第71話 屋敷の攻防⑨
青鬼の狂ったような声が聞こえてきた。
お姉ちゃん……
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん、お姉ちゃん…
お姉ちゃんお姉ちゃん…、お姉ちゃん、お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん
お姉ちゃん
お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん
お姉ちゃんお姉ちゃん…
青鬼の声がした。
ずっと、青鬼は生徒会長の名を呼んでいた。
もしかしたら、あやかしの力を手にしたことにより、彼の精神が壊れてしまったということなのだろうか…。
いや、そうではない。
最初から、彼はおかしかったのだ。彼は別の何かでも望んでいたということだろう…。
彼の望みは何だろうか…。
それが少年にはわからなかった。
青鬼の声がする。
「やっと、やっとだ。ぼくはお姉ちゃんに認められる存在になるんだ…。そして、お姉ちゃんを超えてみせる。ずっと、ずっと、ぼくはそれを願ってきたんだから…。やっと夢をかなえることができるんだ!!」
青鬼が泣いていた。
彼は自分の姉である生徒会長への強い憧れを抱いていた。
その気持ちが壊れていた。
「ぼくは大事なものをこの手で壊すことができるんだ。なんて、なんて、なんて、ぼくは幸せ者なんだろうか!! サイコーじゃないか!!」
弟は狂っていた。
いや、彼の性格と呼ぶべきだろうか。
元々、彼は狂っていたのかもしれない。しかし、それを誰も気が付いていなかった。彼は陰陽師の子として生まれ、ただ、強い力に憧れを抱いていた。
青鬼が叫んでいた。
「陰陽師なんて、ただのあやかしを恐れている存在でしかない。ずっと、人間を守ると言いながら、暗い森の中に隠れていただけ。ぼくはそのことに気が付いてしまったんだ。だから、こんなバカな人たちは全て壊すことに決めたんだ!!」
そう言いながら、青鬼が生徒会長を殴り続けていた。
生徒会長は白い犬を召喚していた。
彼女の妖力が足りないのか、戦士のようなゾウを召喚はしようとしていなかった。ずっと、青鬼に殴られながら、生徒会長は腹部に空いた穴を回復させようとしていた。
数秒後、生徒会長は負けるだろうな…。
少年は思っていた。
助けるべきだろうか…。
そう思った。
しかし、何もできなかった。
生徒会長は望んでいない。
それだけの強い意志を彼女の中から感じていた。
しかし、おかしい。
どうして抵抗しないのだろうか…。
そんなことを考えていた。
もしかして、彼女は死ぬことでも望んでいるのではないか…。
そう思えてきた。
その時、声が聞こえてきた。
少年の中にいるあやかしの魂の声が聞こえてきていた。
——何故、手伝わない…?
あやかしの魂が問いかけてきた。
少年は返事をしなかった。
——目が覚めてしまった。お前の魂が不安定なせいだろうか、それとも、あの女の中にあるオレの魂が壊れそうなせいだろうか。突然、目が覚めてしまったよ…
あやかしの魂が目を覚ましていた。きっと、生徒会長が殺されかけているせいだ。ただ、そんなことで目が覚めることがあるんだろうかと少年は思う。
——まあ、お前が何もしないなら、オレがあの女の手助けをしてやろう。オレの魂を守るためにな。あの女の魂の形までが変わってしまうかもしれないがそれは仕方のないことだろうさ…
その時、2つのあやかしの魂が共鳴をしていた。
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