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第33話 ズレ

 副会長は慎重にスライムをダンジョンの隅に追い詰めていた。


「えいやっ!!」


 と叩くと、スライムは粉々に砕け散っていく。

 チャランチャランと音が鳴り、地面には「5ゴールド」と刻まれた硬貨が転がっていた。



「うおーー!! スライムを倒したらゴールドが出てきたじゃねーか!!」


 副会長が歓喜に満ちた声を上げていた。

 どうやら金槌坊(かなづちぼう)たちはモンスターを倒した時の準備までしていたらしい。すぐに、副会長が落ちたゴールドの硬貨を拾っていた。



「ただ、ゴールドって何に使えるんだ?」


 副会長はじっと硬貨を眺めていた。


 ただ、少年は困惑していた。


 金槌坊たちはダンジョンの研究に没頭しているようだったが、少年が望んでいたダンジョンと彼らが構想しているダンジョンには何か違いがあるように感じられた。少年は、金槌坊に一度確認を取っておきたいと思っていた。 


 考え事にふけっていると、少年の肩に黒猫が静かに乗ってきていた。

 不意に、黒猫が話し始めていた。


「少年、君にちょっと話があるにゃ。ミコトという子のこと、あの女は途轍とてつもない力を持っている。まだ、天狗ですら気が付いていないようだが、九尾はその力を奪おうとしているようだにゃ」


 黒猫の声が聞こえてきた。


 しかし、少年は黒猫の話を聞いていなかった。

 スライムのことを考えながら、少年は1人でぶつぶつと独り言を呟いていた。



「少年、聞いているか?」



 もう一度、黒猫が少年に声をかけた。

 しかし、返事がない。

 ムカっときて、黒猫が少年の肩を甘噛みしていた。



「いたっ!!」



 とっさに、少年が黒猫を見つめていた。

 黒猫は怒っていた。


「ちゃんと聞いているにゃ?」


「ちゃんと聞いていますよ。もう、噛まないでください…」


「嘘だ、絶対聞いてなかったにゃ!! いま、ミコトという子について重要な話をしているんだ。あの子に何かがあれば対応をしなければならないかもしれないにゃ。あやかしとして生きるのなら別にかまわないだろうが、人間として生きるとしたら、あの子を助けてやらなくてはならないだろうからにゃ」


「ええ、そうですね。わかりました…」


「まったく、本当に分かっているのかにゃ?」


 黒猫が不満そうな顔をしていた。

 少年は返事をする。


「わかってますよ。生徒会長が狙われているってことですよね~」


 そう言うと、もう一度、少年は黒猫に噛まれていた。


「もう、いたいって、止めてくださいよ…」


 少年は不満そうな顔をしていた。

 何故、黒猫はそんなことを気にするのだろうか、いや、仲間なら心配するのは当然かと。しかし、少年は納得がいかなかった。



 黒猫に不満を口にしようとした。

 その時、生徒会長が少年の方へと歩いてきていた。



「スクイ君、ちょっと、こっちに来てくれないか…」


 生徒会長の声がした。



 いつもとは異なる落ち着かない調子であることに気が付いていた。


 生徒会長の表情は明らかに不安を滲ませていた。

 おそらく、九尾の狐と名乗る女性の話が心に引っかかっているからだろう。



 少年は生徒会長のほうに歩いていくことにした。

 すると、黒猫の小さな声が聞こえた。


「少年、この話はあの子には言わないでおくにゃ」

「わかってます…」


 

 そう言うと、少年と黒猫が生徒会長の所に向かうことにした。

 生徒会長が真剣な顔をしていた。



「みんな、私の話を聞いてくれ。先ほど、私たちはあやかしに出会ってしまった…」


「本当ですか!?」



 副会長が驚いた顔をしていた。

 それを見て、生徒会長がふーっと息を吐いていた。



「このまま、ダンジョンの中にいるのは危険かもしれない。一度、外に出ることにしようと思う…」


「わかりました!!」



 副会長の声が聞こえてきた。



 少年たちはダンジョンから出ることになっていた。


 ダンジョンの入り口のドアを開けると、外はすでに暗く、街の電灯がぽつぽつと灯り始めていた。学校帰りの生徒たちが好奇心旺盛にダンジョンを覗きに来ており、市の職員がドアに鍵をかける作業をしていた。その様子を、生徒会長が遠くから挨拶を交わしながら見守っていた。


 生徒会長が戻ってくる。

 彼女は腕時計をちらりと確認して、少年たちに声をかけていた。



「では、皆さんは帰ってください。私は、今日のことは天狗様に伝えることにします…」


「オレも付いていきます!!」


 副会長の声が聞こえてくる。

 駅に着くと、少年は生徒会長と副会長を見送ることにした。


 2人が視界から消える。


 すると、少年はほっと一息ついた。彼と黒猫は、駅の反対方向へと歩き始めていた。

 彼らの目指す先は、誰も知らないダンジョンの入り口だった。



  ◇  ◇  ◇




 再び、少年はダンジョンの中へと足を踏み入れた。

 辺りは一切の明かりもなく、深い闇が彼らを飲み込もうとするかのように迫っていた。

  

 そこにはたくさんの金槌坊(かなづちぼう)たちの姿があった。

 金槌坊(かなづちぼう)たちがひざまずいた。



「主様、お待ちしておりました」



 その光景を目にした黒猫は、驚きの表情を浮かべていた。

 口を半開きにし、あかやしのような奇妙な生き物をじっと見つめているようであった。


「こいつらは誰じゃ!? あやかしにゃのか!?」


 

 黒猫は困惑していた。その姿を見て、少年は金槌坊(かなづちぼう)たちについて説明をすることにした。一人一人の特徴を説明していたのだが、どうも黒猫にはピンと来ていないようであった。


 その時、金槌坊(かなづちぼう)Bが少年の元に走ってきていた。

 彼は嬉しそうな顔をしていた。



「主様、見てください!! ダンジョン配信で私たちが制作したスライムが映っているんです!!!」


 金槌坊(かなづちぼう)Bはタブレットを持っており、そのディスプレイにはダンジョンの映像が映し出されていた。3Dプリンターで作成したスライムたちが配信者たちに倒されていく映像が映し出されていた。


 動画の再生回数は30万回を超えていた。

 映像を目の当たりにした少年は、驚きで呆然と立ち尽くしていた。


 スライムがいたら面白いだろうな、とは思っていたが、少年は自分が予定していたダンジョンとは異なる道を歩んでいるように感じていた。



 しかし、違和感をどう表現していいか、少年は言葉にすることができなかった。

 ただ、少年はスライムの映像を見ながら思案していた。

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