第99話 ダンジョン配信 セツナ戦 ②
セツナが黒猫に触れていた。
吸い込まれるように黒猫の姿が変わっていく。次の瞬間、黒猫は巻物に変わっていた。
「これですべてを手に入れたのだ…」
セツナの声がした。
「やっと、新・遠野物語と殺生石を手に入れることができました。これで、全てを終わらせる力を得たのです。身勝手な人間たちを一掃し、ご主人様が望んでいた幼い頃から夢見ていたダンジョンを創造することができるのです」
セツナが少年を見つめていた。
少年をじっと見つめると、突然、ダンジョンは眩いほどの強烈な炎に包まれようとしていた。
大きな羽がはばたく音が聞こえてきた。
朱雀の姿が現れていた。
上空には怒りに満ちた朱雀の姿があった。
天井を大きな炎がダンジョンを覆いつくしていた。
その怒りの炎は、全てを消し去ろうとするかのように燃え盛っている。
朱雀の声が聞こえてきた。
その声は怒りに満ちているようである。
「ふざけるな、お前を許さない!!! 神の力により、この階層にあるすべてを、消し炭にしてくれるわ!!!」
その怒りは、もはや誰にも止められないほどに満ち溢れていた。
太陽のような炎が、天上から降り注ごうとしていた。
「これで終わりだ!!」
ダンジョンに、朱雀の叫び声が響き渡った。
沼田君のカメラにはダンジョンの中を埋め尽くそうとしている炎が映し出されていた。
圧倒的な規模であり、どこにも逃げることはできそうになかった。
〈うあああああああ…〉
〈ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?〉
〈炎、やべーーーー!!!〉
〈あー、今度こそ終わりだわ…〉
〈避けられね〜〉
上空から迫りくる炎が、沼田君と少年を包み込もうとしていた。
呆然と、その光景を見つめていた。
我に返ったように、沼田君が叫び声を上げた。
「マジカアァァァァァァァァァァ!!」
その言葉を発すると、ただ、沼田君がガタガタと震え続けていた。
ただ、セツナがため息をついた。
「バカなことを…」
セツナの声がした。
上空に、セツナが跳ね上がっていた。
右手で炎に触れた。
「闇の力で、この炎を消し去ってあげましょう…」
セツナの右手から闇が生まれようとしていた。
その闇が炎を覆い尽くしていた。
炎が消えていく。
「な、なんだと…」
朱雀が呆然としていた。
すると、セツナは朱雀に声をかけた。
「朱雀、もう、あなたには興味などありません。私が望んでいるのはただ一つのことだけなのです。主様の幼い頃の魂を取り戻すことです。やっと、主様の魂を浄化することができるのです!!」
そう言うと、セツナが新・遠野物語と殺生石が一つにしようとしていた。
ダンジョンを漆黒の闇が覆いつくしていった。
新・遠野物語は、あやかしの歴史を記録しており、殺生石にはあやかしの深い恨みが満ち溢れていた。その二つの呪われた物が一つに合わさろうとしていた。
気が付けば、暗黒の鏡へと姿を変えていた。
◇ ◇ ◇
セツナの右手に、不吉な輝きを放つ黒い鏡が握られていた。
それは「暗黒鏡」と呼ばれ、世界を一変させるほどの強大な力が宿っていた。かつて、世界を闇に包み込み、あやかしたちに力を与えていたらしい。
セツナは暗黒鏡をじっと見つめていた。
「やっと、暗黒鏡を手に入れました。これで、すべてを解決できる…」
と彼はつぶやいた。
その時、突然、少年の中にあるあやかしの魂が邪悪な笑い声を上げていた。
笑い声は悪意に満ちていた。
闇が目覚めたような気がしていた。
少年の体は、あやかしの魂によって操られていた。
あやかしの魂の声がした。
「はははっ、よくやった!! その鏡を私に渡せ。それがオレには必要なんだ!!…」
「はて、あなたは誰でしょうか?」
セツナは首を傾げて言った。
目の前にいる少年は恐ろしいほどの妖力に満ちていた。
セツナは初めて悪寒を感じていた。
セツナは困惑の中にいた。
「主様が幼い頃、私に語りかけてきたのはあなたであったということですか?」
セツナは問いかけた。
「そうだ。オレが人間嫌いの主様だよ。だから、その鏡を渡せ…」
と返答があった。
セツナは顔を左右に振っていた。
「いえ、あなたがその魂である証拠がなければ、この鏡を渡すわけにはいきません…」
「仕方がない。少年との約束通り、お前を倒させてもらおうか…」
その時、セツナと少年の中にあるあやかしの魂との間の戦いが始まろうとしていた。
ただ、少年の体はあやかしの魂に操作されていた。
◇ ◇ ◇
〈ラスボス来たな…〉
〈悪魔みたいなやつ、カッコよくねw〉
〈スクイ君、勝ってくれええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!〉
〈おいおい、やべぇわーーー!!!〉
〈視聴者数増え過ぎじゃねwww〉
〈マジだわwww〉
動画配信のコメントは次々と書き込まれていた。
ただ、少年は一人であった。
傍観者のように目の前で繰り広げられる出来事を静かに見守っていた。
幼い頃、少年はアリの巣を眺めていたことを思い出していた。その記憶が、今の自分を静かな観察者としている状況と重なっていた。
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