第98話 ダンジョン配信 セツナ戦 ①
ダンジョンの途中、沼田君のバイクは静止していた。
最下層に近づいているにつれて、段々とモンスターが多くなり、通り過ぎることは不可能に思えてきていた。
「困ったね。スクイ君…」
沼田君の声が響いた。
その時、スクイ少年はモンスターと激しく戦っていた。ダンジョンからは次々とモンスターが現れ、彼らの前進を阻んでいた。その時、突然、真っ赤な炎がモンスターたちを包み込んでいた。
「ギャァァァァァァァ!!!!」
モンスターの叫び声がした。
真っ赤な炎がモンスターたちを焼き尽くしていった。
沼田君が上空を見上げる。
すると、そこには朱雀が優雅に舞っていた。
「お困りのようですね。お手伝いしましょう…」
朱雀の声がした。
真っ赤な炎でモンスターたちを一掃していった。
「うおーーー!! すげーーーーー!!!!!」
沼田君は高揚していた。
モンスターがいなくなると、再び、バイクがダンジョンの中を走り出していた。
ダンジョンにエンジンの爆音が響き渡っていく。
◇ ◇ ◇
沼田君は真っ暗な闇をバイクで走り続けていた。
どれほど深く下層に進んだのか、沼田君には判断がつかなくなっていた。下に向かっているはずなのに、深い闇の中を走ると、その感覚さえも怪しくなっていた。そして、モンスターの姿が次第に消えていく。まるで、誘われるかのように2人を乗せたバイクは最下層に到着しようとしていた。
最下層の前、地獄の門のような構造物が建てられていた。
そこには金槌坊が立っていた。
「お待ちしておりました。さあ、お入りくださいませ…」
金槌坊の声が聞こえた。
「変な妖怪だね。スクイ君、どうしようか?」
沼田君の声がした。
「入ってみよう…」
と、スクイ少年は答えた。
大きな門を抜けると、二人は広大な空間に出ようとしていた。
そこで金槌坊たちが野球をしていた。
「オーライオーライ!!!」
「ナイスキャッチ!!」
金槌坊の声が再び響いた。彼らは野球の試合を楽しんでいるようである。
少年は幼い頃を思い出していた。
「うーん、こいつら何をしているんだ!?」
沼田君は驚いていた。
目の前の光景が沼田君の持つカメラに映し出されていた。
その映像を見て、動画の書き込みがされた。
〈おいおい、なんで野球なんだろ!?〉
〈なんでだ…〉
〈ここってダンジョンだったよな〉
〈突然、野球場みたいになってるじゃんwww〉
〈妖怪が作ったの?……〉
〈いったい、なんのためにそんなことを…〉
動画のコメント欄は戸惑いに溢れていた。
その時、セツナが現れた。
「お待ちしていました…」
ダンジョンに冷たい足音が響き渡ると、二人の前にはセツナという悪魔がいた。そこに、人間、あやかしすら超越した存在が立っている。
「さあ、こちらに来てください」
セツナは笑みを浮かべた。
2人をダンジョンの奥に誘おうとしていた。
「どうする?」
沼田君が言った。
「まあ、行くしかなさそうだね…」
と、少年が返事をした。
しばらくの間、セツナに付いてダンジョンの中を歩いていくことにした。すると、上方から雷鳴が轟いてきた。驚いたように、スクイ少年は天井を見上げていた。
「青鬼が負けてしまったようですね…」
セツナが静かに呟いた。
ただ、そのまま歩を進めていき、セツナはドアを開けようとした。
部屋の中に、黒猫が磔にされていた。
「来るな。逃げるにゃ…」
黒猫の声がした。
その時、セツナが黒猫の横に歩いていく。
「おやおや、今更、どこに逃げるというのですか?」
「うるさい。逃げるんだにゃ…」
黒猫は怪我をしているようであった。
セツナは猫の喉を撫でる。
「残念ですよ、あなたは私が知らないとでも思っているのですか?」
「何のことだにゃ?」
「それは、あなたの話ですよ…」
その途端、沈黙が流れる。
「あなたが、新・遠野物語であるということですよ…」
セツナの笑い声が聞こえた。
それを聞き、黒猫は困惑した表情を浮かべた。
〈あれ? 猫しゃべってね?〉
〈猫がしゃべるユーチューブの動画あったわ〉
〈見たことあるわw〉
〈いや~~~、わけがわからん、。モンスターが野球をしているし、猫がしゃべっているし、これって本当に現実なんだろうか…〉
〈もう、世界の終わりかなw〉
〈いいじゃん、楽しいからさ~www〉
セツナは黒猫に手を伸ばしていた。
黒猫に触れる。
黒猫の姿は変わり始めていた。突然、巻物へと変貌していた。
「やっと、全てを手に入れた…」
セツナの声がダンジョンに響き渡っていた。
妖力はますます強まっている。
「やっと手に入れたんだ。新・遠野物語、殺生石。これで全てを終わらせることができる。身勝手な、人間たちを皆殺しにすることができる…。ご主人様、あなたが幼い頃から望んでいたダンジョンを創造できるのです…」
その時、セツナは少年をじっと見つめていた。
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