表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移の寄生虫(パラサイト)  作者: 黄田田
第1章:寄生虫の世界 A cruel world
21/25

刹那の彼方

絶望には2種類ある。


ミミズの話をしよう。彼らの最後をよく見ないだろうか?真夏、道路上で暑さにくたばって、そのまま干からびている姿を。それを見てあきれるものもいるだろう。なぜ餌も豊富で生息地でもある土を離れてわざわざ焼けたコンクリートの上なんかを這いずるのだと、おとなしく土の中に引きこもっていればこんな末路ではなかったのに


まさに飛んで火にいる夏の虫。光につられてしまった蛾よりもさらにミミズの死の方がたちが悪い、だって無意味だから。何を得ようとしたわけでもなく何の感慨もなく死んでいく


その行動もその結果もその死もすべてミミズが無知蒙昧な存在だったからということで片付けられてしまう。ミミズという生物の限界がそこにある。有限性の絶望、舞村はまさに今自分の限界を知り、太陽に焼かれるミミズがごとく、蝙蝠型に蹂躙されていた


月とすっぽん、太陽とミミズ、ステージ4とステージ5。舞村と蝙蝠型の力にはそれほどの大きな隔たりがあった


突如現れた闇ごと食らうそれはまさに竜のような狂猛な外見に、特有の悪魔のように反り立った巨大な耳、傷つけるために進化を遂げたような鎌めいた翼など飛鼠と呼ばれていたような面影はもうなく、あるのはドス黒く塗れた躰に、爛爛と楽し気に輝く紫のみである


見るからに肉食恐竜がベースでその残虐性を増したか、ポンポンと挽肉になった舞村を爪で切り裂きながらボールのように浮かして遊ぶ


何も思えなかった。痛いという反射すらなかった、ただの肉塊になって吹き飛び洞窟の砂利をべったりと血だらけの躰に張り付けて転がる


それで息をしなくなったタイミングでピタリと攻撃がやむが、遊ばれているだけだ、再生が完了するまで手を出さない。本体を引きずり出してとどめを入れない


蝙蝠型は舞村が紫紺に光るのを今か今かと待ち、また再生が完了すると何かアクションをする前にその首を捩じり取る


寄生虫にまともな思考回路は存在しないがこと獲物をいたぶることに関しては一定の造詣があるとしか言えない。手長足長も、恐竜型も、みな有利だったときは舞村の肉をえぐりその苦痛の叫び声を聞いたときには溌剌としていた

今度は洞窟の最奥まで弾き飛ばされ、力なく異形化…竜の姿も取れなくなり、完全にみじめな餌と化した舞村だが本人はかろうじて動く脳をフル回転させてこちらの方が都合がいいとわざと数少ない反撃のチャンスを逃していた


(これでいい…こっちの方がいい…。これならあいつらに被害は出ねぇ)


セツナも含む、いまだ気を失ったばかりの翼人たち、彼、の最後の言葉を守るためにもどれだけ苦しめられようが舞村は彼らを守る義務があった


『約束する』


そういったから


(だからおれはここで戦う、あいつらに手出しはさせない)


舞村は人間の状態のままその血まみれた顔を上にあげると蝙蝠型に一瞬で飛びついた


「菴輔?逵滉シシ縺?荳我ク」


蝙蝠型は奇襲に驚きはしたもののあまりに非力な攻撃に嘲笑うかのように裂けた口をこれでもかと曲げる。滴る唾液が舞村の次の死に方を呈示していた


空中で黒二色がぶれるように振動したかと思うと、舞村は蝙蝠型にペロリと平らげられていた。このまま本体まで消化されてしまえばなすすべもない死である


(くそっ!)


