どこかの宙
世界というものは曲がっており過去、現在、未来、全ての時間を内包している
魔術師はこの曲がった時空を自由に駆けることが可能である
緑色の宙があった。いや宙と呼ぶのもおかしいか。なぜなら天が逆立って角ばっている空など、ありはしないのだから
その緑は原始的な色で、見るにも不快だったのでとっさに目をそらすとこれまた不快な造形物が目に入った
螺旋状の塔は高くそびえ、まるでこんな悪夢のような世界にも文明があるような錯覚を覚えさせるようだ
その黒き塔が立ち並ぶ奥にひときわ大きい、建造物にしては巨大すぎるような、オリュンポス山が具現化したような大きさのピラミッドがある
恐ろしいことにその四角錐の不吉には目があり、その白すぎる外観には不釣り合いな黒いインクで塗りつぶしたような目は、この世すべての邪悪を凝縮したようで、それがじっとただ一点、私を見つめてきていた
ここはどこなのだろう。悪夢なのであれば早く覚めてくれ
【――――――――――――■だ】
遠くで何者かの声が聞こえる
ぼやけてよく見えない。白い姿だ、後光のようなものもさしている。あれが神なのだろうか
【――――――――――――王だ】
その声に呼応していくつかの存在もそちらに意識を向けたようだ
ここに住んでいるのであろう存在達は皆揺れ動いて見える。大きさや輪郭が絶えず変化しているのだ。無数の鋭い角度が織りなしてできているのは間違いない
この存在達はいったいなんなのだろう?いや、理解する必要はないのかもしれない。知ったら、きっと狂ってしまうから
【――――――――――――が王だ】
この奇怪な角度で構成された不浄そのものである世界には、あらゆる悪を冠絶した邪悪しかいないのだから
【―――――――――――私が王だ!】
この世界で祐逸まともに視認できる白い彼は、此処の王になれるのだろうか
『いや、王になるのはお前だ』
「はっ!!!」
いきなり超存在がのぞき込んできた。さっきから彼らの言葉は理解できないはずなのに頭に入ってくる。多数の鋭い角度でできた顔のようなものが脳裏に焼き付き、目を離せない
『この■■■■■■の王になるのは、お前だ』
あなたは誰……いや、“私は誰なんだ……?”