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異世界転移の寄生虫(パラサイト)  作者: 黄田田
第1章:寄生虫の世界 A cruel world
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「…あちぃわ!」


あまりの暑さに飛び起きる舞村、それはそうだ。灼熱のビーチにぶっ倒れていたのだから


「あれ生きてる?」


舞村はこの状況を不思議に思った。てっきり死んだと思っていたからだ


(くそでけぇ飛んでる虫みたいなやつに襲われてどうしたんだっけ…?)


昨晩の記憶が曖昧である


(確か、飛んできたやつがいきなり爆発して吹っ飛ばされておれの足と腕が…そうだ!足と腕!)


急遽確認するがどちらも無事だった。傷一つない、五体満足である


(ん?傷一つない?)


どう考えてもおかしい事態である。あれだけの爆発を近くで食らいながら、無傷


もげたと思っていた腕も足も生えそろっている


(昨晩のあれは幻覚だったのか…?)


舞村はこれ以上深く考えないことにした。とりあえず生き残れてハッピー!な精神だ


(で、なんなんですかねこいつらは…?)


改めて周りの状況に目を移す。クモのような黒い虫どもの死体があちらこちらに点在していた


(あ、そうだ思いだしだ。あの爆発のあと急に襲い掛かってきた連中じゃないか)


正確には爆発のあと、“産まれた”存在なのだが、まぁそれはどうでもいいことだろう


これで幻覚説が完全になくなり、舞村はさらに状況を理解できなくなった


(引き裂かれて死んでる…?)


虫たちの死骸はよく見ると爪で引き裂かれたように死んでいた。胴体ごと三本に裂かれ、中の臓物が見え隠れしている個体がほとんどだ


(無事な四肢、傷一つないからだ、無残な死体をさらしている虫ども…)


「これはおれが覚醒したっていうことでいいのでは!?」


重要なことを忘れているが、覚醒という表現はあっているだろう。これらの死体は、舞村が生み出したものなのだから


(なにか、なにか忘れているような…)


舞村の脳内のパズルのピースが埋まっていく。それと同時になにか熱いものが込み上げてくる


(爪、引き裂かれた死骸、虫…、虫!)


舞村は思いだした。自分はあの時、寄生虫らしき物体をそのまま取り込んだことを


「いや、だからなんだよ」


(寄生虫を食べたらスーパーパーワーをゲット?どこの三流コミックだそりゃ。クモに噛まれたとかならまだしも、キモイ虫を食って覚醒しましたって…)


瞬間、ギュインという音と同時に舞村の右手の爪が伸びた。紫の暴力的な、明らかに人間のそれではない爪が一気に生えたのである


まるで自分がやった!と証明するように


これに当然舞村は


「マジかよ…」

こう言うことしかできない






(色々とわかったことがある)


(まずおれが最後に食ったあの虫に寄生されたってのは確実だ。爪も生えるし、意識したら普通に体内でちょっと蠢いてるわ、こいつ)


(でも“コントロールしてる”のはおれだ。おれが奴に支配されているわけではない。さっきはいきなり爪が生えたが、それもおれの精神状態が不安定だったからだろう)


(今は安定している…こうやって体内の虫をあちこちに意のままに動かすことだってできるんだぜ?胃に触感があったの初めて知ったよ)


(で、どういうわけか寄生された虫を逆に支配することができて、とっても素敵な太い木の幹も引き裂ける爪が生えたわけだが…)


「この状況はどうなんだよう!」


舞村の目の前には明らかに警戒状態のアンキロサウルスらしき恐竜がいた


時は遡ること30分前、舞村が爪の性能を試していたときに大きな鳴き声が聞こえたのでまたあの化け物かと思い、偵察もかねて見に行ったところ、想像とは全く違う景色が繰り広げられていた


恐竜同士の戦闘である


なんとこのジャングル、というかこの異世界、普通に恐竜がいるのだ。舞村は驚きのあまり、卒倒しそうになった。異世界とは思っていたが、まさか超古代スタートとは思っていなかったからだ


肉食同士の戦闘、ジャングルに住んでいるのであろう種だったので少々小柄ではあったが、舞村も男の子なのでつい目の前で繰り広げられる大迫力の教育ビデオに、つい見入ってしまったのである


そして戦闘が終わり、片方の肉食が逃げ、ホクホク顔で振り返ったところこれである


アンキロサウルス。戦車のような装甲と巨大なハンマーをもった植物食恐竜がなにか奇妙なものを見るような目でこちらを見ていた


それでこの状況である


(どうするどうするどうする。逃げたら熊みたいに追ってくるかな?戦って勝てるわけがないし…そもそもなんで恐竜がいるんだよ!よくある剣と魔物の世界じゃないのかよ)


愚痴を言っても一人。何も解決するわけがない


(とりあえず木に登って逃げる!ジャンプしてこうだ)


舞村は地面をけり上げると放射状に風をまき散らしながら、頭上の木の樹冠に着地した


真下を見るとアンキロサウルスは何か変なものでも見たかというようにとぼとぼと向こうへ向かっていった


(ふぅ何とかなったな)


身体能力の上昇。寄生されて得たことで最も大きいものはこれだろう。もともと運動センスが高かったのもあって、舞村はもはやどのオリンピック競技に出ても金メダルを取れるような肉体を手にしていた


「我ながら化け物みたいになったな…」


(落ち着いて状況を整理してみるか)


(まず、ここが異世界であるということ。なぜ恐竜がいるかは知らないが、寄生虫の存在といい明らかに太古の地球ではない)


そして夜になったらまたあの化け物どもが闊歩しだすだろうということ。これが今現状最も意識すべきことだ)

現在の時刻は夕方。西日がそろそろ完全に影を落とす時間である


(だが、現在のおれは無力ではない…やられるだけじゃない。すぐ逃げることだってできる)


人は、いつだって力を手に入れたらそれを使ってみたくなるものである


(この寄生虫といい、化け物どもといい、こいつらが何なのか調べてみたい。ここから安全に出るために…)


それがどれほど愚かなことかも知らずに






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