怪物の中は臓物までどす黒い、またしてもなんとか抵抗して変身し牙で腹を食い破るもそんなことで動じたりダメージを負ったりするステージ5ではない


冷静に腹の中の舞村が出てくると爪で一裂き、二裂き、これだけで舞村はまた再生待ちの骸になれ果てる


腹部も瞬時に再生し、そろそろ飽きたから終わらすかとばかりに本格的に舞村を破壊しようと翼を広げたまま地に転がった舞村に接近する


これだけ実力差がある場合とどめを刺すなんてこと簡単だ、ぐちゃぐちゃに力のまま蹂躙してしまえばいい。外殻がいくら硬かろうとステージ5の寄生虫の膂力から繰り出される数トンの質量の暴力に耐えられるはずがない


蝙蝠型はそんなことは百も承知で端的に言えば油断していた。なので思いもよらない反撃を食らうことになる


灰色に冷たくなっている再生待ちの死骸、その腹の中を掻っ捌いて何かが急速に這い上がってきた。蝙蝠型と同じくどす黒い百足だ、死体から出でるとどこか苦しそうにしながらいまだ新たな肉を屠るために身近な生物に探している


身近な生命…つまり蝙蝠型だ。百足型は蝙蝠型すらとらえられない一瞬のスピードで頑強な皮膚をえぐると文字通り蝙蝠型の体内に潜行する


「縺ェ繧薙□縺薙l縺ッ?」


さすがにこれはこらえたようで、蝙蝠型は体内にいきなり現れた異物感と痛みに悶絶する。中の百足型を引きずり出そうと半狂乱になって自傷行為を続けているうちに舞村の再生が完了した


「あぁ、おれは一人じゃなかったな」


百足型はコントロール下に置いているが、“舞村が死んだら”別らしい。勝手に自立行動を始める、厄介極まりないが今この状況では非常に頼もしい伏兵だ


(だがこれからどうすれば…)


現在やつに混乱を与えることはできたが決定打にかける。即時再生するやつになんとか致命の一撃を入れる必要があった


「つっ、『竜爪(りゅうそう)!』」


蝙蝠型の首元に向けて渾身の力を込めた右手竜化によるかぎづめ。即時再生し効果なし


竜牙(りゅうが)


再び竜に転身し強力な食らいつきを行うも瞬時に避けられ尾による反撃を食らってしまう。刺突を受け沼に墜落した舞村は毒だ、とその攻撃を理解した


どうやらほとんど似たような寄生虫としての生を歩んできたらしい。数々の毒虫、魑魅魍魎共を斃して自身の力に変えてきたのだ。蠍の尾節のような尾も恐竜のような顎も、少しルートを変えていなければこの蝙蝠型は舞村の将来だったかもしれない


この呪詛空間のような洞窟の中でお互い殺しあう、食らいあう。舞村はまさにこの寄生虫の世界がどれだけ残酷で蟲毒めいた地獄であることを改めて身に刻んだ


だからこそ死ぬわけにはいかない。この虫を殺して、自身が上のステージの存在ということを存在せねば!


「ギシャァァァァァァ!!!!」


雄たけびを上げて再度突撃。だが思考を変えて今度は内部にいる百足型の支援に徹してみることにした


現在蝙蝠型は百足型の侵入によりまともな思考すらできないほど苦しんでいる。それを後押ししてやればいい


というわけで身体を小さくすることにした。前回蠅型との戦闘で見せた肉体操作の要領を使い。竜化した状態のまま全体の筋肉量はそのままに脂肪や無駄な血管、細胞などを切り捨てていく、虚空から肉を持ってきて再生できる寄生虫にとってこれくらい造作もない


