第52話 ヒーロー
少年は玄武の腹部の下を素早く走り抜けた。
彼の手には二振りの剣が握られており、力強く玄武の腹部に切りつけていた。
やがて、玄武の腹部には少年の剣の力を証明するかのように、大きな十字の傷が刻まれていた。
「グァヴゥアアアアア~~~~~~~」
玄武の咆哮が聞こえてきた。
少年の攻撃を受けた玄武は仰向けに倒れていた。
、そのまま動かなくなった。
きっと、剣には妖力が付与されていたせいだろう。しびれているように、玄武の体は全く動こうとしていなかった。
その時、少年は玄武の尾に付いている黄色いリングに目を奪われていた。
そのリングからは怒りの感情が溢れ出ていた。
見ているだけで少年の感情が揺さぶられた。
腹が立つ。怒りが湧き上がる。
この感情はどこから来るのだろうか。
金色の指輪を見つめながら、スクイ少年は感情を抑えようとしていた。
その時、肩に乗っている黒猫が何かを言った。
「このリングはまがまがしい妖力に満ちているにゃ…」
その時、スクイ少年は剣を振り上げていた。
感情を抑えられない。
「待つにゃ。そのリングを壊してはダメにゃ!!!」
黒猫の声がした。
しかし、少年は自分の体を制御できなかった。
リングを壊したい。
どうしてもその気持ちから抗うことができなくなっていた。
その時、黄色いリングから笑い声が聞こえてくる。
老人のような声が聞こえてきた。
「はははっ、面白いものが見れたな。今日はこのぐらいにしておいてやるわい…」
黄色いリングから声が聞こえた。
その声を聞くと、黒猫がリングに向かって話しかけた。
「お前はいったい誰にゃ!?」
「まあ、焦ることはない。いずれ会うことになるじゃろうからな。では失礼させてもらうよ」
そう言うと、リングからの声が聞こえてこなくなった。
それでも黒猫が声を掛けていた。
「待て、待つにゃ!!」
しかし、リングからの返事はなくなっていた。
その時、少年は剣を振り下ろしていた。
感情を抑えきれず、2つの剣を使って、黄色いリングを粉々に破壊していた。
リンクが消えて、玄武が少年の姿に戻っていた。
スクイ少年は倒れていた。
意識を無くし、ぴくりとも動かなくなっていた。
黒猫は人間の姿の玄武に声を掛けていた。
「起きろにゃ!! 聞きたいことがあるにゃ!!」
ずっと、黒猫が叫んでいた。
ただ、人間の姿に戻った玄武は意識を失っていた。
◇ ◇ ◇
空の雨が止んでいた。
真っ暗な闇の中で、ダンジョンの中からスクイ少年を呼んでいる声が聞こえてきた。そこには沼田君が立っていた。
「スクイ君、凄いや。やっぱり、スクイ君はヒーローだったんだね!!! やっと、ぼくはヒーローに会うことができたんだ!!!」
沼田君の声が聞こえてきた。
彼はキラキラした目でスクイ少年を見つめていた。
その時、少年は困った顔をしていた。
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