(D70)

 イール地方を中心に活動する女傭兵団〈宵鷺〉の団長。

 頬に走った刃物傷、大柄で筋肉質な恵体、そして褐色の肌が特徴的な女傭兵。

 傭兵時代のイングリッドの上司。部下の寿退社を引き留めない上に、行く末の心配をしてくれる心優しい性根。しかし、愚かな振る舞いには鉄拳制裁も辞さない体育会系でもある。

 戦場帰りとしてそれなりに有名な剣士。ヤサカ傭兵の出身で、イングリッドが遣う飛剣も元は彼女が伝授したもの。そのため、いざ二人が戦えば手の内を知り尽くしているウルスラに軍配が上がる。

 元々は国境沿いの地域の戦災孤児であり、厳密にはヤサカ地方の民ではない。行き倒れているところをヤサカ傭兵の中年男性に拾われ、そのまま養女となり、一人で生きていけるよう傭兵の技を叩き込まれて育つ。

 一人前になってからは養父と一緒に戦場を駆け抜けたが、彼女が二十歳を過ぎた頃に古傷が祟って死別。死の間際、「好きに生きろ」と言われるものの、育てられた恩義を感じていたウルスラは養父の愛刀を受け継ぎ、その名を絶やさぬよう傭兵を続けることにした。

 しかし、独り立ちは順調ではなかった。これまでは養父の評判で使ってくれた顧客も、ウルスラ独りになると急に態度を変え、敬遠するようになった。女だと侮られるのが悔しかったが、歯を食いしばって実績を積み上げ、数年後には女だけの傭兵団を結成するほど成長する。

 まだまだお嬢様っ気が抜けないイングリッドをそれでも雇い入れたのは、彼女の一人で生きていくのだという決意に、昔の自分を見たからかもしれない。



エレーヌ・ジュグラリス【人物】

 女性。21歳。身長:162cm。体格:92/56/88(H65)

 先代当主クリストフの妻。前伯爵夫人にして、今回の黒幕。

 艶やかな黒髪に白い清楚な衣装の、しっとり人妻系美人。上品ながらも、童のように愛らしく笑う。

 幼い頃から政略結婚の道具として、美貌を磨き、教養を身に着け、品格を備える教育を徹底的に施された典型的なお嬢様。それでいて屋敷の女主人としての腕前は、はっきり言ってイングリッドが太刀打ちできないほど有能。正に才色兼備。

 しかし、それ以外の生き方は与えられていないし、望まれてもいない。自分は結婚することしか価値がない。そういう諦観がどこかにあった。

 物語開始より三年前に、幼馴染であり、許嫁でもあったクリストフと結婚。幸せな結婚生活を送っていたものの、二人の間には子供がなかなかできず、内心では焦っていた。

 そこへ追い打ちをかけるように、夫が急逝。さらには、新しく当主となったマルクスからは「跡継ぎがいないことと、統治政策の方針の兼ね合いで実家へ戻す」と言い渡される。平静を装っていたものの、この時はかなり絶望の淵に立たされていた。

 マルクスとしては「義姉上はまだ若いし、再婚の見込みは全然あるから、この家に縛らなくても……」というくらいの認識だったが、これまでの自分の人生の全否定されたエレーヌの心境はいかほどのものだっただろうか。

 その心の隙に付け込まれる形で、真の黒幕である反マルクス派の親族たちに利用され、イングリッドの襲撃計画に加担してしまった。最後はイングリッドと一騎打ちをすることになるが、その結果は本編を読んでほしい。

 貴顕の美を獲得していることもあり、かなりグラマラス。主人公とライバルが揃ってわがままボディなのは絵面としてあまりにも節操がないと思うが、やはりライバルお嬢様というものは肉体的にも恵まれていないと様にならないと思うので致し方ない(存在するのかな、主人公よりも貧相な体型の悪役のお嬢様とか)。

 実家に戻されてからの彼女の設定は考えていないが、イングリッドの影響を受けて結婚以外の道を見つけているかもしれない。それこそ花屋を経営したりして。ローザリッタとどこかで会っていたりするかもと想像すると楽しい。

 名前の由来はフランスの舞踏家エレーヌ・ジュグラリス。そして、同名の白バラから。作品のテーマが紅白なこともあって、イングリッドと対を成す白いバラの名が相応しいと思い命名した。



