第14話 祓う側、祓われる側
「陰陽師の家系なんだよ」
生徒会長がそう告げていた。
その言葉に嘘はなさそうである。ただ、あやかしとは相反する存在と呼ぶべきだろうか。彼女は祓う側、自分は祓われる側になるんじゃないか。
そんな不安な気持ちがあふれてきていた。
きっと、
「趣味で、ダンジョンを作ってます」
と、言ったらどうなるのか。
生徒会長は許してはくれない。
ダンジョンにいるあやかしたちだって安全ではないかもしれない。
そう思うと、汗がポタリと落ちていた。
「スクイ君、どうしたんだい?」
生徒会長の声がした。
うーん、どうしようかな、と少年は思っていた。
ふと、少年は椅子から立ち上がろうとしていた。無意識だった。体が後ずさりをしそうになっていた。できるなら帰りたい。少年は、自分があやかし側だという気持ちがあった。
ダンジョンにいるあやかしたちを祓われたくはない。
どうしたらいいのだろうか。
生徒会長がこちらを見つめてくる。
生徒会に入るべきなのだろうか、きっと、断ったとしても、別の方法で、生徒会長は近づいてくるに違いなかった。面倒ごとが増えるだけじゃないか。そう思うと、少年の頭の中はぐるぐると回っていた。一度、生徒会に入ろうかな。あやかしのこと、全てを確認しておかなくてはならないと思うし。そんな気持ちにもなってきていた。
考えすぎて、少年の頭は空っぽになってしまったらしい。
「わかりました……。生徒会に入ります……」
と、少年は返事をしていた。
無意識に。
それを聞くと、生徒会長は嬉しそうな顔をしていた。
「入ってくれるの? ありがとう!!」
彼女の顔はかわいらしく、一瞬、少年はときめきそうになっていた。
ただ、何処かで失敗したような気もしていた。
マルチ商法にでも騙されてしまったのではないか。
そんな気がしていた。
いや、受け入れるしかない。
少年は自分に言い聞かせることにした。
諦めたように、猫又さんが持ってきた書類に名前を記載することにした。
その時、少年は生徒会長に尋ねることにした。
「生徒会長、一つだけ聞きたいことがあるんです」
「え、何かな?」
「ぼくは、あやかしの呪いにかけられてしまったらしいんです。その呪いを解くため、あやかしの分かれた魂を1つする必要があります。生徒会長はその方法を知っているんですか?」
「いや、さっぱりわからない…」
「そうなんですね…」
「まあ、これから調べていけばいいだろう。そうだ! 一度、私たちの体を合わせてみないか? そうすれば魂のこともわかるかもしれない……」
「え、待ってください。抱き合うってことですか!?」
「そうだよ……」
生徒会長は何も気にしていない様子であった。
段々、少年の方に近づいてくる。
副会長が生徒会長を塞ぐように立ち現れました。
「ちょっと、待ってください。生徒会長、そんなことをして意味があるとは思えませんよ!!」
突然、副会長の大きな声が部屋に聞こえてきた。
彼は焦った表情をしていた。
「金剛君、どうして君が顔を赤くしているんだ?」
生徒会長が言う。
「いえ、赤くなんてしていません。ただ、そんな不純なことをしてはダメだと…」
「不純とは何だろうか?」
「いえ、それはですね…。なんというか…」
金剛副会長は困った顔をしていた。
「まあ、その話は後でしょうか。さあ、スクイ君、抱き合おうじゃないか!!」
「え…。本当にですか?」
「本当だ、さあ、来なさい!!」
「ああ、わかりました…」
断れない雰囲気になっていた。
生徒会長が手を広げる。
恐る恐る、少年は生徒会長を抱きしめることにした。
ただ、背が高い。
見上げるようにしながら、少年は生徒会長を抱きしめていた。
胸が高鳴る。
少年の魂が震えているのを感じていた。
少年には懐かしさが満ちていた。まるで古い記憶の中を歩いているかのような感覚に包まれていた。それはきっと、あやかしの魂から来る記憶だろうと彼は思っていた。その感覚に留まりたい、そんな気持ちが彼を支配していた。
気が付くと、少年がその不思議な感覚に心を奪われていた。
その時、生徒会室のドアが開いた。
ガチャッ
ドアが開くと、そこには1人の女子生徒が立っていた。
「生徒会長、ちょっとご相談がありまして~~」
そう言いかけた生徒の顔が青ざめた。
目を丸くさせていた。
パタンッ
持っていたノートを落ちていた。
目の前で生徒会長と1年生の男子生徒が抱き合っているのを見て、あわあわと驚いた顔をしていた。
「うわ~~~~~~~~!」
女子生徒の声が聞こえてきた。
とっさに、少年は生徒会長から離れることにした。
沈黙。
沈黙。
さらに、沈黙。
女子生徒が2人を見つめていた。
慌てたように、スクイ少年が返事をしていた。
「あ……、あの、生徒会長、悩み相談、ありがとうございました。では、そろそろ帰ろうかと思います!!」
スクイ少年はとっさの嘘をついた。
生徒会長が笑っている。
「ああ、そうだな。ありがとう。スクイ君、困ったことがあったらまた来て良いんだよ!」
「では失礼します……」
そう言うと、スクイ少年は生徒会室から出ることにした。
スタタタタタッと。
急いで、靴置き場で靴を履き替え、スクイ少年は学校から帰ることにした。
生徒会長のぬくもりが少年の体に残っていた。
スクイは学校を出ることにした。
細い路地を抜けて、住宅街を歩いていくことにした。
少年の胸が高鳴っていた。家に帰っても、生徒会長のことが忘れられなくなっていた。
その時、彼は初恋をしていた。
祓う側と祓われる側であるというのに。
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