第81話 太陽と月の儀式
儀式の時が近づく。
既に、たくさんのあやかたちは儀式の準備を始めていた。
檀上で、白髪の老人が立っている。
しばらくの間、あやかしたちが真っ暗な闇に覆われた空を見つめていた。
突然、老人の白髪が真っ赤に染まる。
すると、呪術の言葉が聞こえてきた。上空には2つの魂が浮かび上がっている。2つの魂は太陽と月のように分かれていった。
楽器の音が鳴り響いていた。
踊るあやかしたちの姿が見えて、その中には九尾の狐の姿もあった。
上空にある2つの魂が大地を照らそうとしていた。
太陽と月のように。
あやかたちは祈りを捧げているようだった。
段々と、老人が2つの魂を体に取り入れようとしていた。2つの魂が老人の両手に入り込むと、老人の体が光りを放ちだしていた。老人の立っている大地がまばゆい光に満ちてきていた。
老人が生徒会長に触れた。
1つの魂は生徒会長の体へと入り込んでいく。もう1つの魂は荒れ狂っているようであり、しっかりと老人が右手で掴んでいた。
老人は少年を見つめていた。
魂を掴んでいる老人の右腕は傷つき、大量の血が滴り落ちていた。
老人の声がした。
その言葉には、ためらいがこもっていた。
「少年よ、これからお前の中にあやかしの魂を宿すことになる。しかし、それによって自己の精神を保つことが難しくなるかもしれない。耐えられなければ、お前の魂は消滅してしまうだろう。今ならば、この選択を拒否することも可能だ。さあ、どうするのじゃ? お前自身が決めるのだ。本当にこの力を受け入れるのか?」
「受け入れます…」
少年は静かに言った。
老人は頷く。
「承知した。お前の両親がここにいる。あやかしの魂を宿す前に、彼らと話をしておくか? お勧めしないが…」
「大丈夫です。続けてください。両親とは後で話します」
少年は返答した。
老人は笑みを浮かべていた。
「なるほど、やはり、彼らの息子だな。ただ、儀式が終わったら、こっぴどく叱られるだろうけどな」
そう言うと、老人が少年の胸に触れていた。
右手にあったあやかしの魂が少年の体に入りこもうとしていた。
少年は痛みを覚える。
あやかしの魂は少年の魂に複雑に絡み合いながら入り込んでいった。少年は激しい痛みに襲われ、まったく、体を全く動かすことができなくなった。
◇ ◇ ◇
その時、あやかしの記憶が浮かんできた。
とてつもなく古い記憶のようであった。大地には老人が静かに立っていた。近くには装束を纏った男性がいた。神々が生まれたかのような、遥か昔の時代を思わせる光景であった。ただ、少年はその記憶を見つめていることしかできなかった。
老人と装束を着た男があやかしの魂を見つめていた。
装束の男の声がする。
「どうやら、このあやかしには恐ろしい力があるようだな。このままにしておけば、ヤマトの民にも災いをもたらすことになるだろう。ヤナギタ、どうしたらいいと思う?」
すると、老人が返事をした。
「では、わたくしにこのあやかしの魂を任せてもらえますでしょうか?」
「そうか、なるほど、何か方法があるのだな?」
「もちろんです」
「では、お前に任せよう…」
「ありがとうございます。この世界のためになるように、このあやかしの魂を使用させていただきましょう…」
老人の声が聞こえた。
その時、少年は意識をなくしていた。
ただ、自分の魂が変わろうとしていることに気が付いていた。
少年はあやかしの怒りに触れた気がしていた。
【応援よろしくお願いします!】
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。