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第29話 柳田邦夫

 高尾山を下りると、少年たちはダンジョンに向かうことにした。

 少年は生徒会長と副会長の後をついていく。ただ、猫又さんは用事があると帰ってしまった。



 少年は黒猫に視線を向けていた。


 どう見ても、普通の猫のようにしか見えない。歩いていると、黒猫がゴロゴロと音を鳴らしながら、少年の近くにやって来ていた。少年は座り、黒猫の頭を撫でてやろうとしていた。すると、少年の足にすり寄ってきた。



 黒猫の声がする。


「君さ、あやかし、なんだろ?」

 

 

 黒猫がコソコソと声をかけてきた。

 猫は真剣な顔をしている。



「まあ、そうですね。ぼくの中にはあやかしの魂があるみたいです。ただ、どうしてそんなことを聞くんですか?」


 と、少年は返事をした。


「何だ、天狗から聞かされていないのか。あいつらもいい加減になったものだにゃ。以前、ぼくの力を使い、血気盛んに暴れまわっていたものだが。長い年月が経ち、新・遠野とおの物語のことも忘れてしまっていることだろうにゃ。まあ、だからこそ、こうやって君と話をすることにしたんだけどにゃ」


「長い間、天狗と係わりがあるみたいですね…」


「まあ、そうなるな。ただ、その前に君に聞いておかなくてはならないことがある。君はダンジョンを作っているのかにゃ?」



 突然、黒猫がダンジョンの話をした。


 とっさに、少年は両手で自分の胸に触れていた。

 そこには穴が開いていた。

 不安感が胸の穴の中に入り込んできたような気がしていた。


「え? どういうことですか……」


 そう言うと、少年の顎から一滴の汗が落ちていた。

 どうして黒猫はダンジョン作っていることを作っていることを知っているのだろうか。そのことで頭の中がいっぱいになっていた。

 

 黒猫の声が聞こえてくる。


「まあ、落ち着けにゃ。そんなに心配しなくていい。誰にも言うつもりはない。それに、ぼくはアイツから頼まれただけだから。アイツは君にあやかしの魂が目覚めることを予知していたにゃ」


「アイツ? それは誰ですか? 何で、ダンジョンのことを知っているんです!?」


「その男は柳田邦夫という。まあ、あやかしというか、人間というか、すごーく、変な奴だったにゃ。アイツは、君に新・遠野とおの物語を守ってほしいと言っていたんだにゃ」


「どういうことですか、ちょっと話がよくわからないです。何で、ぼくにそんなことを頼んだんですか?」


「さあな、それはわからない。運命と呼べるようなものであったのかもしれない。だが、アイツは君のことは知っていた。そして、新・遠野とおの物語が盗まれることも。柳田邦夫は用意周到な奴なんだにゃ。100年以上前に、ぼくに命令をしていたんだからにゃ…」



 それを聞き、少年は前にいる生徒会長と副会長に視線を向けていた。

 生徒会長たちはこちらには関心がないようであった。

 

 ただ、少年の声は小さかった。

 ダンジョンの話は誰にも聞かれてはいけないと思っていた。



「その柳田邦夫ってどこにいるんですか?」


「もう死んでしまったよ。まあ、自分で望んで、この世界から離れてしまったというべきか、アイツは地獄に行ってしまったからにゃ…」


「え、地獄なんてあるのですか?」


「お前、そんなことも知らないのか? あやかしなら、幽霊バスに乗れば行けるにゃ。そのぐらいのことは常識だにゃ」



 そう言うと、クックックッと黒猫が笑っていた。

 少年は黒猫を見つめていた。



「柳田邦夫はお前にこの世界を救ってほしいと思っていたにゃ。それ以上のことなんて、ぼくが知るわけがないじゃない。いつも、アイツはおかしなことばかりしてたからな。ずっと、こき使われて、ぼくだって腹を立てているんだにゃ。勝手に、ぼくのことを残して、地獄旅行に行っちまったんだからな!!」


 黒猫は不満を言う。

 ただ、ちょっと寂しそうでもあった。

 

「あの、お聞きしたいのですが、その新・遠野とおの物語ってのは世界を変えるだけの力があるんですか?」


「そりゃあるにゃ。あるに決まっている。人間を神にすることだってできると言われているんだから…。まあ、詳しいことは知らないんだけどにゃ」


「じゃあ、あなたが対応した方が良いんじゃなですか?」


「ぼくは道具でしかないにゃ。道具は自分では動けないものなのだ。それに、これは柳田邦夫から頼まれただけにゃ。ぼくはただアイツのためにしてやっているだけなのさ。柳田邦夫は君のことを知っていたからな。ただ、ぼくの力は神のようなものでもなければ、巫女のように願いをかなえられるわけじゃない。ただ、君の手助けをしてやろうと思っているにゃ」


「手助けですか……」


「そうだにゃ、君に妖力の使い方を教えてあげるにゃ」



 その時、生徒会長が振り返ってこちらに視線を向けていた。

 気が付くと、2人との距離がだいぶ離れていた。

 


「スクイ君、もう少しでダンジョンに付くよ。早く来なさい~!!」



 生徒会長が少年に向かって手を振っていた。

 少年は足早に向かうことにした。


 その時、黒猫がひょいと少年の肩に乗っていた。



「そろそろ、ダンジョンに着きそうだ。ぼくは猫の役をさせてもらうにゃ……」

 と、黒猫が言う。



 にゃぁー、と黒猫の鳴き声が聞こえてきた。




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