第40話 配信者たち
ダンジョンにいる大蛇が少年たちを睨みつけていた。
たくさんのカメラがダンジョン内の様子を配信しており、そのレンズは大蛇と少年たちを捉えていた。視聴者たちは恐怖を求めているかのようだった。配信者たちも、少年たちが大蛇に襲われる瞬間を期待しているように見えた。目の前で大蛇に睨まれている高校生がいたのだから、それも無理はないのかもしれない。
ダンジョンは異様な雰囲気で満たされていた。
多くのライトが点けられ、その明かりの中で配信者たちの顔が次々と映し出されていた。
彼らの引きつった笑顔を見ると、少年は不快感を覚えた。
その時、九尾の狐の声が聞こきた。
「邪魔な人間たちがいるみたいね。最初に、そちらから対応しましょうか…」
しかし、九尾の狐が何処にいるかわからなかった。
ダンジョンを白い煙が満ちていく。
突然、黒い狼が現れた。
体は黒い毛で覆われ、人間を一飲みにできるほどの大きさだった。
ギラギラとした目で、こちらを睨みつけていた。
ウォオオオオオオオ~~~~~
皮膚に突き刺さりそうな叫び声が聞こえてきた。
大きな口からは黒い液体が落ちていた。
「やっと、目覚めることができたようだな…」
黒い狼の声が聞こえた。
「そこにいるバカな人間たちを殺してしまいなさい!!」
九尾の狐の声がした。
しかし、黒い狼は返事をしなかった。
無視をしていた。
「ねえ、聞いているの?」
「わかりましたよ……くそっ……」
黒い狼が配信者たちに視線を向けていた。
1人の配信者の男性が狼の方に向かっていたからだ。
男性の声が聞こえてきた。
「おいおい、ラッキー、こんなところに見たこともないモンスターがいるじゃねーか!!」
男はカメラを持ち、黒い狼の姿を配信していた。
黒い狼が男を睨みつけていた。
「邪魔だ、どけ!!」
黒い狼の声がした。
しかし、男はカメラで狼を撮影していた。
カメラで狼の顔を写そうとした。
その時、男の体が切り刻まれていた。
男の叫び声がする。
「ぎゃあああぁ~~~~~」
真っ赤な血が吹き上がっていた。
血だまりにライトが落ちると、ライトの明かりが天井を照らしていた。
その時、黒い狼の薄笑いが響き渡った。
先ほどまで笑顔を浮かべていた配信者たちの顔が、恐怖で引きつっていた。
「うわ~、何だよ。アイツ、やばいじゃねーかよ~」
「た、助けてくれ~」
悲鳴のような声がダンジョンに響き、配信者たちが逃げ出そうとする叫び声が続いた。
黒い狼の声がした。
「おうおう、楽しいものだな。ずっと、オレは人間の肉を食べて生きてきたんだ。久しぶりに狩りができるということだな!!!」
黒い狼が立ち上がろうとしていた。
体は5メートル近くあり、ギラギラした目がダンジョンの中で光っていた。
「さあ、お前たちの肉を食ってやろう!!!」
黒い狼が配信者たちを追いかけていた。
その時、1人の少女が現れた。
少女は九尾のキツネであるようであった。
「やっと、ミコトさんと話をすることができますね……」
少女が言う。
不穏な妖気がダンジョンを覆っていく。
ずっと、ダンジョンの中は配信者たちの叫び声が聞こえてくる。
黒い狼の声が聞こえた。
「やはり、人間の肉はうまいな~」
ダンジョンの中を黒い狼が走り抜けてきた。
その勢いは止まることを知らない。次の瞬間、黒い狼は少年に襲いかかろうとした。
しかし、その攻撃は突如として止められた。
ガキンッ!!
鋭い音が響き渡る。
それは生徒会長が狼の攻撃を阻止した音だった。
「私の仲間に手を出さないで!!」
「誰だ、お前は? いや、お前、陰陽師のようだな…。憎き陰陽師。九尾様から教えてもらったキツネビを使ってお前を消し炭にしてやろう!!!」
黒い狼が妖しく青白い炎を周囲に浮かび上がらせていた。
青い炎がこちらに向かって飛んでくる。
「この炎はな、全てのものを焼き尽くすと言われているんだ。妖力の炎は、誰にも消すことなどできないのさ!!」
狼は得意げに宣言した。
しかし、その時、生徒会長は静かに息を吐いた。
フゥーー
彼女が息を吹きかけると、青い炎は突如として消え去った。
「えっ!? あれ!?」
黒い狼は目を丸くして驚愕した。
「お前、どんな妖力を使いやがった!!!」
突然、狼は怒り混じりに問いただした。
生徒会長は冷静に答えた。
「何も使ってない。ただ、息を吹いただけだけど……」
「嘘だ嘘だ!! そんなことない!!!」
それを聞いて、狼は信じられないとばかりに叫んだ。
生徒会長は静かに言った。
「あなたが弱いんじゃないの……」
黒い狼は困惑していた。
「お前、いったい、誰だ!?」
「ちょっと待って。ダメ、ミコトという子には手を出さないで…」
九尾の声が聞こえると、その声を跳ね除けるように黒い狼が怒鳴った。
「うるさい! オレに指図をするな!!」
狼は生徒会長に噛みつこうとした。
その瞬間、ガブリッという音と共に狼の歯が砕け散った。
「いたーーーーーー!!!!」
狼は痛みで泣き叫んでいた。
涙を流し始めた。
「やれやれ、仕方がないわね。私が出るしかないみたいですね…」
そう言いながら、九尾の狐の少女が姿を現した。
その光景を見て、生徒会長は仁王立ちで九尾の狐のを睨みつけ、怒りを露わにした。
「あのね、あんたのせいで、私がどんなことになっているか知っているの。家族からも怒られたし、もう絶対に許さないんだからね!!!!」
どうやら、生徒会長は九尾の狐に怒っているようであった。
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