第22話 月食
突如、地下室に満ちる妖力が原因なのか、少年は自分の中のあやかしの魂が不安定になっていることに気づいた。あやかしの魂が生徒会長から流れる血を吸収し始めていた。少年は抵抗できず、次第に体が熱くなり、あやかしの魂の力が増していくのを感じていた。
土蜘蛛も少年のあやかしの魂に気づいていた。
「お前、もしかして、あやかしだったのか……」
土蜘蛛の声がした。
あやかしの魂の力が強くなると、少年は身動きが取れなくなっていた。
少年は混乱していた。
自分の感情を制御することができなくなっていた。その不安定な感情を抱えながら、少年は土蜘蛛を鋭い眼差しで睨みつけていた。
「おかしい……。お前の中からあやかしの魂を感じるぞ……」
土蜘蛛の驚いた声が聞こえた。
その時、少年の口が勝手に動いていた。
「こいつの中にあやかしの魂があるのさ…」
「なるほどな。そういうことか。それは面白い。オレにそのあやかしの魂を渡せ!!」
「それはダメだ」
「何故、お前が拒む? そうすれば許してやろうと言っているんだ。さあ、あやかしの魂を渡せ!」
「ダメだ。やっと目を覚ましたんだからな…」
「目を覚ました? 何を言っているんだ? まあ良い。力づくで手に入れることにしようか……」
土蜘蛛がゆっくりと少年の方へ歩み寄ってきた。
少年は動けない。
ただ、土蜘蛛を睨みつけた。
次の瞬間、上空から小さな蜘蛛たちが降ってきて、糸を出して少年を捕らえようとした。
少年が逃れられないと思った。
しかし、小さな蜘蛛たちが放った糸が切断された。
猫又さんが助けに来てくれたらしい。
ずっと、猫又さんが小さな蜘蛛に抗っていた。
「生徒会長、スクイ君、大丈夫ですか!?」
猫又さんの声が聞こえた。
しかし、小さな蜘蛛たちがあまりにも多くて、生徒会長と少年を完全に覆い尽くしていた。
もはやどうすることもできなくなっていた。
生徒会長も意識を失い、少年自身も身動きが取れなくなっていた。
逃げることさえ不可能であった。
蜘蛛たちによって、二人の姿はもう見えなくなっていた。
「う、うぐっ……。く、苦しい……」
少年の声がした。
その時、少年の内に眠るあやかしの魂が目覚め始めていた。
生徒会長の魂の片割れと、少年の魂の片割れが一つに重なり合おうとしていた。
月食の際に月と地球が重なるように。
二つの魂が一つになろうとしていた。
あやかしの声が聞こえてくる。
妖力が必要だ……。
半分に分かれた魂が重なり合おうとしていた。
妖力によって。
あやかしの魂が1つになっていた。
妖力が必要だ……。
少年の頭の中はその言葉で満ちていた。
段々と、あやかしの魂が小さな蜘蛛から妖力を吸収していく。
次第に、自分の中に妖力が満ち足りてきていることに気が付いていた。
小さな蜘蛛たちが消滅していく。
少年はあやかしの魂の妖力を制御できなくなっていた。
妖力が欲しい…。
あやかしの魂の声が聞こえる。
たくさんの妖力に満ちると、少年は意識をなくしてしまった。
次の瞬間、意識を失った少年の体をあやかしの魂が動かしていた。
生徒会長を放り投げていた。
ゆっくりと、少年が土蜘蛛の方に向かって歩いていた。
「何だ。その力は……」
土蜘蛛の声がした。
驚いて、戸惑っている声を出していた。
少年は返事をしなかった。
少年の体は、既にあやかしが動かしているだけでしかなかった。
その姿を見ると、土蜘蛛は怯えていた。
「待ってくれ。オレは元の世界に戻りたいだけなんだ。突然、ダンジョンで目覚めてしまったんだ…。オレはお前と争うつもりなんてないんだよ……」
次の瞬間、土蜘蛛の4本の足が消滅していた。
「ぐわぁぁぁ~、いてえぇぇ……。ふ、ふざけるな~~」
土蜘蛛が蜘蛛の糸を出そうとした。
しかし、糸を出すことはできず、土蜘蛛の体は崩れ去っていた。
蜘蛛たちは消滅していた。
その時、少年は人間の姿を保つことができなくなった。
妖力が地下室を覆い尽くしていた。
少年の肉体はあやかしの魂に奪われそうになっていた。
「フハハハハハッ」
あやかしの魂の声がした。
その時、少年の胸に剣が刺さった。
その剣は倶利迦羅剣という。剣の束は生徒会長がつかんでいた。
生徒会長の声がした。
「スクイ君、あやかしの魂があなたの魂を縛り付けようとしている。だけど、私が助けてあげるからね。あなたはまだ妖力をうまく制御できていないの。私たちがあなたの手助けをしてあげるからね…」
降魔剣の力により、あやかしの魂が2つに割れていた。
少年の中にある妖力が消えていく。
あやかしの魂の大きな叫び声が聞こえてきた。
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