第41話 ダンジョン配信
「あのね、あんたのせいで、私がどんなことになっているか知っているの。家族からも怒られたし、もう絶対に許さないんだからね!!!!」
生徒会長は怒りに満ちていた。
その怒りが、彼女の内に宿る魂の力を増幅させていたのだろう。
周囲は、禍々しい妖力で満たされていた。
九尾の狐の声が聞こえてきた。
「ミコトさん、あなたはいつも苦しんでいたんですね。私は手助けをしたいのです。それに、あやかしの力が目覚めようとしているようです。きっと、あなたなら、世界だって変えることもできるでしょう」
九尾の狐は笑みを浮かべていた。
スタスタスタスタスタスタ…
すると、生徒会長が歩いていく。
気が付くと、生徒会長は九尾の狐の前に立っていた。
パチンッ
彼女は九尾の頬をバチンと叩いていた。
「いったーーーーーーい!!」
九尾の狐の声がした。
「私は、あなたを許してないんだからね!!!」
「どうして…」
「あなたを許さないって言っているのよ!!」
「なるほどな、どうやら動きが速いようね。だけど、もう、私に攻撃を当てることはできないわよ……」
九尾の狐が攻撃を避けようと身を捩ったが、間に合わなかった。
パチンッという音がした。
生徒会長の手が九尾の狐の頬をはっきりと叩いた。
「えっ!?」
九尾の狐の驚いた声がした。
パチンッ
パチンッ
パチンッ
パチンッ
パチンッ
パチンッ
何度となく、九尾の狐の頬を叩いていた。
「やめろ、な、何故、そんなに叩くんじゃ!?」
「言ったでしょ。許さないって。あなたね。どうして皆に迷惑をかけてこんなことをするの?」
生徒会長の声には怒りがこもっていた。
九尾の狐は反論する。
「聞くまでもないわ。それは私はあやかしだからさ……」
「違う。あなたはあやかしなんかじゃない。あなたは人間のように見える。だから、私は思うの。こんなことをしないで自分が生きたいように生きてほしい。ねえ、もっと違う生き方があると思わない?」
生徒会長は九尾の狐に訴えかけた。
九尾の狐は笑う。
「おかしなことを言うのだな。私はあやかしだ。誰かを呪わなくちゃいけないのだ……。生きるために世界を呪い続けなくちゃいけない。あなたにはわからないだろうがな…」
「私だって…。あやかしのことぐらいわかっているわ…」
と、生徒会長は辛そうだった。
「そうか、では、ミコト、私に従いなさい」
「無理です…」
「何故じゃ、それだけの力があるのに…」
「あなたは人間を呪いたいのよね? だったら、私を呪ってみたらいいんじゃない?」
生徒会長は真剣な顔をしていた。
九尾の狐は驚いていた。
「はあ、何を言っているんじゃ!?」
「あなたが人を呪うというなら、私だけを呪いなさい。そうすれば誰も苦しまなくていいんじゃない?」
「え!? お前を!?」
九尾の狐は信じられないという表情をした。
生徒会長は九尾の狐に迫った。
「私を呪い続けていけばいい…。そうすれば、あなただって苦しむこともなくなるんだから!!」
「呪うって。いったい、何を言っているのじゃ……」
九尾の狐はポカンと口を空けていた。
その時、生徒会長の声が響いた。
「誰かが苦しむ姿を見たくない。だから、私を呪いなさい!!!」
「ふ……、ふざけるな。もう、そんな話ではない!!」
「ふざけてなんてないわ!!」
生徒会長は強い口調で言っていた。
九尾の狐が困惑している。
「え……」
「私は真剣です!」
「……」
九尾の狐は言葉を失った。
生徒会長の声がする。
「さあ、私を呪いなさい!!」
「そ、そんなわけ……。あーーあーー、もう、何か嫌になるわね。もうやる気が出なくなったわ。もう…、今日は、帰ることにするわ!!」
突然、九尾の狐は投げやりになった。
生徒会長は追いかけた。
「まだ、話が終わってないけど!」
「じゃ、じゃあ……。ま、また来るから……」
九尾の狐は顔を真っ赤にしていた。
その時、大蛇が藤原得子の姿に戻っていた。
「ちょっと、待ってください。私はいったいどうしたらいいんです!?」
「あなたの好きなようにしなさい。私たちは帰るからね」
「え、待ってくださいよ~」
九尾は立ち去ろうとしていた。
その時、黒い狼が、九尾の狐に襲い掛かろうとした。
「九尾、お前を殺せばオレは自由になれるんだ!!」
黒い狼は襲いかかった。
黒い狼がその鋭い爪で九尾の体を引き裂こうとした。
その時、少年は助けに入る。
反射的に、黒い狼の腹部に力強い拳を叩き込んでいた。
黒い狼の腹部には穴が開く。
上半身が空高く吹き飛んでいった。
黒い狼は消滅していく。
すると、九尾の狐は不満そうな表情で少年を見つめていた。
「別に、あなたに助けてもらわなくても、私だけで対応できたんだからね!!」
少年を睨みつけていた。
そして、ダンジョンから消えていった。
やっと、ダンジョンは静けさを取り戻していた。
そのことに気が付くと、少年は安堵し、生徒会長の方に向かっていた。
◇ ◇ ◇
ダンジョンの中に1台のカメラがひっそりと落ちていた。
黒い狼からの逃走中、どうやら配信者の一人がうっかりカメラを落としてしまったようである。
まだ、カメラを起動したまま。
カメラは、少年の姿を捉えていたらしい。
映像はリアルタイムで動画サイトに配信され、先ほどの戦いで黒い狼を倒す少年の勇姿が世界中に流れていた。
視聴者数は10万人を突破し、コメント欄は驚嘆と賞賛の声で溢れていた。
しかし、少年自身は、世界の注目を集めていることにまったく気づいていなかった。
翌日、この動画は大きな話題となる。
その動画が話題になることなど、まだ、少年には知るよしもなかった。
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