第48話 カラオケ店
放課後になると、駅前のカラオケ店で転校生の歓迎会をしていた。カラオケ店でアルバイトをしている生徒がいるらしく、地下にある宴会用の部屋を用意してもらったらしい。ただ、1人の転校生は来ていなかった。
少年はコーラを飲みながら部屋の端っこの席に座っていた。
1人の男子生徒がやってくる。
「スクイ、お前、何でそんなところに1人でいるんだよ~」
少年が顔を上げる。
彼が除け者にされていると思ったらしい。
男子生徒が立っていた。
彼の名前は沼田正二という。
「ああ、ちょっと苦手なんだよ。みんなと一緒にいると歌わされそうでさ、嫌だから逃げてきたって感じ…」
「スクイ、なんか、お前、変わったよな。高校生デビューとか言うやつか?」
「そう見える?」
「いや、そんな感じじゃないな。突然、強くなったっていうのか。そうそう、ダンジョン動画で狼をぶっ飛ばしたって話題になってたぜ。あれ、本当なのか?」
「あれか…。文化祭の催しの練習だよ。そんなこと知っているだろ?」
「本当に、そうなのか? オレはあれが事実だったんじゃないかと思っているんだよ。お前が強かったんじゃないかと」
「ずっと、ぼくは弱いままだよ……」
「ふーん、そうか。オレはお前が凄い奴だって自慢したかったんだけどな」
「すまんな…」
「別にいいさ。そうだ、転校生、女子たちの間で話題になっているみたいだぜ。4人ともカッコいいし、キャラが被ってなくていいらしい。サイコーって言ってたわ」
沼田君が笑っていた。
少年はからっぽになったコップを見つめていた。
「そうなんだ…」
「オレたちにはよくわからないことだ。まあ、あいつらがカッコいいのはわかるけどさ」
「そうだね……」
「なあ、何か飲む。ちょっと取ってくるわ」
沼田君は飲み物を取りに行く。
大きなディスプレイがあるステージの上では女子生徒が歌っていた。
たくさんの生徒がダンスを踊っている。
カラオケの部屋にいる生徒は複数の集団に分かれていた。仲の良い友人たちの集団があり、その他は転校生の周りに生徒たちが集まっていた。
歌が終わると、ステージに委員長が立っていた。
催しを決めてあるらしい。
転校生の自己紹介とか、転校生に向けた学校の説明とか、部活の勧誘とかの話をしていた。
しばらくの間、転校生たちが会話をしていた。
沼田君が戻ってくる。
「オレンジジュースで良いか?」
「ああ、ありがとう」
「ただ、転校生はすごいな。人を引き付ける力があるみたいだよ。あれがカリスマっていうんだろうか……」
「まあ、神だからね」
「ふふふっ、冗談だとしても面白いな。神か~、ちょっとウケたわ」
そう言いながら沼田が笑っていた。ただ、スクイ少年はステージにいる4人の転校生を見つめていた。彼らは何をしたいのだろうか。目的が何であるのかがわからない。すると、1人の転校生がスクイの方に視線を向けていた。ニコニコしながらこちらに手を振っていた。
来栖 ザクトと言っただろうか。
少年は違和感を憶えていた。
気が付かないふりをして、少年はオレンジジュースをひと口飲んでいた。
◇ ◇ ◇
夜の9時を過ぎた頃、4人の歓迎会が終わることになった。
カラオケ店の前で生徒たちがはしゃいでいる。
これ以上、今日は何もなさそうだなと思う。
「ぼくは帰るよ」
スクイは右手を上げて、駅の方に向かっていこうとした。
その時、誰かの声がした。
「待ってよ!!」
振り返ると、転校生の1人である武坂厳が立っていた。
ギラギラした目で少年を見つめていた。
「ねえ、スクイ君だろ。オイラと話をしないか?」
と、武坂厳が言った。
「ああ、良いですよ。ぼくも聞きたいことがあったので…」
と、スクイは返事をしていた。
「あっちに神社があるんだ。そこで話そうよ」
2人は神社に向かっていく。
神社に行くと、武坂厳はポケットから蛇のような置物を出し、神社の周りに結界を作っていた。
「これで思いっきりやれるわ。さあ、オイラと戦おうぜ!!」
「え、ちょっと待って。戦うって何ですか?」
「さあ、わからない。オイラにはどうでもいいことだから。ただ、お前のことが気になっているやつがいるみたいだな。オイラはお前を倒せばいいと言われてるんだよ」
「倒す? 良くわからないんですが…」
「お前はさ、あやかしなんだろ? だから、倒されるってだけ。ただ、もしも、オイラに勝てたら、お前の話ぐらいは聞いてやるよ」
「本当に戦うんですか?」
「ああ、すぐに死んだりするんじゃねーぞ!!」
そう言うと、武坂厳が向かってきていた。
数秒後のこと。
突然、2人の戦いが始まっていた。
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