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異世界転移の寄生虫(パラサイト)  作者: 黄田田
第1章:寄生虫の世界 A cruel world
8/25

同類

ジャングルを抜けた先にあった大平原。そこには多種多様な恐竜たちによる生活模様があった


空を飛ぶ種、小さな脚で大地を駆ける種、集団で狩りをする種、そして圧倒的な力で他を圧倒する種


「で、でけぇ…」


そのうえで、やはり一番目を引くのがあの巨大な首の長い恐竜だろう


「竜脚類っていうんだっけか。にしてもでけーな」


その巨大さは背後に見える白山に重なって見えるほどで、どしん、どしんと、巨体が歩くたび、地響きが起こる。それが群れを作って進んでいるのだから圧巻の光景である


(なんか生物の尊厳みたいなのを感じるわ。近づかんどこ。お、あれはなんだ?)


舞村が目を移すとそこには水場である湖周辺に、傷つき、弱っている草食恐竜とその横で争っている二匹の肉食恐竜がいた


(…獲物の取り合いかなんかか?私のために争わないで!って感じだろうな)


草食からしてみれば大迷惑な話である


(二匹とも体格ちっせーし、たいして迫力がねーな。これならさっきのでかいやつら見てた方がまだ…)


舞村が飽きて意識を外した瞬間、雄たけびが聞こえた


驚き、すぐに目を移すと、そこには王がいた


「ティ、ティラノサウルス…」


直感でわかる、獰猛さ、そしてその体格。土色の肌


まさに舞村が想像していた通りのティラノサウルスがそこにいた

(や、やべーティラノだ!生で見ちゃった。あいつらどうするんだ?争ってる間に、とんでもない漁夫が来たぞ)


この男も目の前に暴力の化身がいるというのにのんきなものである


「ギャァァァァァァァァァ!!!!」

「っつ!!」


五感が強化されてる今、思わず耳を塞ぎたくなるような雄たけび。さきほどから聞こえていた声の正体はこれだった


ドンドンドンと、大地を揺らしながら二匹の弱小恐竜に向かって突進するティラノサウルス


哀れ二匹は逃げ遅れたところを瞬く間に吹き飛ばされ、倒れこんだところをがぶりとかみつかれてしまった


(う、うわぁ…)


これが狩り、真の弱肉強食。世界の本質を今覗き見た


「グォォォォォォォォ!!!!」


これであの二匹の肉食も、あの弱った草食もティラノサウルスのものとなるのだろう


(今のうちに逃げとこ、にしてもここは本当は異世界じゃなくて過去の地球なのかもしれんな)


見慣れない植生や、寄生虫の存在から異世界と確信していたが、見知った何匹か恐竜の姿を見るに、捨てていた過去の地球説が最有力になった


(でも、それなら時折見かける怪鳥やバカでかい蛇や蜘蛛はなんだって話になるよな)


舞村がこの世界に来てからしばらくが立つが、直接かかわらなかっただけで多種多様な怪物たちを目撃している


それも昼間に、ジャングルを彷徨っているところをだ


(寄生虫は夜に出現する…、つまり昼間に出た化け物サイズの虫や動物どもは寄生虫とは関係ない過去の地球に存在した生き物?そもそもさっき見た竜脚類だって、ちょっとデカすぎる気もするし…あーもう)


舞村はもうわからなくなってきていた。ここが太古の地球なのか異世界なのか、まだ見知った前者であってほしいが疑問が頭の中を駆け巡る


虫、と寄生虫の線引きもわからない。なぜかこの世界にあまりいない昆虫だが、見かけると言えば見かける。巨大なサイズのやつもいる


(そもそもステージ2の蜘蛛型も蜘蛛っぽい姿をしてて、毒出したり糸だしたりするからそう名付けただけであって、よく見たら全然違う生き物だからな)


あんな真っ黒でグロテスクな蜘蛛はいない。普通の蜘蛛なら脚が8本あるところを蜘蛛型は4本で胴体を支え、そこから頭にかけて何本かの触手のようなものが生えている


初見は触手も含めて脚だと思っていたが、最近気づいた


(うーんわからん、というかおれは今寄生ステージ何なんだ。寄生された初期段階は3と仮定してるけど、ステージ3の寄生虫を見たことがないからな)


---舞村は気づいていなかった。背後にあるいくつかの生命の気配が消えたことを。一つ、弱った草食恐竜。二つ、三つ、争っていた小型の肉食恐竜


そして---4つ。最も巨大で最強だった生命の気配さえも


何となく、何となく背後に寂しい違和感を感じて舞村が振り返ると


そこには音もなく首の肉をそぎ落とされ、血を垂れ流し絶命したティラノサウルスの姿があった


そしてその隣には


「な…!!」


瞬間、一瞬で身体が芯の底まで冷えるような恐怖を感じる


どす黒い不吉な肌、紫紺に光る4つの眼、ヘビのように長い頸に、ラプトルのそれのような鋭い牙を携えている


舞村は確信した


こいつは地球に存在してはいけない。いや、いること自体がおかしい存在だと


同じような直感を抱いた生物は今まで一種だけ。口だけの怪物、空を飛び、爆破することで子供を拡散する不浄


そうあの生物を冒涜するかのような恐怖を生む異端。大型の寄生虫から感じる畏怖そのものであった


(ステージ3…!!!!)


「ギィヤァァァァァ…」


何やら奇妙なものを見るような目つきでティラノの死体を屠るのをやめ、こちらに近づいてくる寄生虫


(落ち着け…見るところ肉食恐竜がベースの寄生虫だ。なんで昼間に!って出てる疑問は置いといて、今はどうすべきか考えないと)


ステージ3と仮定すると、あの口だらけの悪魔や、空母型などの完全な異形よりは弱いはず。そう仮定して、落ち着いて対面することにした


(こちらの様子をうかがっている?仲間だと思ってるのか…?なら逃げれるか)


そっとその場から刺激しないようにゆっくり離れようとするが、あることに気づき戦慄する


(いや違う!寄生虫同士はお互い殺しあって片方吸収することで強くなる!!)

(つまりおれの方が獲物の優先順位が高いんだ!!!!)


「ギィヤァァァァァ!!!!」


雷のようなつんざく金切り声を上げながら突撃してくる寄生虫。やはり手足は恐竜のそれであり、機動力はあちらの方がはるかに高い!


(逃げれない!なら戦うしか)


おなじ寄生ステージ3なら実力は同じのはず。初期種族の差を考えていない、甘い仮定の下地獄の戦闘が始まった



9話は明日投稿します

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