第63話 屋敷の攻防①
少年は壁の影に隠れていた。黒い服を着た男性が自分のことに気が付き、こちらに歩いていることに気が付いていた。少年は戦う構えを取ろうとしていた。その時、中学生くらいの少年が彼の前に現れた。
中学生ぐらいの少年の声が聞こえてきた。
「あの…。ぼくはミコト姉ちゃんの弟のタイチです。姉ちゃんを助けに来たんですよね? ここはぼくが何とかしますから、そのままじっとしていてください」
少年の姿は坊主頭の修行僧のような服装をしていた。
ミコト生徒会長の弟だという。
「そこに誰かいるのか!?」
その時、黒い服を着た男性の声がした。
「え!? ああ、ぼくがいます…」
ミコト生徒会長の弟というタイチが通路に顔を出していた。
その後ろ姿を、少年はじっと見つめていた。
「おや、タイチ様でしたか…」
「そうだよ。えへへ、びっくりした!?」
タイチは笑っていた。
しばらくして、黒い服を着た男性とタイチが話しをしている。
最後に、黒服の男の声が聞こえた。
「こんなところにいたら危険ですよ。どうやら不審者がいるらしいので、自分の部屋から出ないでください…」
「はい、気を付けます…」
「それでは、私が不審者を探しに行きます」
黒服をの男性は屋敷の外へと向かった。
すると、タイチが戻ってきた。
「大丈夫そうです。あの、あなたは、姉を助けに来たんですよね?」
タイチは少年に尋ねた。
「まあ…。ところで、ミコト生徒会長に何かあったんですか?」
「はい…」
「ぼくはスクイと言います。あなたの姉とは生徒会で一緒に活動しているんですよ」
「ああ、そっか、良かったです。違う人だったらどうしようかと…。ただ、ここで話すのは危険ですよね。一緒に、ぼくの部屋に来てください」
タイチは自分の部屋へと少年を案内していた。
少年はタイチに従うことにした。
助けてもらったし、黒い服を着た男性と戦うべきではないと感じていた。
廊下を歩いていくと、タイチは自分の部屋に案内をしていた。
そこは何もない部屋であった。
生活感が一切なく、ただ学習用の机と椅子が置かれているだけだった。
タイチ君が椅子に腰かけて、
「スクイさんでしたよね、あなたは姉を信じていますか?」
タイチが尋ねた。
「もちろん、信じていますよ…」
スクイはそう答えたが、内心では返答に迷っていた。
タイチ君は少年の顔を見つめていた。
それから、ゆっくりと話を始めていた。
「ごめんなさい、変な質問をしてしまって…。姉のことを信じていると聞いてほっとしまいた。だって、家族はもう姉のことを信じていないんです」
「それは、どうしてですか?」
「みんな、姉に操られていたんです。数日前に法師様が来て、家族にかけられていた呪いを解いてくださいました。その呪いは姉がかけたものであるみたいで、それ以来、姉は自分の部屋から出ることを許されていません」
「なぜ、そんなことをしたんだろうか…」
「わかりません。ただ、ぼくには呪いがかけられていなかったようです。だから、その理由もよくわからないんです…」
ふと、スクイ少年は生徒会長が自分を「忌み子」と呼んでいたことを思い出した。
家族に対する恨みがあったのだろうか。
しかし、彼女がそんなことをするとは思えなかった。
また、タイチの声が聞こえてきた。
「だから、姉を助けてほしいんです!」
しばらく考えてから、タイチの依頼を受け入れることにした。
生徒会長を助けなければならない。
何が起きていたのかはわからない。ただ、それを確かめるためにも、生徒会長を助けなければならないだろう。そう思うと、ミコト生徒会長がいる部屋へと向かうことにした。
少年はタイチ君の部屋を出ることにした。
ただ、気になることがあった。
タイチの部屋からあやかしの妖力の気配がするのである…。
◇ ◇ ◇
猫又さんは走っていた。
法師が住んでいる小屋へと向かっていた。
小屋に近づく。
ただ、彼女は立ち止まっていた。
木の陰に隠れるようにして、小さな小屋をじっと見つめていることにした。
息を切らせて、九尾の狐が彼女に追いついてきた。
びっくりした顔で、猫又さんが九尾の狐を見つめていた。
「あれ? 付いてきたんですか?」
「あなた、ここが危険だって気が付いていないの…」
九尾の狐は呆れたという顔をしていた。
ただ、猫又さんは真剣である。
「やっぱり、あやかしが集まっていますよ…。きっと、あそこに法師がいるはずですよ!!」
猫又さんの声がした。
「そうね、あやかしが集まっている…」
九尾の狐が応じていた。
「悪だくみをしているんですよ…」
2人はあやかしが集まっている小屋を見つめていた。
数十のあやかしが集まっていた。
「たくさんのあやかしがいるわね。でも、あなた何かおかしいと思わない?」
「おかしいなんてことはないです。きっと、法師があやかしを集めたに違いないです。だとしたら、さっきの女性、大丈夫かしら…」
「大丈夫そうね。ほら、見てみなさい…」
「え、うそ……」
目の前の光景を見ると、猫又さんは言葉をなくしていた。
突然、追いかけてきた女性が、あやかしの姿に変わっていたのである。
女性は雪女の姿に変わっていた。
その姿を見ると、猫又さんが困惑していた。
「え、うそ、あの女性もあやかしだったの…」
「この屋敷にはたくさんのあやかしが潜んでいるみたいね。それを確かめないと…」
「変ですよ。きっと、あやかしたちは法師が連れてきたはず…」
ずっと、猫又さんは法師を疑っているようであった。
その時、九尾の狐が歩き出していた。
「どこに行くんですか?」
「仕方がないから、私が確認してくるわ…」
「そんなことして、大丈夫なんですか?」
「何を言ってるの? 私は九尾の狐よ。むしろ、人間であるあなたと話している方がおかしいわ。あなたはここで待ってなさい」
そう言って、九尾の狐は狐の姿に変わっていた。
そして、小屋の前に集まっているあやかしの方へ歩き出していた。
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