第49話 戦い
戦いが始まる前、木の上には九尾の狐が隠れていた。ずっと、転校生たちを監視していたらしい。カラオケ店から出てきた少年と1人の転校生を追いかけてきた。
神社まで来ると、少年と転校生の戦いが始まろうとしていた。
木の枝の上から2人の戦いを見つめていた。しっぽを枕のようにして、九尾の狐が気の上に座っていた。
すると、そこに黒猫がやってくる。
「帰ってこないと思ったら、こんなところで何をしているにゃ。とっくにぼくの夕食の時間は過ぎているというのににゃ~」
黒猫が言う。
「あら、黒猫さん、ごきげんよう」
九尾の狐が言う。
「また、お前か、いったい何が起きているにゃ?」
「さあ、突然、戦いが始まったから、詳しいことはわからないわ。ただ、あなたのご主人様、戦う気があるのかしら?」
「問題ない。黙って見ていればいいにゃ」
そう言うと、黒猫は少年に視線を向けていた。
その時、少年は玄武の攻撃を必死に避けていた。段々、追い詰められていき、右ストレートが少年の右頬に当たっていた。その途端、少年が吹き飛んでいく。倒れこんでいる少年に対して、武坂厳が馬乗りになると、激しい殴打が続いていた。
ただ、少年の体は妖力で守られていた。
「あら、負けちゃいそうじゃないかしら?」
「何をしているにゃ。普通にやれば勝てるというのに…」
黒猫が呟いていた。
ただ、少年は攻撃をしようとはしなかった。
◇ ◇ ◇
少年は神社を見つめていた。
この光景、何処かで見た気がすると思っていた。そうだ、小学生の頃、小さな社の中に入ったことがある。その中に黒い石があった。あの日から何かが変わった気がした。
そう思いながら、少年はただ殴られていた。
攻撃での痛みはないが、振動のせいで気分が悪くなってきた。
突然、攻撃が止まった。
「ダメだ、このままでは倒せねーな。元の姿に戻るしかねーな!!」
と、武坂厳の声がした。
武坂厳の体が変形し、玄武の姿に変わっていた。
激しい風が吹いていた。
空気が切り裂かれたような音がした。
音ズレをした動画配信でも見ているような違和感。――耳が痛い。
目の前には大きな亀がいた。
大きな体は山を埋め尽くそうとしていた。
「やばい、でけぇ……」
スクイ少年は見上げていた。
ぼんやりしていると、九尾の狐の声が聞こえてきていた。
「何、ボーとしているのよ。踏みつぶされるわよ!!」
「ズドォオオオン!!!」
とっさに避けると、風圧で吹き飛ばされて行く。
「うわぁああああ~~~~」
と、上空に飛ばされると、玄武の姿を見つめていた。
亀のような形をしていた。
蛇のようなしっぽがこちらに向かってきていた。
避けることができそうにない。
振り下ろされた蛇のしっぽによってスクイ少年は遠くの方まで飛ばされていった。
大きな岩盤にぶつかっていた。
痛みを感じ、体が壊れてしまいそうだった。
九尾の狐が少年の方にやってきた。
「ちゃんと避けなさいよ。何度もぶつかってたら体がもたないわよ」
と、九尾の狐の声がした。
「少年、ぼくに手伝うにゃ。あの亀、ひっくり返してやる」
と、黒猫の声がした。
九尾の9つのしっぽが玄武の足に絡みついていた。
ただ、九尾がどれだけ力を入れても足が上がることはなかった。
スクイ少年はその姿を見ていた。
「足、足を狙うよ。足が上がったとき、払ってやればすぐに倒れるわ」
「馬鹿を言えにゃ、足など上げることはできないにゃ。上から押さえ付けるんだ。それに抵抗したら、スパっと足払いをしたらいいんだにゃ」
そんな話を九尾の狐と黒猫が話していた。
ただ、何が正しいかなんてわからない。
そう思うと、少年は玄武の甲羅の上に飛び乗っていた。
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