第91話 青鬼との対話
あやかしの声がする。その声は少年の内から聞こえてきていた。
——少年、どうやら戦いたくないようだな…
それを聞いて、少年は返答に窮していた。
あやかしの魂に自分の心が見透かされたような気がしていた。
——どうやら、おれたちの魂は交わってしまったらしいな。だからこそ、お前の気持ちが理解できてしまったのだ。ただ、おれは人間ではない。あやかしだ。どうやっても同じ気持ちにはなれない。だからと言って、同族を殺したいわけではないのも確かだ。だからこそ、少しだけ、まあ、30分だけな…
そう言うと、あやかしの声は消えていく。
少年は自分の胸を掴んでいた。
青鬼をどう対処するか、少年は深く悩んでいた。
きっと、あやかしの魂はそのことに気がついたに違いなかった。
少年は自問していた。
自分に強い力が宿っていることを感じていた。あやかしの魂と交じり合ったせいだろう。きっと、青鬼にだって勝てるかもしれない。
それなのに少年は躊躇してしまった。
戦いたくないと思う。
しばらくすると、少年は青鬼を説得する道を選んでいた。
「タイチ君…」
静かに、少年が声をかけた。
その声に反応するように、青鬼はゆっくりとこちらを見つめていた。
少年を睨みつけていた。
「その名前は…。まあ、良いでしょう。何ですか?」
青鬼が尋ねた。
「どうしてこんなことをしているんだい?」
と、少年は青鬼に問いかけた。
「うーん、そうですね…。最初は、怒りや悲しみ、そして、ぼくのことを理解してほしいという願いから始まったのかもしれません。しかし、今は違います。これは進化なのですよ!!」
青鬼は語り始めた。
「進化って、どういうこと?」
と、少年はさらに問いかけた。
「この姿になって初めて理解したのですよ。ぼくは神の力を手に入れたんです。だからこそ、人間は、進化を遂げなければならないと思ったんです!!」
青鬼の大きな声が聞こえてきた。
その言葉を聞くと、少年は青鬼の目を見つめながら言った。
「でも、セツナは人間を全て殺そうとしていると思うんだ…」
「何を言っているんですか!! セツナ様は変えようとしているのです。ぼくはそのお手伝いをしているだけですから!!」
突然、感情的になり、青鬼は声を荒げていた。
青鬼の感情が溢れ出ていた。その姿を見て、もしかすると青鬼を元に戻すことができるのではないかという少年は期待を抱くようになっていた。
その時、沼田君の大きな声が聞こえてきた。
「じゃあ、ブンブン配信、開始しまーーーーーーす!!」
どうやら配信の準備が整ったようである。少年は沼田君の姿をじっと見つめた。
気が付くと、配信が始まっていた。
視聴者の反応が爆発した。
<うおーーーー!! 配信始まったーーーーー!!!!>
<マジだ…>
<配信、キター!!!>
<やったー!!!>
コメント欄は活気に満ちていた。
リアルタイムで文字が大量に書き込まれている。視聴者は少年がモンスターを倒す瞬間を心待ちにしていた。
カメラには少年と青鬼が映っていた。