第100話 ダンジョン配信 セツナ戦 ③
闇を纏うと、暗黒鏡は黒い光を放っていた。
暗い光は、全てを飲み込む深い闇を作り出し、段々と広がっていくかのようであった。
深い闇が広がっていく。
黒い光を見つめていると、少年は自分の魂が奪われたような気持ちがしていた。
それなのに、少年は歪な光を見つめていた。
ふと気が付くと、暗黒鏡が少年の姿を見返していた。
その時、ある小説の一節である「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている」という言葉が心に浮かんでいた。
◇ ◇ ◇
長い間、暗黒鏡は使用する者に強大な力を与えていた。
しかし、使用する者の内面を映し出す鏡でもあった。その強い力によって、暗黒鏡は使用する者の魂の中に徐々に入り込んでくるらしい。その影響を受けてしまったのか、暗黒鏡の力がダンジョン配信を見ている視聴者にも及んできているようであった。
段々、コメント欄が狂気に満ちてきていた。
精神が壊れてしまったような、視聴者の不安定な書き込みが増えてきていた。
〈また、あいつ、ナイフを持ってきたんだな!?〉
〈うん?!〉
〈どうした?!〉
〈おやじだよ、あいつ、酒を飲むと暴れるんだよ。くそっ、また、あんな目に遭うのか…〉
〈どうしたんだ?〉
〈何かあったのかい?〉
〈くそ…。なぜ、こんなに怯えて生きていかなければならないんだ…〉
暗黒鏡が視聴者の心を乱していた。
暗黒鏡の力に対し、誰も抗うことができなかった。
不安定な言葉が書かれていた。
動画配信のコメント欄が壊れてきていた。
〈ねえねぇねぇ、わたしの声が聞こえるーーーー?〉
〈え…、まあ、聞こえるけど…〉
〈気が付いていたんだよ。みんな、嘘つきだって…〉
〈!?!?!?!?〉
〈どうせ、死んでくれないんでしょ…〉
〈はあ…!?!?!?〉
視聴者の心が壊れていく。
〈世界なんて滅んでしまえばいいんだ!!〉
〈そうだそうだ!!〉
〈ダンジョンからモンスターが出てきて、人間は滅びるんだよ…〉
〈!?!?!?!?〉
〈ああ、これで世界は終わりだ…〉
〈え…!?〉
ずっと、コメント欄はおかしくなっていた。
暗黒鏡の力によって、動画配信のコメント欄が荒れ続けていた。
誰もが狂っていた。
ただダンジョン配信を見ているだけなのに、視聴者たちは次第に自制心を失っているようであった。
その時、暗黒鏡は少年にも語りかけていた。
『お前は幼い頃から孤独だったろう? 今こそ、この力を使い、全ての人間を見返してやればいい。』
その言葉は、人間の魂であれば拒むことはできそうになかった。
ただ、少年の魂はあやかしの魂とつながっていた。
そのおかげで、少年は正気を保つことができていた。
だが、過去の記憶が蘇ってきた。
子供の頃の孤独、無理やり野球クラブに入れられたこと。それらを思い出すと、少年の精神は不安定になっていた。
その間も、あやかしの魂とセツナの戦いが激しくなっていた。
ダンジョンに作られた野球のグランドが壊れていく。その光景を見ると、少年の魂は笑みを浮かべていた。
少年はまだそのことに気づいていなかった。
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