防御面を完全に捨て、工作特化になった舞村はその蛇のような体躯を駆ってドリルのように回転し、蝙蝠型の喉元を貫通し、食道から侵入することに成功した


「菴輔?逵滉シシ縺??」


突如細長くなった舞村の奇襲に驚き、またしても反応できなかった蝙蝠型は内部で二匹の寄生虫が暴れることの脅威を知ることになる


「繧、繧ソ繧、逞帙>縺?◆縺!」


想像を絶する苦痛。ただでさえ痛覚だけは何倍も強い寄生虫という種族、再生するにしてもこれには耐えがたきものがある


まだ致命傷を受けていないのにもかかわらず紫電に光る肉身。痛みに耐えきれずたまらず自爆したのだ


当然露出した本体、やはりというか硬化された卵のような臓器の中に隔離されていた。銀に鈍く光るそれを舞村は見過ごさなかった。ミミズのようになった体をしならせてなんとかそれに凶爪を届かせようとするが蝙蝠型とてやすやす破壊させるほど甘くはない


即座に本体を中心に再生を完了し、今度はまさか火を吹いてきた。高エネルギーの結晶体をもろに受けた舞村は半身を焼き焦がされ再起不能になってしまう


(そんな芸当までできるのかよ…)


ここまで来るともはや元になった生物が何かとか関係ない、完全なる御伽話の怪物である。ステージ5、まさに天上の存在であった


ついに位置を感知されとうとうはじき出された百足型もそこに転がる。寄生虫二匹、完全に打つ手なしの状況だ


それでも舞村はあきらめない。なんとか毒沼につかりながらこの状況から出せる最善策を考える。なんとか言うことを聞かない死んだ細胞にほかの部位から通した神経をつかい立ち上がるもいままで好き勝手やってくれたなとばかりに激昂した蝙蝠型にかぎ爪でとらえられ百足型もろとも空中まで運びだされる


つららのように並び立つ鍾乳洞の剣山に擦り付けられ肉が削り取られ、夥しい量の血しぶきが洞窟に広がる


「ガァァァァァァ!!!!」


損傷具合に再生が追いつかずどんどんと腹部にある本体のところまで骨身が削られていく。このまま本体までガリガリとやられたら天国への階段まっしぐらだ


舞村はなんとか自分ではなく百足型を操作して抵抗を試みるもまるで歯が立たず、この地獄の寄生虫おろしは続く


蝙蝠型が洞窟の中を狂乱のうちに飛び舞村が擦り切れて溶けたバターのようになる頃合いには本体はとっくに地面に落ちていた


舞村の意識がないうちは本体を動かすもできないので蝙蝠型が気づいた瞬間=死である。でっぷりと肥えた本体は毒沼の中真っ白にその存在の愚かさを自己主張していた


寄生虫とて無敵ではない。特に膂力で劣るようでなら初めから存在の格が違うと諦めて逃げるしかなかったのである、舞村はそれができなかった。守るために、かばうために逃げることは許されなかったのである


終わりだ。蝙蝠型はようやく舞村の肉体がとっくに真っ赤なぼろ雑巾のようになっているのに気づくと漸く地に落ちた本体を察知する


本体が紫に輝き、あと少しで再生というタイミングで舞村の本体はふみつぶされ、完全に破壊された


「蜍昴▲縺滂シ?シ!!!」


蝙蝠型は高らかに勝利の咆哮を唱えた。マイムラクオンという寄生虫の存在はここで終わりを迎えたのである




***


だが舞村の意識はまだ残っていた。なぜ?百足型だ。舞村はぼろ雑巾のようになった肉体の方でなんとか最後の力を振り絞って百足型を捕食し、百足型の本体を新たな核とすることで生き延びた


それに全く気づいていない蝙蝠型はそのままどこかに行ってしまい。再生を完了させるまでの時間は確保することができた


「マイムラ!アルフ!どこだ、どこにいる。無事なのか!」


さらに幸運なことに状況を好転させる事態が起こる。翼人たちが目を覚ましたのだ、セツナを含む数人の翼人たちが舞村と今は亡きアルフを探して飛んできている


もちろん舞村にとっては約束の手前庇護すべき存在であり蝙蝠型がうろつくここまで来てほしくなかったが、舞村はこの戦いに翼人たちが参戦してくれれば勝てるだろうなという確信があった


