第24話 胸の穴
次の日、少年は学校に向かっていた。
学校への道すがら、少年は昨日土蜘蛛との戦いを思い返していた。あやかしの魂に自分の体を乗っ取られた瞬間、彼の心には人々が次々と命を落とす悲惨な光景が浮かんでいた。それはまるで遠い過去の記憶のようだった。
その時、彼は自分の内に怒りが渦巻いているのを感じた。しかし、それと同時に懐かしい記憶にも満たされていた。少年は自分を包む複雑な感情を覚えている。それはきっと、あやかしの記憶に違いない。
どうしてあやかしの魂は暴走してしまったのだろうか、少年には、ダンジョンと何らかの関係があるように感じられた。
あやかしとダンジョンの間に隠された繋がりがあると直感していた。
まるで、その秘密に触れたかのような気がする。
生徒会長が陰陽師の家系出身であるならば、彼女に尋ねれば答えてくれるかもしれない。
しかし、少年はその考えを拒絶した。
まだ、何かを判断するべきではないと思っていた。
◇ ◇ ◇
考え事にふけながら、少年は学校へと歩いていた。駅の通学路には生徒たちが行き交い、その先には生徒会長が立っていた。
彼女の姿を目にして、少年は心臓がドキドキするのを感じた。
彼の体が熱を帯び始めていた。
「スクイ君、おはよう。君を待っていたんだよ」
生徒会長の声がした。
視線を上げると、生徒会長の目と合った。
彼女は微笑んでいた。
不思議なことに、少年の顔は赤くなっていた。
おかしい、何かがおかしい……
少年は顔を振り、再び生徒会長を見た時、無理やりな笑いを浮かべていた。
これはあやかしの魂の影響に違いない。
「お、おはようございます…」
「どうしたの、スクイ君。そんな顔をして? さあ、学校に行こうか!」
ミコト生徒会長の声がした。
彼女の手が少年の手を掴んできていた。
おかしな感じがする。
恐る恐る、生徒会長と一緒に歩いてみることにした。
すると、生徒会長の声がした。
「今週の日曜日、スクイ君、何か用事とかある!?」
「いや、そうですね…。まあ、用事があるかな…」
「え、そうなんだ…」
「そうです。ダンジョンに行こうかと…」
うっかりと、少年はダンジョンについて話してしまった。自分が何をしているのかと、ダンジョンの話題を出してしまったことに、もっと冷静にならなければと反省していた。
その時、生徒会長は真剣な表情をしていた。
「なるほど、学校でも話題になっているみたいだね。ダンジョンにあやかしが出るって話がね。いや、生徒たちは、『モンスター』と言っているみたいだけど……」
それを聞いて、少年はダンジョンのことを考えていた。
どうやらダンジョンの中であやかしが襲われたという話があるらしい。
ダンジョンは金槌坊の管理下にある。
あやかしによる人間への襲撃は考えられないことだ。しかし、土蜘蛛の事件が起こった。予期せぬ出来事が起きているのだろう。少年は、探検者として一度ダンジョンに足を踏み入れてみたいと思っていた。
「どうかしたの?」
生徒会長の声がした。
「いえ、ちょっと考え事をしていただけです……」
少年は返事をした。
「ねえ、私もダンジョンに付いて行ってもいいかな?……」
生徒会長が言う。
それを聞いて、少年は困ったような顔をしていた。
すぐに断ろうと思っていた。きっと、生徒会長を連れて行ったらダンジョン探検などできるはずがない。
ただ、どうやって断ったらいいのだろうか。
「ちょっと、考えてみます…」
少年は言う。
「ありがとう。ああ、そうだ、その前に、スクイ君を連れていきたい場所があるの。私と一緒に来てくれないかな?」
生徒会長が言った。
「え、何処にですか?」
「うーん、それは秘密にしておこうかな…」
生徒会長は笑顔を見せた。
少年は困った顔をする。
しばらく、二人は何気ない会話を交わした。
学校の校門に差し掛かる。
すると、突然、猫又さんが走ってきた。
「何してるのよ〜。ちょっと待って、待って待って待って~~~」
猫又さんが間に入り込んでいた。
学校のチャイムが鳴り響く。
3人は急いで校舎へと向かうことにした。走っていると、少年は生徒会長がどこへ連れて行こうとしているのか、その目的が気になっていた。
少年は胸を押さえていた。
土蜘蛛との戦いの際、彼の胸には穴が空いてしまっていた。
その穴が未だに塞がることなかった。
ただ、彼はその事実を誰にも打ち明けることができずにいた。
◇ ◇ ◇
日曜日、少年は生徒会長に連れてこられていた。
そこは高尾山であった。
少年の横には生徒会長がいた。
不思議なことに、生徒会長の近くには副会長と書記もいるようであった。
「さあ、頑張って頂上を目指しましょ~~~~~!!」
高尾山に生徒会長の声がこだましていた。
どうやら、少年は生徒会長によって高尾山に連れてこられてしまったらしい。
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