第72話 屋敷の攻防⑩
——何もしないなら、オレがあの女の手助けをしてやろう。あの女の魂の形までが変わってしまうかもしれないがそれは仕方のないことだろうさ…
あやかしの魂の声がした。
その時、あやかしの魂が生徒会長の中のあやかしの魂に影響を与えようとしていた。
強い力だった。
半分の魂を引力のように引き寄せようとしていた。
「うううっ……」
生徒会長がうずくまっていた。
彼女の苦しそうな声が聞こえてきた。
どうやら、あやかしの魂は強い力を持っているらしい。次第に、生徒会長の中のあやかしの魂が影響を受けようとしていた。
生徒会長の周りに妖力が満ちていき、一瞬で彼女の腹部の怪我が塞がっていた。
部屋が揺れていた。いや、屋敷全体が振動していた。
ガタガタと地面が揺れる。
壁にヒビが入る。
それを見ると、青鬼が嬉しそうな顔をしていた。
「すごい…。やっぱり、お姉ちゃんは凄いよ。その力を使って家族を操っていたんでしょ? ただ、お姉ちゃんは1つの失敗をしたんだよ。ぼくの力をバカにしていたことさ。ぼくがお姉ちゃんを超えて見せるんだからね!!」
そう言うと、青鬼が生徒会長に攻撃しようとしていた。
しかし、彼は攻撃ができなかった。
スパン!!
殴ろうとした両腕が消えていた。
何かに躓いたように、青鬼がステンと転んでいた。
自分に何が起きたのかわからなかった。
とっさに、言葉を発した。
「あれ、なんだ!?」
青鬼はきょとんとした顔をしていた。何が起きたのかがわからなかった。
ふいに、自分の手を上げようとした。
そして、両手がないことに気が付いていた。
何故、自分の手がないのか、青鬼にはわからなかった。
その時、生徒会長の声がした。
「タイチ、逃げなさい…」
彼女は青鬼に逃げるようにと言っていた。
それを聞くと、あやかしの魂が生徒会長に問いかけていた。
——お前は抗うのか…
「そうよ…」
——何故、抵抗をするんだ…?
あやかしの魂の声がした。
さらに、あやかしの魂の強い妖気が部屋を満たしていた。
生徒会長の目から赤い血が流れていた。
どうやら、彼女はあやかしの魂の妖力に抵抗をしているらしい。
生徒会長の声がした。
「やめて、こんなことをしたくない…」
——何故だ、こいつはお前を殺そうとしたのだぞ!
「わかっている。でも、やめてほしい。私の求めている答えがあるものじゃない。もしも、あなたが私の魂が欲しいならあげるわ…。だから、弟を助けてほしいの…」
その時、生徒会長は強い力に満ちていた。
あやかしの魂とは別の力。
それに気が付く。
すると、あやかしの魂は笑いだしていた。
——あっはっはっはっはっ、なるほど、そういうことだったのか。あいつ、オレのことを試していたのだな。では、お前の意見に従うことにしよう…。ただ、お前の魂の力によって動くことができない…。ダメだ。また、眠りについてしまいそうだ…
そう言うと、あやかしの魂の声が聞こえなくなっていた。
いったい、あやかしの魂は何に気が付いたのだろうか。少年が問いかけてもあやかしの魂の声は聞こえてこなかった。既に、あやかしの魂は眠りについてしまったらしい。
生徒会長が意識を失ったように倒れていた。
◇ ◇ ◇
その時、青鬼の叫び声が聞こえてきた。
苦しそうな顔をしていた。
「くそっ、何で、ぼくの腕が治らないんだ~~~~!!」
青鬼は両腕を切断されたまま、再生することができないでいた。
すると、誰か知らない声が聞こえてきた。
「それは、あやかしの強い力を受けたせいだろうね。だから、君の腕が再生できていないのだよ…」
黒い羽根のあやかしがこちらに歩いてきた。
突然、青鬼が跪いていた。
「ああ、セツナ様、来てくれたのですね…」
黒い羽根のあやかしはセツナという名である。
彼は金槌坊Dの変わり果てた姿であった。しかし、そのことに少年は気がつくことがなかった。
ただ、セツナは少年の姿を見つめていた。
【応援よろしくお願いします!】
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。