第21話 蜘蛛の糸
生徒会長の白い犬が、少年を救うために土蜘蛛に向かって走り出した。それに気づいた土蜘蛛は、部屋中に張り巡らされた蜘蛛の糸に軽やかに飛び乗った。どうやら、無駄に危険を冒すことはしない主義のようだ。土蜘蛛は、糸の上から高い位置で生徒会長の動きを静かに観察していた。
土蜘蛛の声が聞こえてきた。
「その少年は捕まった。いくら足搔こうとオレの作った糸から逃れることはできない。どんなに力を入れても切れない。さらに説明をしてこう。この糸は妖力の攻撃は効かない。すべての妖力を弾くようにできてるからな!!」
生徒会長の声がした。
「君のことは絶対に傷付けさせない。スクイ君、君はそこにいてくれ!!」
生徒会長の白い犬たちが土蜘蛛の糸を切断しようとしていた。
その時、少年は考え事をしていた。
ダンジョンを作っていたせいで、土蜘蛛の魂が目覚めたようだった。ダンジョンのアリたちのように、蜘蛛も仲間にできるのではないかと少年は考えていた。しかし、事態はそう単純ではないかもしれない。足に絡まった糸を掴み、体を回転させて振り回すと、蜘蛛の糸は切れてしまった。
少年は歩けるようになっていたが、その場から動こうとはしなかった。隣で生徒会長が必死に戦っているのを見て、まだ動くべきではないと感じた。土蜘蛛と戦う理由もなく、目立ちたいわけでもなかった。彼にとって、ダンジョン作りはただの余暇の楽しみだった。だから、彼は静かにその場に立ち続けた。
その時、土蜘蛛の声がした。
くっくっくっと土蜘蛛の笑い声が聞こえてくる。
「そんなことをしても無駄だ。こんなことをしても糸は切れない。諦めた方が良いんじゃないか?」
「諦めない。私は絶対にあきらめない!」
生徒会長の声がした。
必死に、少年を助けようとしていた。
すると、土蜘蛛の声がした。
「では、先に陰陽師の魂から奪わせてもらおうか…」
「きっと、あなたは苦しかったのよ。もう、これ以上、苦しまないように私があなたを払ってあげる!!」
生徒会長は白い犬たちを土蜘蛛の方に走っていく。
無数の破裂音が聞こえてきていた。
白い犬たちが消滅していく。
生徒会長は小さな蜘蛛たちに苦戦をしていた。
彼女の叫び声が聞こえてくる。
「痛いっ!!!」
たくさんの蜘蛛に噛まれ、肉がちぎれ、真っ赤な血が服を赤く染めていた。
体には小さな蜘蛛が纏わりついてきていた。
「大丈夫ですか?」
少年が言う。
助けるべきだろう。
生徒会長のほうに向かうべきだ。
しかし、生徒会長の声がした。
「大丈夫。こんなやつらは大したことがない……」
苦しそうな顔をしながらも、生徒会長は笑っていた。
しかし、彼女の左半身は小さな蜘蛛たちによって絶えず噛みつかれていた。
「うわー、まだ、たくさんの蜘蛛が出てきますよ~」
猫又さんの声が聞こえてきた。
たくさんの小さな蜘蛛たちが集まっていた。
猫耳の男子たちが必死に小さな蜘蛛たちと戦っていた。
段々、酷い血の匂いがしてきた。
生徒会長が倒れていた。
すぐに、少年は生徒会長に纏わり付く蜘蛛を排除していた。
「大丈夫ですか!? ぼくが対応します!!」
少年は小さな蜘蛛を振り払っていく。
その時、少年の体は熱を帯び始めた。瞳孔が広がり、全身にしびれが走っていた。
肉体が溶けてなくなってしまいそうな、未知の違和感を覚えていた。
少年の内に宿るあやかしの魂が鼓動を早め、流れる血を吸い上げていくようであった。
かつて分かたれたあやかしの魂が、再び一つになろうとしている。
少年は身動が取れなくなっていた。
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