「マイムラ!?まさかマイムラか!?大丈夫か、何があった」


セツナが、残された翼人たちが、最後の希望がこちらに近づいてくる、彼らを死なせるわけにはいかない


生命の気配を察知し、急遽強襲をしかけてくる蝙蝠型。それと同時に舞村の再生、いや再誕が完了した


---------ギィィンン


爪と爪が交差してまるで剣戦のような鈍い音を奏でる。そのまま吹き飛ばされてしまう舞村だが彼らは守ることはできた。そして状況を即時理解したセツナが蝙蝠型に一刀を食らわせる、同時に他の翼人が蝙蝠型を取り囲み形成は逆転した


いい加減理解すべきだった。自分は救世主などではなく連携の歯車なのだと


「わるいな。一人じゃ無理だったわ」

「何も謝ることはないな」


ここで片付けるぞ。セツナのその一声で翼人たちは驚くほど鮮やかな連携をみせた。いつぞやの舞村に見せたような刀、槌、槍を用いた空中連撃。まだ内部を荒らされたせいで本調子が出せない蝙蝠型にとってそれは非常に厄介なものであった


なにせ速度は翼人たちの方が勝っているおかげで図体がデカい寄生虫の方は後手に回らずを得ない。ひとつひとつの一撃は塵芥のようなものだがそれを何度も重ねられると対応に遅れてしまう


「縺?*縺」縺溘>繧薙□繧茨シ」

「効いてるぞ!畳みかけろ」


そしてその攻撃にもいずれか無視できないものがある。セツナによる剣撃だ、岩をもたたき切るそれは蝙蝠型の厚い外皮をたやすく切断できる。再生を考えればそれすら無視していいのだがなまじ痛覚がある以上、自然にそれだけは必死で避けていた


そして、それが隙となった。蝙蝠型はセツナにだけ意識を集中しすぎて背後からやってくる脅威に気付けなかった


「これで終わりだっ!!みんな離れろ」

「待て、マイムラ何をするつもりだっ!やめろっ」

「??菴輔r???」


舞村のその竜体が今度は自ら紫電に光る。致命の一撃を食らわせるためにはこれしかないと


舞村は背後からぴったりと蛇のように対象に絡みつくと、そのまま最大火力で自爆した。本体をも自壊しそうな勢いで紫の爆炎は募り、周囲を洞窟ごと焼き尽くした


「マイムラァァ!!!!」


まるで今まで映像がすべて夢、幻だったように寄生虫二匹は塵と消えた


命の美しさとはなんだろう。舞村は雲一つない穏やかな晴れ空の元、見知らぬ花畑のなかで考えていた


ある哲学者が言っていた気がする。人は常に考え続けなさいと。考えるのをやめたとき、人はあらゆる美を失うと


しかし、自立して考えることこそが本当に生物として美しいのであろうか、意識が、思考が弱くなるにつれ生物としての価値を失うとでも?


それは違う。命の美しさとはもっと別の、哺乳類や鳥類など見栄えの美しさではなく全く違う別の美しさ、神秘性を孕んだものがふさわしい。命とはめぐるものだ、我らが常に死んだあとバクテリアに食されるように連鎖がある。自然の駒の一つでしかない。だからこそ多様性がある


だから決して特定の生物だけが死ぬことなく、老いることもなく、略奪と侵略を繰り返して生きることなど許されない。だから寄生虫は共食いするのであろう。寄生虫同士の共食いはこれ以上この巨悪をゆるしてはいけないと思った世界の、抑止力の、ちょっといた善意なのかもしれない


寄生虫は許されない。命巡ることなく、簒奪のみを繰り返す。だがもとは人の身でありながら寄生虫へと落ちてしまった自分のようなものはどうするのであろう?