オーダーメイド【武具】

 本編中にも書いている通り、武具というものは基本的に受注生産である。

 武器も防具も使用者の体型・能力・スキルに合わせて製造しないと、最大限の性能が発揮できないからだ。

 しかしながら、オーダーメイドは時間も掛かれば金もかかる。資金に乏しい傭兵はもっぱら中古品しか買えず、製造者やデザインがバラバラでつぎはぎだらけの装いとなるのが常だ。先行投資とはいえ、一介の傭兵に過ぎないイングリッドがいかに思い切った買い物をしたかがわかるだろう。

 余談ではあるが、武器屋防具というのは鍛冶屋が製造者であり販売者である。

 ゲーム的なイメージの武器屋、防具屋というものもあるにはあるが、それは戦場から拾ってきた中古品などを扱う中古屋のことを指す。

 そもそも武器という物騒極まりないものを、庶民がいつでも手に入れられるような状態を為政者が歓迎するわけもなく(一揆だの下剋上だのの危険性があるため)、商人による武具の取り扱いには一定のルールがあり、自由に販売できない。

 しかしながら、害獣だのなんだのが存在する世界ではあるので、庶民にも自衛の手段は必要。そこで、中古武器に限り再加工を目的とした鉄くず(資源)扱いであり、武器じゃありませんよ……とかで販売、購入を黙認されている。もっとも、高額なので気軽に買えるかというとそうではないのだが。

 初期稿ではそういう話を事細かに書いていたのだが、それだけで一万字近い文章量になってしまい、ためし読みでも「あまりにも蛇足」と身も蓋もない指摘を受けたため泣く泣く削除した。



お茶会【文化】

 この世界の貴族社会のイベント。

 社交界シーズンに宮廷で催されるものではなく、地方領主と、その麾下の下級貴族たちとの定期連絡の会合。当主たちは何かと忙しいこともあってか、その妻や娘が名代で参加する。

 お茶とお菓子を楽しみながら情報交換を行うが、大部分はお互いの家の愚痴を言って終わる。





~か行~


貴顕の美【スキル】

 先天性のパッシブ・スキル。

 キャラクターメイキング時に、出自表で「王族・貴族」となった場合、高確率で獲得する。それ以外の出自でもランダムタレントで獲得できるが、かなり稀。基本的に失うことはできない。

 品種改良じみた血統操作による美貌。遺伝によってもたらされるものであり、本人がどれだけ嫌でも勝手に美しく育ってしまう「呪い」。特権階級に多く発現する。

 基本的にはただ美しいだけであり、能力値には直接影響しないが、純度が高ければ他者に対し魅了系の精神干渉を行うことも可能。最高純度になると国を傾かせることもできる。全体的な肉体造形だけでなく、声帯、手首、鎖骨などの特定の部位だけが以上に魅力的なパターンも存在する。

 物語中でこれを獲得している人物はマルクス、エレーヌ、そして、イングリッドの三名。ただし、イングリッドは没落家系ということもあってか水準すれすれの純度で、前二人とは松明と蝋燭くらい火力が違う。主人公なのに。



兄弟戦争【歴史】

 物語開始時より約七十年前に勃発した、王国を二つに引き裂いた内紛。

 なので、厳密には戦争ではないが、響きを優先してこうなった。もっとマシなネーミングはなかったのだろうか……。

 詳細は作中でマルクスが語った通りだが、二大勢力の色分けがどうして〈紅〉と〈白〉になったかというと、元凶である双子王子が所有する刀に由来する。

 二人が成人する際、兄王子には〈紅蓮〉、弟王子には〈白蓮〉という二振りの刀が父王より与えられ、そこから紅白の旗が掲げられたのである。

 現政権の礎であり、象徴でもある〈白蓮〉は国宝・神器として王宮にて厳重に管理されているが、〈紅蓮〉は内乱のどさくさで行方知れずになっている。

 余談だが、その二振りを打ったのは、せめて炊き立てのご飯をで古銭刀を打ったとされる刀鍛冶である。



クリストフ【人物】

 マルクスの兄であり、先代伯爵。

 物語開始時点ではすでに死去している。病死だったらしい。

 先々代の事故死を受け、物語開始の三年前に爵位を継いで当主となり、許嫁だったエレーヌと結婚。

 仲睦まじい夫婦だったが、残念ながら二人の間に子供できなかったが、妻一筋だったために側室を取ることもなかった。

 ……世の中、ままならぬもの。それが原因で今回の事件が起きたと言っても過言ではない。



グレタ【人物】

 女性。年齢50歳。体型:老いぼれのサイズなど知ってどうするのです。

 伯爵家の侍従長。

 白髪交じりの初老の女傑で、イングリッドからは躾に厳しい祖母のような印象を持たれている。戦闘力は皆無だが、それ以外の雑事はプロ級にこなせる器用な人。マッサージはお金が取れるレベル。

