第一章の2
不定期更新中です。完結を目指して頑張ります。
”あしかびの あわじときとて つきよみの
かえりてわがよ あしつきもせず”
意味は無い。即興のうたなのだ。
アツシ青年は阿月とも言う。
阿の月夜。
阿は、はじまりの月。はじまりを司るのだ。
そして、のりとひめのみことは、よろこびを司る。
この世のよろこび。あの世のよろこび。
この世界には「あの世」と呼びならわす世界は無く、「あすの世」と言う。
人がまだ見ぬ世界の世。
のりとひめのみことは、その”みこと”となったとき、どちらの世にも行き来するようになると言う。
二つの世を治めるのだ。
水の中にはチラチラと岩肌に光が見える。
彼はそれを見てはよろこび、光が上がる。
幼き彼のよろこびは光となるのだ。
水辺の水が光り輝くころみそぎは終わる。
辺りにまばゆく陽の光がふりそそいでいる。
天からも贈りもののようだ。
幼い彼はほほえんで、巫女の装束に身を包む。
これからあまの声をおろすのだ。
その役目を青年アツシと共に為している。
あまの声は、天からふりそそぐように聞こえてくる。
時も場所も定まるところは無く、みそぎを終えた体におりてくる。
時には街を歩く中で、時には目を瞑るその瞬きの中で。
幼き彼には分からない言葉でも青年アツシが訳してくれる。
彼には解けないことばは無いのだ。
ことほぎ、ことほぐ、ことば、どれをとっても彼にはよろこびとなる。
けさのことばは、このようだった。
まだ続きます。




