第73話 屋敷の攻防 終わり
黒い羽の生えたあやかしが立っていた。
あやかしの手には法師の切断された頭がつかまれていた。
少年はあやかしの顔を見つめた。
恐怖のような、恐れのような、触れてはならない何かが自分の中に入り込もうとしているような感覚に襲われていた。
少年の体は震えていた。
そこにいるのは悪魔と呼ぶべき存在であるのかもしれない。
悪魔は表情には怒りも悲しみもなく、平穏さえ感じられなかった。
心が消え失せたかのような顔をしていた。
そのあやかしの内部には強い妖気が満ち溢れているように感じていた。
その時、青鬼の声が聞こえきた。
「ああ、セツナ様…、こいつらを倒してください!!」
黒い羽根を持つ妖は「セツナ」と呼ばれていた。
しかし、黒い羽のあやかしであるセツナは青鬼のことなど気にしてはいなかった。
ただ、周りにいる人間たちの姿を見つめていた。
その後、セツナは青鬼に声をかけた。
「まだ、終わっていないのですか…。あなたには期待をしていたのですけどね…。いや、そうか。なるほど…」
突然、セツナは少年を見つめた。
少年の姿を見ると、彼は考え込むような表情をしていた。
その時、部屋には多くの黒い影が入り込んできた。
歩いてくるのは黒いゴブリンだった。
「ケッケッケッケッ」
ゴブリンは真っ赤な血で覆われていた。
その手には殺したたくさんのあやかしたちのむくろを持っていた。
「ケッケッケッケッ」
黒いゴブリンたちの笑い声が聞こえてくる。
その時、セツナの声が聞こえてきた。
「そのむくろは石の力を強くするための道具だ。丁重に扱いなさい…」
「わかりました。あと、あの人間どもも、殺していいんですかね? ケッケッケッケッ……」
ゴブリンの声が聞こえてきた。
その時、大きな声が聞こえてきていた。
青鬼の声であった。
「な、なんで、あやかしたちを殺したんですか!? 何をしたんです!? あなたは俺たちを救ってくれるんじゃないのか…」
青鬼の声が震えていた。
すると、セツナの冷たい目が向けられた。
「私は救いに来たんです。あなたたちを人間どもから解放されるために…」
「そんな…」
「あなたには使命があるでしょう? さあ、今日は帰ることにしましょう…」
セツナの声が聞こえた。
その言葉を聞いて、青鬼は困惑していた。
「ちょっと、待ってください。あの人間たちが生きていますが…」
「彼らの中にはあやかしの魂があるようです。今、彼らを殺すことはできないのですよ…」
それを聞くと、セツナが少年の方に歩いてきた。
冷たい視線が人間たちに向けられていた。
セツナは、まるで無意味な物を見るかのように人間たちを静かに観察していた。
「私は、神の道を歩くものである。永遠なる道である。欲望に縛られし人間ども、私が仕えているのはあやかしの魂のみ。お前たちは欲望から逃れることもできない。お前たちは知らない。地獄の炎の中で苦しみ、妬み、恨み、その中で必死に生きている姿を。私が人間たちに啓示をしてやろう…」
セツナは大きく両手を広げていた。
黒い羽根が大きく広がると、部屋の天井が闇でおおわれていくようであった。
突然、少年の視界が真っ暗な闇に覆われていた。
部屋の中は闇に包まれていた。
羽根が満ちていた。
「さあ、戻りますよ」
セツナの声がした。
ただ、足音だけが聞こえてきた。
「では、皆さん、今日は帰らせていただきます。次に会うときは私のことを知っていてほしいものです。あと、少年に1つ忠告をしておきましょうか…」
セツナがスクイ少年を見つめていた。
小さな声が聞こえる。
「私はあなたの秘密を知っていますよ…」
そう言うと、セツナは青鬼を抱えて部屋を出ていこうとしていた。
その間、少年はぴくりとも動けないでいた。
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