第47話 4人の転校生
最後、ダンジョン配信は真っ暗な闇を映し出していた。突然、九尾の狐の配信が終わる。しばらくの間、スクイ少年は真っ暗な画面を見つめていた。
その次の日のことである。
少年の教室には4人の転校生がやって来ていた。
◇ ◇ ◇
教壇の前には4人の転校生が立っていた。
同じ教室に転校生が来ること自体珍しいのに、一度に4人もの転校生がやって来ていた。
クラスにいる生徒たちは驚きを隠せずにいた。
みんなの視線は、ただ、教壇に立つ新しい顔ぶれに向けられていた。
1人の転校生が一歩前に歩いてきた。
背が高く、端正な顔立ちのイケメン男子であった。
落ち着いた声で自己紹介を始めた。
「はじめまして、来栖ザクトと申します。皆さんとの出会いに感謝しています。どうぞよろしくお願いします。私はこの世界をより良い方向へ導くために努力したいと思っています。ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、その際はどうぞご容赦ください」
キラッとした笑顔を見せる。
女子生徒たちからは歓声が上がっていた。
次に、ツンツンとした髪型の背の低い男子が教壇に飛び乗っていた。
そこから彼はクラスメイトを見渡した。
「へぇー、いろんな奴がいるもんだな。オレは武坂厳だ。いつでも挑戦を受けて立つぜ。声をかけてくれたらいいことがあるかもな」
次に、巨漢の男子が立ち上がった。
「ああ、オレはパスだ。こんな連中と話す気にもなれない。下等な生物どもめ。オレの席が決まったら教えてくれ。今日はもう帰るわ」
その巨漢の男子は教室を後にしていた。
彼の名前は青田辰夫らしい。
次に、おとなしそうな男子生徒が挨拶を始めていた。
「す、すみません。うまく話すことができないんです。ぼ、ぼくは城田虎次郎と申します。ああ、変な話し方でごめんなさい。自分でも嫌になってしまいます……」
そう言って、彼は教壇の後ろに隠れてしまった。
朝礼が終わった後、教室はざわめきに包まれていた。その時、隣のクラスから九尾の狐が現れ、少年に声をかけてきた。
「あいつら、あやかしね」
と、九尾の狐の声がした。
「そうですね…」
と、少年が返事をした。
「あいつら、四神と呼ばれている存在よ」
「え、四神ってなんですか?」
「そんなことも知らないの? もう、呆れてしまうわ。あそこにいるのは、青龍、朱雀、白虎、玄武の4体の四神よ。きっと、私たちを追いかけてきたんだわ…。もう、四獣とでも読んば方がいいかもしれないわね…」
へぇ~と思ながら、少年は4人の転校生を見つめていた。
背の低い転校生が少年を睨み付けていた。
彼の名前は武坂といっただろか。
「昨日、私のダンジョン配信の邪魔をしたのはアイツらよ。絶対、許さないんだから!!」
九尾の狐の声が聞こえてきた。
「そうだ、あの動画、ぼくの仲間が映っていたんですよ。どうしていたのか、彼らに聞いてみようかな…」
「ダメ。私の獲物だからね!!」
九尾の狐は転校生に視線を向けていた。
どうやら、九尾の狐の少女は苛立っているようであった。
◇ ◇ ◇
授業が始まると、スクイ少年は教科書をめくっていた。
ただ、心ここにあらずの様子であった。
他の生徒たちは黒板の内容をノートに写していたが、ただ、少年は転校生たちや失踪した金槌坊Dのことで頭がいっぱいだった。昨日、他の金槌坊たちに確認しても、金槌坊Dの失踪理由はわからなかった。転校生たちが何か知っている可能性もあるのかもしれない。
授業が終わると、少年は転校生たちに話を聞こうと思っていた。しかし、彼らの周りにはすでに多くの生徒たちが集まっていたせいで、少年は話しかけることができなかった。
少年は椅子に座り、転校生の姿を見つめていた。
すると、九尾の狐が静かに言った。
「みんな、騙されているわね…」
「あの、九尾さんは何もしないんですか?」
「あっちから来るのを待っていたのよ。ところで、あいつら、学校では争うつもりはないみたいね。あなたは戦うつもり?」
「仲間が騙されているかもしれないから、何かあったら、ぼくは戦うつもりです!」
少年は決意を示した。
九尾の狐は感心したように言った。
「へぇー、頼もしいことを言うじゃない…」
九尾の狐が笑身を浮かべていた。
その時、少年のもとに3人の女生徒が近づいてきた。
彼女たちは怒っているようである。
「ねえ、スクイ君、ずっと委員長が声をかけているのに無視しないでくれない!!!」
一人の女生徒が言った。
「え? 何ですか?」
「もう、ずっと声をかけているんですけど、聞こえなかったの?」
「ごめんなさい…」
「まあ、いいわ。今日、4人の転校生の歓迎会をするの。あなたも来ますよね。放課後、駅前のカラオケ店に来てください!」
「歓迎会ですか?」
「そう、歓迎会よ。放課後、駅前のカラオケ店に来てね」
女生徒は繰り返した。
少年は訊ねた。
「ぼくも行くんですか?」
ふふふと、九尾の狐は笑っていた。
「あなた、分かってないわね。学校ってのはそういうのが大事なの。それに転校生がダンジョン配信のことを聞きたいと言ってたのよ」
「はあ…」
「あと、生徒会長から聞いたけど、今前のダンジョン動画って文化祭の催し物の練習だったんでしょ。先に言っておいてよね。スクイ君が魔物を倒したのを見て、ホントにびっくりしたのよ。嘘だと聞いてショックだったのよ」
「え、文化祭の催し物?」
少年は女子生徒たちを見つめていた。
そう言えば、今日、誰も少年にダンジョンの話をしてこなかった。きっと、生徒会長が嘘の噂を流していたに違いない。
すると、また女生徒の声がした。
「じゃあ、放課後、ちゃんと来てよね!!」
「わかったよ…」
「ちゃんと聞いてるの? いつも2人でイチャイチャしているから気が付かないのよ!!」
そう言うと、3人の女性が走り去っていく。
スクイ少年と九尾の狐の少女は目をパチクリさせていた。
一瞬、何のことかわからなかった。
はっと気が付く。
2人の大きな声が聞こえていた。
「イチャイチャなんてしてないです!!」
「イチャイチャなんてしてないわ!!」
その声を聞いて、教室の中では笑い声が聞こえてきていた。
ただ、少年と九尾の狐は不満そうな顔をしている。
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