第38話 怪物
ダンジョンに向かう途中、ミコト生徒会長は昨夜の出来事を思い出そうとしていた。
記憶はぼんやりとしていて、はっきりしなかった。
昨日、真夜中に目が覚めた時、自分のベッドで横になっていたことに気づいた。
部屋の白いカーテンが静かに揺れているのが見えた。
どうやら、いつの間にかベッドで眠っていたようだ。
2段ベッドの上段、弟がぐっすりと眠っていた。
梯子を登り、生徒会長はそっと弟の寝顔を見つめた。
弟はまだ何も気づいていない。坊主頭で、安らかな笑みを浮かべながら眠っている。
家族会議には弟は参加していなかった。
彼はまだ小さくて、そのような場にはふさわしくないのだ。
夏の暑さで、弟は掛け布団を蹴ってしまっていた。
ただ、平和に眠り続けていた。
「ねえ……」
生徒会長は声を掛けてみた。
しかし、反応がなかった。
「ねえってば!!!」
そう言うと、弟は目が開いていく。
驚いた顔をしていた。
その顔を見るとミコトは笑っていた。
「姉ちゃん、どうしたの?」
弟が目を開けながら言った。
顔は眠そうであった。
その表情を見て、生徒会長は思わず笑いがこぼれた。
寝ぼけた弟の顔はとてもかわいらしく、生徒会長は心からの笑いを隠せなかった。
ゲラゲラと声を上げて笑う。
すると、弟は少し不満そうな顔をした。
「起こしておきながら何で笑ってるんだよ~」
「ごめんごめん。ちょっと相談があってさ。何か、私、おかしくなってるみたいでさ……」
きょとんとした表情になり、ずっと、弟は生徒会長を見つめていた。
彼の目は疑問に満ちている。
生徒会長が何を言っているのか、理解できないでいるようであった。
「おかしいって何だよ。そんなの、いつものことだろーさ」
弟が不満そうな顔をしていた。
それを見ると、生徒会長が真剣な顔をした。
「いや、違うの。私さ、自分が怪物にでもなったような気がするんだよ……」
「はあ? 姉ちゃん、変な物でも食べていたんじゃない?」
「そんなわけないでしょ。ところで父さんからは何か私のことを聞いた?」
「別に、何も聞いてないけど、何かあったのか?」
「さっきの家族会議の話聞いてないの?」
「何だよ。家族会議って? 姉ちゃんは夕食で倒れてたじゃん。大変だったんだぞ。変な夢でも見たんじゃないか?」
「え、私って夕食で倒れたの…?」
「そうだよ。そんなことも忘れてしまったのかよ。今日はもう寝たほうがいいんじゃないか」
「じゃあ、聞くけど、私はあやかしとつながりがあると思う?」
「はあ、どうしてそんな話をするんだよ?」
「何となく聞きたくなったんだよ……」
「まあ、オレは興味がない。姉ちゃんみたいに強い妖力はないしさ。自由に生きれたら、それ以外はどうでもいいけどな」
「え、なにそれ!? ただ、そっか。ユウタがここまで運んできてくれたんでしょ。ありがとー」
「別に、たいしたことじゃないよ」
「うわーーー、もうこんな時間じゃん、明日の準備をしなくちゃ……」
「じゃあ、オレは寝るからな~」
弟がベッドの中に潜り込むと、ミコトはしばらく机の椅子に腰を下ろすことにした。不思議な気持ちが彼女を包んでいた。
一瞬、自分があやかしになったような錯覚に陥った。それは気のせいだったのだろうか。
窓の外からは夏の風が心地よく吹き込んできた。明日はスクイ少年と共にダンジョン配信に出かける予定だった。ふと、彼女はスクイ少年が何かを知っているのではないかと思った。
考え込むように、生徒会長はスクイ少年のことを思い浮かべていた。
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