 若かりし頃はクリストフ、マルクス兄弟の乳母を務めたこともあり、侍従長という肩書以上に影響力を持つ。当主であっても頭が上がらない存在であり、裏の女主人とも呼ばれる。

 かつては伯爵夫人であるエレーヌの側仕えであったが、物語開始時点ではその任を解かれ、屋敷に慣れないイングリッドを補佐するポジションに就く。

 イングリッドの味方であることを印象付けるため、作中、エレーヌに対して冷たい対応をすることがあるが、本心ではエレーヌのことは別に嫌ってはいない。あくまで当主であるマルクスの判断に従っているだけである。

 物語終盤、暗殺者の毒針からイングリッドを庇って負傷するが、ウルスラの助太刀もあって一命をとりとめる。

 一病息災とでも言おうか、一度死にかけたことで体はより頑強になり、その約十七年後である少女剣聖伝の時代でも存命。老骨に鞭を打ちながら、悪童であったヴィオラを一人前の侍女として鍛えたとかなんとか。



コウギョクジバチ【生物】

 地中に巣を作る社会性の蜂で、辺境最大の狩り蜂。

 その名は体を彩る金属的な赤色をしているから……というだけでなく、地面を掘り返した者が紅玉を発見したと思って喜んだら蜂だったという逸話が元になっている。

 ファウナの庭・外伝「幻の蜂蜜を求めて」にも登場する蜂。



国家予算集会【組織】

 レスニア王国において、秋の終わりから冬にかけて王都で開催される王国の資産を決める集まり。一年の収穫を祝い、領主からの税の上納を行う。

 王族、宮廷貴族、地方貴族が一堂に介する一大イベントであり、この世界での社交界シーズンはこの時期を指す。少女剣聖伝で言及される天覧試合もこの時期に開催される。冬の間は王都の別邸で過ごし、雪解けの春に地元に帰るのが定番の流れ。

 もし、続編を書くようなことがあれば、次はこれが舞台になるのではなかろうか。

 ……しかし、これももうちょっとマシなネーミングにならなかったのか。





~さ行~


〈シルネオ〉【地理】

 モリスト地方における最大の都市。ベルイマン伯爵家のお膝元。



〈白〉の貴族【文化】

 レスニア王国の貴族内でのみ使われる非公式の区分。新暦前、王位継承を賭けて争った双子王子の弟側に加担した貴族たちのこと。

 現代の主要貴族たち。ベルイマン伯爵家のように新政権前より君臨する古い貴族もいるが、論功行賞で宙に浮いた〈紅〉の貴族たちの領地を埋める形で成り上がった若い新興貴族たちが半数を占める。

 彼らは真っ当な能力ではなく、時代の流れと、内紛のどさくさで今の地位を手に入れているため、それを維持しようと躍起であり、〈白〉にあらずんば貴族にあらずといった風潮を生み出した。いわば、今作の見えない敵である。



先々代ベルイマン伯爵夫妻【人物】

 クリストフ、およびマルクスの両親。

 夫婦揃って政務のために馬車で移動していたところ悪天候に巻き込まれ、雨と風で馬車が転覆。そのまま夫婦ともども死去する。この死を受け、長男であるクリストフが当主を引き継ぐことになり、許嫁であったエレーヌと結婚することになる。



戦闘描写【その他】

 今回は少女剣聖伝の系譜とは思えないほど、戦闘シーンが少ない。

 これは試しに読みの段階で、「あまり戦闘シーンが多すぎると物語の趣旨から外れる」と指摘を受けたからである。戦闘や剣術に関する描写、武器防具の薀蓄、そういった要素を最低限に留め、できるだけ人物同士の遣り取りだけで物語を進めてみようという試みである。

 それでも、筆者が意図的に残したのは第1話、2話の野盗退治。

 後にイングリッドがマルクスと手合わせをする際、マルクスの強さをより引き立たせるためには、まずイングリッドがどれくらい強いのかを読者に示さねばならない、と考えたから。

