第101話 ダンジョン配信 セツナ戦 ④
ダンジョン配信は混乱していた。
配信の視聴者たちは暗黒鏡の影響を受けて、正常な判断ができない状態になっていた。
沼田君はコメント欄の対応に追われていた。
「どうして、こんな書き込みが増えているんだ。BANされちゃうよ~」
沼田君の泣きそうな声が聞こえてきた。
ただ、しばらくすると、沼田君自身も暗黒鏡の影響を受けようとしていた。
感情を抑えられなくなっていた。
突然、岩を叩く。
沼田君の手が真っ赤な血で染められていた。
沼田君の怒りに満ちた声がした。
「ああ、こいつら、きっとさ…。オレに嫉妬してるんだ。だから、こんなコメントを…。ふざけるな! 絶対に許さないからな!!」
ダンジョンの中で、沼田君が叫び声を出していた。
その時、少年は微笑んでいた。
しかし、少年は暗黒鏡の悪意に飲み込まれてしまったわけではなかった。
少年の魂だけは鏡の影響を受けていなかった。
ただ、少年の魂は甘酸っぱい感情に包まれていた。イチゴのような甘さと、口いっぱいの切なさを感じていた。
最初、それが何であるかがわからなかった。
ふと、少年は気づく。
これは恋だと。
これは、あやかしの魂の恋である、と…。
………。
次第に、おぼろげな風景が見えてきていた。
真っ青な草原に1人の女性が座っていた。彼女は手には奇麗な鏡を持っている。その姿を一匹のあやかしが見つめていた。それが恋であるとも知らず。ただ、ずっと、その女性を見つめていた。
………。
その時、少年はあやかしの魂の恋を知ることになった。
まだ、あやかしの魂はセツナとの戦いに集中しているせいで、少年のことに気が付いてはいないようであった。
◇ ◇ ◇
ダンジョンが激しく揺れていた。
激しい戦いにより、金槌坊たちが作成したダンジョンが崩れようとしていた。天井から岩が落ちてくると、沼田君の困惑した声が聞こえてくる。最下層は崩壊しかけていた。
戦いは激化していた。あやかしの戦いは人知を超えたものである。
次第に、セツナは劣勢になっていた。
朱雀の援護を受け、あやかしの魂はセツナを追い詰めていた。
何度か、セツナは暗黒鏡の力を使おうとしていたが、暗黒鏡を操ることができないでいた。暗黒鏡がもてあそんでいるのようでもあった。あやかしですらその力を制御するのは難しいものかもしれない。
朱雀の放つ炎が、セツナの行動範囲を狭めていった。更に、あやかしの魂の高火力な攻撃がセツナに追いつめていった。
まだ、セツナは致命傷は受けていない。
しかし、劣勢ではある。
セツナは彼らの攻撃を必死に耐えているだけであった。
朱雀の声が聞こえてきた。
「もう、逃げ場はない…」
セツナは立ち止まる。
取り囲むように朱雀の炎が広がっていた。
朱雀が飛び上がる。
朱雀は巨大な炎がセツナに向けて放っていた。
巨大な炎が落ちてきた。
すると、セツナの声がした。
「その攻撃は効きませんよ!!」
そう言うと、セツナが炎に消し去ろうとした。炎に触れる。その時、セツナの手が焼かれ始めていた。消し去ることも、防ぐこともできなかった。
セツナの困惑した声がした。
「あなた、人間の力を…」
「そうだ、お前を倒すため、人間の炎を取り込んだんだ!! きっと、私はこの炎により燃え尽きてしまうだろう。だが、それはお前も同じだ!!」
セツナの体が炎に包まれていた。
燃え上がっている。
それに抗うことができない。
その時、暗黒鏡が光りだした。禍々しい妖力を放ちながら…。
◇ ◇ ◇
その時、暗黒鏡は少年に問いかけた。
少年を見つめていた。
『少年、何故、お前の魂はあやかしの魂と結びついているのだ? あやかしでもない者が、私の力に抗うことなど許すことができぬ……』
さらに、暗黒鏡の声がする。
『あやかしの影響を受け、憎しみに満ちれば人は鬼になるはずではないか、何故、鬼にならないのだ!?』
暗黒鏡は困惑していた。
『まあ、良い…。私が、お前の魂を消滅させてやろう…。それがセツナというあやかしの望みでもあるようだからな。セツナというあやかしが、禍々しい炎で燃え尽きる前に望みを叶えてやろう…ではないか…』
その声が響く。
すると、少年は黒い袋にでも包まれたように深い闇の中に落ちていった。
闇に沈んでいくようであった。
その時、孤独だった幼少期の記憶を思い出し、少年の中に激しい怒りが湧き上がってきた。
段々、少年の魂が擦り切れていく。
その時、少年の魂はもがいていた。
また、あやかしの魂の感情が鮮明になっていた。
少年は、あやかしの魂の願いに触れていた。
その願いは、愛する人と共に深い眠りにつくことである。
そのため、彼は暗黒鏡を求めていた。
ずっと、あやかしの魂は恋をしていた。そのため、暗黒鏡を求めていた。
【応援よろしくお願いします!】
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。