第19話 地下室
地下へ向かう暗い階段を下りていく。
現実ではなく、夢の中を歩いているかのような感覚に包まれる。
地下は、不思議な妖力が集まり始めていた。
ドアの前に来ると、かすかな声が聞こえてくる。
誰かが話しているのだろうか。
ガチャリ
ドアの取っ手を回すことにした。
地下室には、ぼんやりと立つ一人の女性の姿があった。
倉田カナがいた。
彼女は、部屋の中をふらふらと歩き回っている。
突然、その女性が笑い始めていた。
「あははははっ、何だか、楽しくなってきたような気がするわね?」
彼女の声が聞こえた。
少年は、再び操られているのではないかと、彼女をじっと見つめた。
しかし、そうではない。
ただ、彼女が強い妖力の影響を受けているようであった。
すると、生徒会長の声がした。
「カナさん、あなた、操られているの?」
生徒会長は心配そうな顔をしている。
倉田カナは笑っていた。
「よく、わからなくなってきました。あれー、何だっけな、うーん、私の頭の中がボーっとしちゃって。何だろう。何だかよくわからなくなってしまいました。ただ、何だか楽しくなってきちゃってるんです~」
カナの声が聞こえてきた。
彼女の表情は何かおかしい。それは怒りなのか、喜びなのか、はたまた全く別の何かなのか。
既に自分の感情を失っていたようだった。
地下室に満ちる妖気は、濃厚になっていると感じられた。
その強い妖気のせいで、少年は胸に痛みを覚えていた。まるでバラの棘が刺さったかのような、チクチクとした痛みであった。
倉田カナはそんな苦しそうな少年の姿を静かに見つめていた。
「あなた、何を恐れているの?」
と、倉田カナの声がした。
少年は返事ができない。
ただ、あやかしの魂が暴走しそうになっているのを必死に抑えようとしていた。
その時、生徒会長の声がしていた。
「カナさん、大丈夫!? おかしくなってない?」
その声を聞くと、倉田カナは怒った顔をしていた。
生徒会長を睨みつけていた。
「おかしくなんてなってない。きっと、おかしくなっているとしたら、それはあんたの方だと思う」
「え、私がおかしい?…」
生徒会長が戸惑った顔をしていた。
真っ青な顔になると、どうすることもできず、その場に立ち尽くしていた。
それを見て、倉田カナが笑っていた。
「そう。あんたはおかしくなっているのよ。そのことに気が付くべきだったのよ。さあ、あなたも救いを求めるの。きっと、そうすれば救われるわ…」
そう言うと、倉田カナが地下室の奥の方を指さしていた。
大男が椅子に座っていた。
暗闇の中にいる大男がこちらを見つめていた。
大男の声が聞こえた。
「なるほど、こいつが陰陽師か、待っていたよ……まったく、不思議なものだよな。突然、目が覚めたら、夢の中に戻ってきたような気持ちになるんだよ。ただ、オレはこんな世界にいたいわけじゃない。元の時代に戻りたいんだ…」
大男が言う。
「ねー、綺麗な場所でしょ~~~~」
また、倉田カナの声がした。
しかし、コンクリートで埋め尽くされた地下室である。
幻術なのか、何を見ているのだろうか。
「この女、お前が操っているんだろ? 元に戻せ!!」
猫又さんの声がした。
「おいおい、そんなことを言うなよ……」
大男は笑っていた。
地下室には人間のものと思われる骨が転がっており、嫌悪したいような異臭が満ちていた。
ただ、倉田カナはキツネにでも憑かれたような状態になっていた。
そのことに気が付いてない。
どうなっているのか。
少年は大男を見つめていた。
あやかしに違いない。
少年は戸惑っていた。
今、あやかしとの関係がバレることは避けなくてはならない。
「おい、待て、お前、あやかしの匂いがするぞ。お前はいったい誰だ?」
その時、大男の声がした。
とっさに、少年は他の生徒会の人たちに声をかける。
「この場所、おかしい。変な匂いがする。早く、この場所から出ましょう!!」
その時、大男が少年の方を指さしていた。
大男は頭を抱えていた。
「いったい、オレは何をしたらいいんだ。できることなら元の世界に戻りたいと思っていた。ただ、それすらうまくいかないんだからな……」
「はあ、言っていることがよくわからないんですけど?」
と、猫又さんが言う。
ずっと、大男は頭を抱えていた。
その時、子犬ぐらいの蜘蛛が少年に飛び掛かってきていた。
とっさに猫又さんは蜘蛛を避けていた。
「うわっ、あぶねー」
猫又さんが言う。
その時、大男の声がした。
「何故、避ける……。お前ら、オレの言うとおりにしろ。オレはな、陰陽師の魂を使って、元の世界に戻るのだ。そのためにだったら何だってするのだからな……」
その時、目の前にいる大きな男の体が変化しようとしていた。
男は土蜘蛛の姿に変えていく。
土蜘蛛が少年たちを睨みつけていた。
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