 残した1・2話のおかげで、野盗<イングリッド<マルクスはすんなり頭に入ったのではないだろうか。

 それにしても、この取り組みは自分的にかなり苦行だった。日頃から、場面を持たせるのに戦闘描写とか薀蓄にそれだけ頼っていたのだろう。いい気づきになった。





~た行~


トーマス【人物】

 伯爵家の馬屋の管理人であり御者。

 第四章で街へ降りる道中、暗殺者たちの襲撃を受けて犠牲になる。

 ところが、作中ではグレタばっかりスポットライトが当たっており、あまり目立たなかった。そして、ぶっちゃけ筆者も存在を忘れていた。ごめん。



飛んできた【台詞】

 誇張でもギャグでも何でもなく、少女剣聖伝ではお馴染み〈空渡り〉という技のマルクスなりの表現。今回は本当にバトル描写と説明を削ったのです。





~な行~


ニガート【人物】

 パンドゥーロ商会の若き頭。最終的には婉曲的にざまぁされた。

 英語でケチを意味するniggardが名前の由来なのだが、ニガー《《ド》》ではなくニガー《《ト》》と間違って記憶していたため、書き始めた段階で濁点が取れてしまった。ごめんね。



ノルダール【貴族】

 イングリッドの生家。爵位は男爵。新暦前は侯爵家に所縁がある一族だった。

 現在はイール地方の片田舎にちょっとした土地と家を持っているだけで、ほぼ平民と変わらない暮らしをしている。

 現在の家族構成は父、母、長女イングリッド、長男の四人。

 現当主であるイングリッドの父は若い頃は騎士団に勤めており、彼女が手ほどきを受けた正統派剣術はこれに由来する。





~は行~


止まり木市(パーチ)〉【地理】

 イール地方にある交易都市。都市と都市とを繋ぐ、移動商人のための休息地として栄える。文字通り、渡り鳥の止まり木。

 移動商人の護衛、交易路上の野盗退治などの依頼に事欠かないため、イングリッドを始めとした傭兵たちの拠点にもなっている。


「止まり木は、鳥を区別しない。カラスでもサギでもな」



ハッドロウ子爵夫人【人物】

 ハッドロウ子爵の妻。

 詳しい描写はしなかったが、まだ若い奥様。エレーヌに心酔しており、後釜であるイングリッドのことを快く思っていなかった。しかし、お茶会のトラブルの一件ですっかり毒気を抜かれてしまう。ちょろい。

 他作品では直接の登場はないが、新約・少女剣聖伝ではハッドロウ子爵が治めている領地を街道沿いに歩く描写がある。



パンドゥーロ【組織】

 イール地方ではそれなりに有名な商会。名前の由来はポルトガル語でケチ。店主の名前もそうだが、あまりにも安直すぎやしないか。



ハンナ【人物】

 エレーヌ付きの使用人の一人。

 お茶会の日、エレーヌ(および反マルクス派)の指示で、グレタからの引き継ぎを無視してイングリッドに違うドレスを着させようとした。処罰され、解雇される。エレーヌの立場には同情的だった。



飛剣【技術】

 投擲スキルの上位互換。

 主にヤサカ傭兵や、それに師事した傭兵が習得する。

 一般に、投擲スキルは投げるのに適した形状の道具(投擲用短剣スローイングダガースピア片手斧トマホーク等)にしか適用されないが、飛剣はどんな武器でも投擲できる。

 代表的なのは名前の由来にもなっている刀剣類で、投擲用に設計されていない刀剣でも投げ槍の如く投擲することが可能。

 イングリッドの代名詞的な技として描かれているが、これは筆者が、ウルトラセブンがパンドン相手に披露した「アイスラッガー返し」を作中でやりたかったから。

 しかし、本編を執筆しているうちにどんどん戦闘シーンが削られていき、残念ながら該当シーンを書くことなく物語は終わってしまった。





~ま行~


〈魔王〉【武具】

 イングリッドの鎧の原型となった硬革鎧ハードレザーアーマ

 とある伝説的な傭兵の鎧で、隠し剣はもちろんのこと、この時代では画期的なバネ仕掛けの単発弓矢なども内蔵している、全身暗器まみれの改造鎧。

 作中で鎧の解説する時に例題として持ち出される予定だったが、試し読みの段階で「くどい」と指摘され、削除した。



マルクス【人名】

 男性。30歳。身長:178cm。体重82㎏。

 この物語のもう一人の主人公。

 ベルイマン伯爵家当主であり、イングリッドの夫。

 もとは次男坊だったが、兄であるクリストフが逝去したことにより、伯爵家当主の座を受け継ぐことになった。

 襲爵する以前は、武者修行の末に王国騎士団の門を叩き、瞬く間に頭角を現して指揮官に就任、数多くの戦果を挙げる。〈王国最強〉と呼ばれる所以は、兄であるクリストフとエレーヌが結婚した年に開催された王都天覧試合で見事優勝したから。それを機に王室剣術指南役として宮廷に招聘され、次期国王である王子と個人的なパイプを繋ぐなど、個人としてはあり得ないくらいの功績を挙げている。

