第54話 モンスターの動画配信
ある動画サイトには通常とは異なるダンジョン配信が投稿されていた。
動画は、モンスター自身が配信したかのような内容であった。画面には、配信者たちが異世界から飛び出してきたかのような強大なモンスターたちと激しく戦うシーンが映し出されていた。スライムのような弱小モンスターではなく、巨大化した野生の獣のような存在が、配信者たちに襲い掛かっていた。勝利の望みはほとんどなかった。
次々とモンスターに倒される配信者たちが映し出される。
傷つき、倒れる姿が映し出された。
しばらくして、カメラのアングルが変わっていた。
モンスターがカメラを操作していた。
突如、シーンが変わり、ダンジョンの深い闇が映し出されていた。
暗闇の中、何かが映されている。
闇からか細い声が響いた。
「人間どもへ、これは警告だ。ダンジョンは神聖な場所であり、私たちの住処だ。自由に出入りできる場所ではない。人間が来るべきではない。私たちは決意を新たにした。今後、人間がダンジョンに入ることを禁止する。もしダンジョンに踏み入れるならば、災いが降りかかるだろう。この人間のようにな…」
アングルが変わり、倒れている配信者たちが映し出された。
周囲には多くのモンスターが集まっていた。
「我々は絶対に人間を許さない。だから、ダンジョンに入るな。それでも入ろうとするなら、我々の五つの軍団に分かれたモンスターがお前たちを排除するだろう。彼らのようになりたくなければ、ダンジョンには近づくな!これは警告だ!!!」
言葉が途絶えると、モンスターたちの姿も消え去った。
映像は再び真っ暗な闇を映し出した。
◇ ◇ ◇
SNSでダンジョン配信動画が急速に拡散された。
最初、フェイクニュースではないかとの噂が立っていた。しかし、1時間後、配信者たちの遺体を発見したというニュースが流れ、その動画の真実味を増していく。段々と、モンスターからの警告が現実のものとなっていた。
一方、視聴者たちは映像に映る新種のモンスターに興味を示し始めた。
彼らは機械的な動きのスライムに飽きていた。
新たなモンスターの出現に心を躍らせた。
結果、多くの人々がダンジョンを訪れるようになったらしい。
ダンジョンは奇妙な変貌を遂げつつあった。
もちろん、少年はそれを望んでいなかった。彼は困惑していた。
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