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異世界転移の寄生虫(パラサイト)  作者: 黄田田
第1章:寄生虫の世界 A cruel world
7/25

いざ実食

足りないーーーー


果物を食べても、恐竜の肉を食べても、足りない。舞村は今までの人生で最も強烈な空腹を感じていた


より単純で、自分が生物だったことを思いださせる根源的な飢え。今すぐあれを食べないと死ぬ。そう直感するほどの渇望


プリプリとした触感。口に含み、噛むと柔らかな組織からぶしゃっと中の臓汁が垂れる感覚、それが、それが欲しい


舞村は今、寄生虫を求めていた


夜まで待っていられない。血眼にして寄生虫を探す。ステージは何でもいい。とにかくあの黒い殻にかみつきたかった


道中何回か恐竜ややたら大きい怪鳥に絡まれたがすべて叩き潰して寄生虫を探す


これが力の代償なのか、完全にバーサーカーと化した舞村はひたすらジャングルの奥、中腹へ進む。そこは本人が嫌な雰囲気を感じ取って進むのを避けていたところだった


そしてしばらく木々を破壊しながら進むと、巨木の影に隠れるような形でそれはあった


寄生虫は普段どこに潜んでいるのか。夜になったらバタバタと現れるくせになぜ昼間には全く出てこないのか


潜んでいるわけではない、“機能を停止しているのだ”


背の低い樹のようなそれは黒々と不気味な色を放っており、触手のような枝はゆらゆらと所在なさげに揺蕩っている


舞村は直感した。間違いない、あれは寄生虫由来の者だと


それはまさしく舞村が求めていたもの。正気を失っている舞村は喜々としてそれにかぶりつく


すると、いきなりの衝撃に驚いたのか、自衛反応か、その黒い樹は地表と自身から大量のステージ1、2の寄生虫、幼虫型、蜘蛛型を放ち始めた


そう、この黒い樹こそが寄生虫発生の原因、まさしくスポナーなのである


とはいえもうこのステージの寄生虫など今の舞村の敵ではない。むしろ餌が増えたことに感謝しながらひたすら襲ってくる寄生虫とスポナーをかじり続けた


そして時は流れて


「あ?どうなってんだ?寝てたのか」


舞村が正気を取り戻した時には周りの寄生虫、スポナー含めてあらゆる生物が消えていた


(確かめちゃめちゃ腹減ってて、移動しまくったら確か寄生虫が発生するスポナーらしきものを見つけたんだよな。それからどうしたんだっけ?覚えてねぇなぁ、まぁいいか)


本人はそれに気づいていない、いや気づけないが


だって事態はもう、すでに消化されてしまっているから





「え!ここどこだ?」


(気づいたら全く知らないとこに移動している…迷わないように目印つけたところが見当たらないし、東へ移動しても浜辺につかない)


記憶が曖昧なので、当然自分の現在地がわからない。ただでさえいつまでも同じ景色が続くジャングルなのに、これではいきなりテレポートさせられたことと変わりない


(くそっ、そろそろ夜じゃねぇか。まったくどうなってんだ)


見知らぬ土地でこの危険な夜など過ごせぬ。ようやく拠点らしい拠点ができていたころだったのいうのに


しかし、帰ることもできない。夜なので迂闊に動きたくないし、そしてそもそもこの場所からは脱出しなければいけないんだから同じ場所にとどまるなど、初めからナンセンスだったのだ


「よし」


気分を切り替えて前の野営では作成しなかったせいで大変なことになったトラップの作成をすることにする


(まずは毒罠の作成からだな。えーっとここをこうして)


舞村は自身の唾液を毒に変化させて指から出した糸に絡めて自作の罠を作ろうとしていた


(毒を糸に絡めて、足りない毒はまた出して…うん?)


(いやおれなにやってんだ!!?)


極めてナチュラルにとんでもないことを行っていた


(なんで、なんで毒とか糸とか出せるうえに変な知識まであるんだよ!?)


毒も糸も蜘蛛型…ステージ2の寄生虫のものである


つまりそういうことだ


(寄生虫は寄生虫同士で共食いして強くなる…つまり、食った相手の能力を取り込むのか?)


舞村には直接蜘蛛形を食べた記憶はないのでもはやホラーといっていい。最悪のス〇イダーマンの誕生だった


(お、オエ~~~)


舞村はこの日ばかりは自分の勘の良さを恨んだ。アイデアが成功しても、いいことばかりとは限らない


が、それはそれとして舞村は、吐きそうになりながらも今日の夜をしのげる仮拠点作りはしようと思った


「できちゃったよすごいの」


樹と樹の間に蜘蛛の巣上の糸を挟んで、そのすべてに毒を塗布する


(蜘蛛型の力を吸収して得た毒なんだから効かないかと思ってたが、なかなかどうして)


大成功


そもそも空中にあるので大型の寄生虫の視界から外れるし、蜘蛛型が上って襲ってきても、毒にかかって死ぬ


その様子はまるで電柱で感電死する鳥のようで、舞村は笑いながらハンモックのように寄りかかって夜を越すことができた


(まぁ一睡もできなかったんだがな…眠れないってか、寝る必要がないのか?つくづく変な体になった)


とりあえずこれで移動してもすきなだけ拠点を作れるのだから寝床の心配はない。問題はどうやってこの悪夢大陸から脱出するかだった


(さっきからギャァギャァうるせぇのってつまりそういうことだろ)


舞村が仮拠点から離れ西へ移動すると、ジャングルに偏在していたやたら高い樹の数が空くなってきた


地質も空気も、気持ちいい風が入ってくるようになっている


(予想が正しければあの浜辺から西へ移動している…で、そのうえさらに西へ進めば…)



「まぶしっ」


ジャングルの鬱蒼とした緑はそこで終わり、新たな景色が目に入る

日光照らす、新緑の大地。それすなわち大平原


「おぉ…」


そのだだっ広い場所には、今日も今日とて恐竜たちの弱肉強食が起こっていた


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