 既得権益を維持したい連中からすればマルクスが掲げる融和政策は疎ましいものに違いなかったが、王子が熱烈なマルクス信者であるため、顰蹙を買うのを恐れて目立った妨害をしてこなかった。しかし、見えないところではしっかり邪魔されているので、より確実に政策を遂行のために、〈紅〉の末裔、かつ危機管理能力に長けた娘を配偶者にしたいと考え、今回の縁談が実現したという。

 短く刈り込んだ金髪に、翡翠の瞳の美丈夫。若々しく描かれているが、イングリッドと比較すると一回り違う歳の差カップルである。

 現実主義で合理主義なところはイングリッドに似ており、だからこそ彼女のことはすぐに好きになった。常にイングリッドを大切に思っており、迅速に後継者を作らなくてはならないために屋敷に招いたにも関わらず、いざ少しでも彼女が不安なら手を出さないなど紳士的な対応を見せるが、ずっと男所帯で生活してきたので対等な女性に対して奥手なだけ。

 一人称は私だが、素が出ると俺になり、更に娘が生まれると儂になる。

 幼名はアルバローズ。この名前は最後のドッキリとして仕込んでいたものだったが、もしかしたら、気づいていた人がいたかもしれない。

 ちなみにアルバローズは白いバラの祖とされる植物。〈白〉の筆頭貴族であり、古い家柄に生まれたマルクスにぴったりの幼名ではなかろうか。



紫がお好きのようです【台詞】

 マルクスにかけられた疑惑。

 信頼のおける筋からの確かな情報によると、紫の下着が好きらしい。

 しかしながら、これはちょっと真実とは言い難い。というのも、実はこの遣り取りには執筆上のちょっとした事情があるからだ。

 今作は設定のせいで文章中にやたらと紅白という字が使われている。そのため、紅茶だの純白だのといった同色の単語がとても使いづらかった。なので、読者の混同を避けるために、それらと絶対に被らない色として紫を選んだという経緯があるのだ。

 従って、彼は本当には純白の下着が好きかもしれないし、情熱的な赤い下着が好きかもしれない。ギャルっぽいヒョウ柄もいける口かもしれない。というか、愛する人の下着なら何でも嬉しいはずだ。それが男というものだろう。たぶん。



銘【武具】

 何らかの逸話を残した武具に与えられる名前。〈宵鷺〉のように、だいたいは漢字二文字でシンプルに表される。

 戦いで功績を残した戦士に対し、その組織の長(権威)が論功行賞の一環で与えたり、その戦いを歌った吟遊詩人の調べに登場した形容が贈られたり、あるいは単純に製作者が自らの願いを込めて名付ける場合もある。

 あくまで、その戦士と武器がもたらした功績に対しての評価であり、銘を与えられたからといって性能が向上するわけではない。しかし、銘が与えられた武具というのは、裏を返せば実戦証明コンバットプルーフ済ということなので、武器としての性能や売却時の価格の担保になるのである。

 もちろん、ただ名づけるだけなので偽装も容易い。そのため、誰から名づけられたのか、どうやってそれを証明するのかが重要で、なかごに命名者の名が彫られたり、血判付きの書状をしたためてもらったりする。

 余談だが、この時代の数少ないエンターテイメント情報発信者である吟遊詩人の歌には何か特別な力があると考えているため、どちらかというと吟遊詩人から銘を与えもらうほうが喜ばれるとか。





~や行~


野犬【動物】

 エインセル・サーガの小説群にしょっちゅう登場するエネミー。



ヤサカ傭兵【職業】

 マルクスがイングリッドと手合わせした時に発した言葉。

 ヤサカとは、レスニア王国の北部にあるヤサカ地方のこと。

 王国の領地の中では最大の広さを持つものの、領地内に二つの山脈が走っているため農業に適した土地が少なく、おまけに豪雪地帯でもあるため、冬の時期は雪に閉ざされてしまう。流通も途切れるため、商売も成立しにくく、王国の中で最も貧しい地方と言われている。

