第9話 学校の屋上と緊急警報
生徒会長が教室を出ると、ざわめきが教室の中に広がっていくようだった。
生徒会長が1年生の男子生徒に告白したような場面があったのだから当然かもしれない。教室の生徒たちはスクイ少年に視線を向けている。その視線が耐え難い。少年は立ち上がり、ふらふらと教室を後にした。
教室から出ようとしていると、生徒たちがスクイ少年を見つめていた。
その時、生徒の声が聞こえてきた。
「生徒会長ってすげーな~」
生徒たちの笑い声が聞こえ、教室の中はさらに騒がしくなっていた。
ひどい目にあってしまった。どうにかして生徒会長から逃げなくてはならない、と少年は思っていた。
少年は困惑していた。
それは生徒会長は妖力を知っていたからだ。
いったい何がしたいのだろうか。それがわからない。まだ、ミコト生徒会長の真意が掴めないでいた。ただ、あんな感じでグイグイ来られると耐えられそうにない。もっと、冷静に対応できないものかと自問する。一度、生徒会長と話をして、彼女のことを知らなくてはならないのかもしれない。
どう対応すればいいのか、少年は悩んでいた。授業のチャイムが鳴っても、少年は教室の席に戻ることができなかった。ただ、廊下を歩いてると、2階の食堂近くで男子生徒たちが集まっていた。彼らは不良と呼ばれている生徒たちであるらしい。
不良の生徒たちがスクイ少年に鋭い視線を送っていた。
困ったなと、少年は思っていた。
「よー、スクイじゃねーか。お前、何処に行こうとしているんだよ。もうチャイムなっているぞ!」
どうやら逃げることはできそうにない。
気が付いたら、不良たちのターゲットになってしまったらしい。
今日、厄日かもしれない。
不良グループの中に、おとなしそうな1年生の生徒がいた。どうやら不良グループに捕まっているらしく、1年生は怯えている顔をしていた。
「まったく、勘弁してくれよ……」
少年は独り言を言う。
「お前、何か言ったか!?」
男子生徒の声がした。
「いや、何も……」
「じゃあ、こっちに来いよ。さあ、来いよ!」
抵抗することはできない。
どうやら、少年は連れていかれることを拒むことはできないなと思う。
諦めて、少年は無抵抗で彼らについていくことにした。
彼は彼らに従って階段を上がっていった。
不良グループと屋上に着く。
ドアが開くと、広がる青空と遠くの山並みが目に入ってくる。
屋上の空には、大きな入道雲が広がっていた。
夏の暑さが残っていた。
少年はすがすがしい気持ちになっていた。ただ、周りにいる男子生徒たちはニヤニヤと笑っている。なぜ笑っているのか、少年には理解できない。彼らは他人をもてあそんで楽しんでいるのだろうか。そんな光景を目の当たりにすると、気分が悪くなる。しかし、抵抗する気力も湧かない。少年は男子生徒たちに連れられ、学校の屋上へと向かっていた。
バタンッ
ドアが閉じられ、見張りをしている生徒が立ちはだかる。
誰も逃げ出せないように。
気が付くと、もう一人の1年生とスクイ少年は前方に連れてこられていた。
その時、不良の生徒の声がした。
「お前らさ、どっちが強いか戦ってみろよ! 勝った方をダンジョンに荷物担当として連れて行ってやるよ。ちょうど、うちの近くにダンジョンができてさ。まだ、警察にも見つかってないからな。入ることだってできるだろーしさ!」
他の生徒たちの笑い声が聞こえてきた。
ダンジョンという話を聞くと、少年は不思議な気持ちがしていた。誰にも見つからないようにダンジョンを作っているつもりであった。しかし、半数以上のダンジョンが既に見つけられてしまっているらしい。
「戦ってみろよ!!」
不良の生徒の声がした。
しかし、もう1人のいじめられていた少年は動こうとしなかった。
目の前の生徒は泣きそうな顔をしていた。
少年も何もしないでいた。
すると、1人の不良の男子生徒がスクイ少年の方に歩いてきた。
「おい、スクイ!! お前、何、突っ立ってるんだよ。ちゃんとやれよ!!」
男子生徒に視線を向けた。
同学年だと思う。
興味がわかない。スクイ少年は無表情にその生徒に視線を向けていた。
不良が困った顔をした。
その時、スクイ少年が不良生徒に声をかける。
「ちょっと、用事があるんだ。教室に戻ってもいいかな……」
すると、不良の生徒は怒った顔をして応じた。
「てめぇ、舐めた口を利くようになったじゃないか……。最初に、その口を黙らせてやるよ!」
突然、不良グループの生徒は拳を振り上げていた。
その動きはまるでスローモーションのようである。反射的に、スクイ少年は迫り来る拳を巧みに避けていた。
不良生徒が転びそうになった。
すると、他の生徒たちがバカにしたような笑い声を出していた。
「くそっ、誰が、オレのこぶしを避けていいと言ったんだよ!!!」
不良の生徒がスクイの胸ぐらを掴んでいた。
拳を振り上げて殴りかかってくるが、スクイは上体をかわして攻撃を避けていた。
その時、自分の体が驚くほど軽いことに気が付いた。
どうしてだろうか。
少年の体には妖力が満ちていた。
妖力って使えるのかな。
少年は思う。
魔法のように妖力を飛ばすことができるかな。
不良の生徒に視線を前方に向ける。
目の前に的がある。
使ってみようかな。
殴りかかる男子生徒に妖力を放つことにした。
ポンっと。
シャボン玉のような妖力を飛ばした。
目の前に、小さな球のような妖力が浮かんでいた。
ふわふわと浮かんでいる。
その妖力を投げる。
男子生徒の胸に衝突していた。
音がした。
ズバンッ!!
という音がした。
次の瞬間、男子生徒がコンクリートの壁まで吹き飛ばされていた。
意識を失ったように男子生徒がバタリと倒れていた。
他の生徒は呆然としていた。
できるじゃん。
妖力が使えるじゃないか。
ははっ、すごいな。
妖力と言うのも悪くはないものだな。
不良の生徒は目の前の出来事に困惑していた。
しばらくの間、何が起きたのか理解できない表情を浮かべていた。
その時、大きなサイレンの音が聞こえた。
突然、H市にて防犯訓練のようなサイレンが鳴り始めていた。
「緊急です。緊急警報です。H市にあるダンジョンで不審な生物が見つかったとの連絡がありました。H市の皆さん、家から出ないで待機してください。絶対に家から出ないでください!!」
という市内にあるスピーカーから警報が聞こえてきていた。
もしかしたら金槌坊たちがモンスターを作ったのだろうか、いや、それにしては対応が早すぎる気がする。
胸騒ぎがするな、と少年は思っていた。
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