第55話 エンマ様
目を覚ました少年は、ベッドの上でぼんやりと近くの携帯電話を見つめていた。
どうやら、眠っていたようである。
既に、玄武との戦いから3日が経過しようとしていた。
ただ、起き上がることができない。体にあった裂傷や骨折は回復していたが、妖力の使い過ぎてしまい、どうにも体がまったく動かせなくなっているようであった。寝返りをうつのも一苦労な様子で、少年は苦しそうな顔をしていた。
本棚の上から黒猫がじっと見つめていた。
「なんだ。まだ起き上がれないのかにゃ。もっと体を鍛えないといけないにゃ」
黒猫は不満げにそう言った。
それを聞いた少年は、弱々しい声で答えていた。
「ちょっと、水を持ってきてくれないませんか…」
「いやにゃ。なぜそんなことをしなければならないのにゃ!」
黒猫は丸くなって目を閉じてしまった。
仕方ないと思うと、少年が起き上がろうとすると、九尾のキツネの声が聞こえてきていた。
「大丈夫、私が持っていくわ」
ドアが開き、九尾のキツネの少女が水と薬を手に入れて部屋に入ってきました。
彼女は少年に薬を飲まようとしていた。
「なんですか、これ?」
「いいから、飲んで…」
「うっげぇ〜、まずいですけど…」
不味くて、とっさにスクイ少年は飛び起きようとしていた。
ただ、体は動かなかった。
「あら、本当に起き上がれないのね。ただ、特効薬を飲んだから、すぐに良くなるはずよ。それじゃ、私は帰るわ。」
「そうか、ありがとうございます…」
「早く学校に行ってみるといいわ。何か大変なことが起こっているみたいだから…」
「えっ、待って。何が起こっているんですか?」
九尾のキツネの少女は微笑みながら、月を見上げていました。
最後、彼女は謎めいた言葉を残して姿を消してしまった。
「それは言えないわ。それはあなたの目で見るべきこと。テレビは見ないで。あんな薄っぺらいものには、薄っぺらなことしか映っていないから。昔のテレビは良かったのに。そうそう、秋が近づいているのに、駅前の桜が満開になったわよ」
「どうして桜が満開なんですか?」
「さて、桜の木の下には何があると思う?」
「死体があるって聞いたことがあります…」
「それはどうかしらね。でも、あなたが確かめるべきことね」
そう言い残し、九尾のキツネの少女は月明かりの中へと消えていった。
それを聞いて、黒猫は疑わしげな顔をしていた。
「一体、あいつは何をしに来たんだろうにゃ?」
少年はベッドに横たわりながら、九尾のキツネの少女が何かを伝えようとしていたのではないかと考えていた。
しかし、確かめることはできなかった。
気がつけば、少年は再び眠りに落ちていたらしい。
◇ ◇ ◇
その夜、少年はふと目を覚ました。
夢の中で沼田君が話していた。スクイ少年をヒーローだと言っていたことを思い出し、少年は笑顔を浮かべていた。ヒーローと呼ばれるのは悪い気がしなかったが、自分がヒーローになれるとは思えなかった。
右手を挙げてみると、体がだいぶ動くようになっていた。九尾のキツネの薬が効いてきたのだろうか。
学校で何が起きているのか、九尾のキツネの話を思い出した。
妖力が枯渇しているせいだろう。
まったく、ダンジョンの様子も確認できていなかった。
ゆっくりと起き上がる。
窓のカーテンを開けようとした。
その時、ドアを叩く音がした。
ドンドンドンと。
母親が帰ってきたのだろうか。
少年は玄関に向かった。
ドアを開けると、金髪の長い髪を持つ筋肉質で背の高い女性が立っていた。
女性が声をかけてきた。
「お前がスクイか。よし、わしに命令しよう。あやかしのバカどもを止めろ。これは命令だ」
寝ぼけていた少年は呆然とした顔をしていた。
目の前に自信満々の女性がいた。
この女性は一体何を言っているのだろうか。そう思っていると、黒猫が走ってきた。
「エンマ様、どうしてこんな場所に来たんですか!」
突然、スクイ少年の横をすり抜けて女性の前に現れた。
黒猫が跪いていた。
そこにはエンマ様と呼ばれる女性が立っていた。
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