 なので、ヤサカの男たちは秋の収穫が終わると、雪で身動きが取れなくなる前に傭兵として出稼ぎに領外へ出る。これがヤサカ傭兵である。

 雪解けになれば畑仕事のためにヤサカ地方に帰ってしまう冬季限定の季節労働者ではあるが、帰る家があるからこそ、彼らは生き残ることに執着する。

 だからと言って、それで敵前逃亡したり、手を抜いたりすれば次から雇ってもらえなくなるので、仕事そのものは真面目にこなす。その上できっちり生き残るため、いかに傭兵としてのレベルが高いかわかるだろう。

 そのレベルの高さの秘密は、彼らが遣う「ヤサカの剣」にある。これはヤサカ地方の土着の剣法で、傭兵たちが出稼ぎを終えて里帰りをするたびに、そこで得た実戦のノウハウを共有、蓄積していった結果生まれたもの。それがやがて戦場で生き残るための剣法としてヤサカ地方に定着した。飛剣などがその代表で、賤技などと侮られて呼ばれようと、生き残るためならいかようにも遣う。彼らの傭兵としてのレベルの高さは、すなわち、ヤサカの剣がいかによくできているかの証左である。

 余談ではあるが、地域的に日照時間が短いためか、ヤサカ地方の民は肌が白く、目が赤く、銀色の髪をしていることが多い。……おや、どこかで見たことがある外見的特徴だね。



ユニ【人名】

 女性。20歳。身長:165cm。体格:73/55/76(B60)

 女傭兵団の同僚。友人ポジション。

 初稿ではもうちょっとイングリッドと絡みがあったが、序盤でわちゃわちゃしすぎてもストーリーが全然進まないので、泣く泣くカットされた。もはや名無しでもいいくらいの出番数だが、名前で呼ばれているのはその名残と言える。

 絵面的にはイングリッドと差別化を図るため、かなりスレンダー。



夢の庭園【表題】

 第19話のタイトル。

 新約・少女剣聖伝の第17話と同じタイトル。屋敷の中庭の一角、イングリッドが憧れた(夢見た)薔薇の庭園。夫婦の思い出の場所。



〈宵鷺〉【武具】

 ウルスラの大太刀。元々は彼女の養父のもの。



〈宵鷺〉【組織】

 イール地方で名を馳せる女傭兵団。

 戦場帰りのウルスラを筆頭に、彼女の眼鏡にかなった精鋭だけが所属する少数精鋭の実力派部隊。商人の護衛から、野盗退治まで何でも引き受ける。規模が大きい作戦では別のチームと組むこともあるなど柔軟性が高い。

 ウルスラが女だけのチームにしようと思ったのは、独立したばっかりの時に、女だからという理由で依頼人に侮られた経験があるから。実力さえあれば、男も女も関係ないことを証明するためにメンバーは女性限定にしている。

 ところで、傭兵と言えばレイヴン(ワタリガラス)なのに、なぜサギなのかと言えば、使われすぎてオリジナル感がなかったから。ACだったり、ZOIDSだったり。

 他に何か面白そうな呼称はないかと友人に尋ねたところ、「カラスが駄目ならサギはどう? サギは夕方になるとかなり喧しいから、仕事終わりに宴会でワイワイやっている女傭兵たちにぴったりじゃない?」という助言を受け、採用した。



傭兵【職業】

 金で誰かに雇われる兵力の総称。

 戦争時の臨時戦力から隊商の護衛、店の用心棒まで荒事とあれば何でもこなす。

 他ファンタジー作品で言うところの冒険者のポジションである。この世界、何せ冒険者ギルドがないもので、こう呼ぶしかない。

 ただし、暗殺など非合法な殺しは引き受けない。それが職業的殺人者との明確な線引きである。





~ら行~


ローザリッタ【人物】

 旧約、および、新約・少女剣聖伝の主人公。

 マルクスとイングリッドの愛娘。次の伯爵家の後継者。本編に直接登場したわけではないが、その響きはちらほら出てくる。

 この物語を経て、ローザリッタの旅立ちに際してマルクスが猛反対した理由が少しでも伝わってもらえれば幸いである。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

本作を読んで少しでも面白いと思っていただけたなら、

・ブックマークへの追加

・画面下の「☆☆☆☆☆」からポイント評価

・感想の書き込み等

をして応援していただけると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