(まぁ…このまま消えるのが一番いいかな)


あの大陸ではまだ寄生虫の脅威は続くであろう。翼人たちの戦力が半ば壊滅した今、完全に乗っ取られて世界ごと滅ぼされてしまうかもしれない。でもこの美しい自然の中では自分という存在がひどく穢れたものに見えて、一刻も早く消えたかった


「……!!!」


(だから、おれは…)


「……ムラ!!」


故郷はどこにあるのだろう。死んだらまたティコたちに会えるのか?もし地獄に行かないのならアルフにあって謝罪しなければな。そんなことを考えていた


「マイムラっつ!!!!!!」


はっと目が覚めたそこは呪われた戦場。崩れ去る洞穴の中、異形と残り僅かな生命がしのぎを削っていた


(あぁ…おれは失敗したのか、ならまた…)


未知ずれの方法を模索していると、舞村は頬に電撃が走ったかのような衝撃を受ける


「二度と勝手なことはするな!!!」


舞村は蘇生したばかりで状況がよくつかめていなかったが目の前の少女が泣いていることだけは理解できた。でもこの少女は普段なら絶対に涙をみせないようなそんな強かな女性だったはずなのに


「セツナ…」

「私だって馬鹿じゃない。みんな死んで、最後にアルフがお前に何を言ったかなんて予想がつく、状況は絶望的だから私たちだけは守ろうとしてくれたんだろう?だからあんな自爆なんて無茶な行動に出た、次に繋げるために、そうだろ?だがそんなことで得た民族の未来だなんて何も価値がない」

「私はお前が好きなんだ。お前と、数少ない仲間たちがいるからこそ私は剣を振るえるんだ。心が折れてしまっても、この好きな人に傷ついてほしくないという思いだけで戦える。だから二度と自分から犠牲になるような無茶な真似はしないでくれ」


舞村は返す言葉もなかった。なにか言おうと思ったが頭の中が真っ白で何も発せなかった。そしてそんな目じりに涙を浮かべて独白した彼女の後ろに極黒の脅威が迫る


―――――――キィィィン


だが些細ごとのように彼女は一刀のもと斬り捨てた


「繧ャ繧!繧!繧!繧!繧!繧!!!!!!」


完全に異形と化した蝙蝠型は胴体ごと真っ二つにされて絶叫した。以前より明らかに弱くなっている。あの自爆が効いたのか、いや違う


「セツナ嬢!もう限界です」

「あぁわかった」


翼人たちだ、舞村がまだ“見たことがない”技術“でここまで蝙蝠型を追いつめている。全員が紅いオーラを纏い、セツナもまた血のような色彩をその翼と刀に纏わせながら、ゆっくりと蝙蝠型に歩み寄っていく


「セツナ…!待って」

「私はね。お前たちがうらやましかったんだよ」


セツナのその褐色の瞳がいつもにか空のような青い色彩になっている。覚悟の表情で剣気を練っていた


「まさか…」

「私は生粋の戦闘狂だ。ただそこに戦いがあればいい、誰のためでもなく剣がただ振るえればいい。ほかの大陸も、翼人の未来もすべてがどうでもよかった。そんななか現れたのがお前たちセランガ、寄生虫だ。ただ破壊と戦闘だけを繰り返す生命…だが私はそれを間違ったことだとは思ってないよ」

「マイムラ、お前はよく言っていたな。自分は呪われた存在だと、だがね、そんな独りよがりな呪われた力を他者のために振るえることがどれほど尊いことか。命が無限にあるからいくらでも私たちのために懸けられるって?だとしたら素晴らしい生命体じゃないか、寄生虫は」

「そんなことはない。醜くて野蛮でこの世に呪詛をまき散らす侵略者だ!早くそいつから離れるんだセツナッ!」

「私はずっと自分のために力を振るいたかった。この法の存在しない広大な自然の元、自由ということは別に罪じゃない。この大地に私という爪痕を残しておきたかった。だから好き勝手暴れられる寄生虫たちがうらやましかったんだ」


「だが今はそうは思わない」


一呼吸おいてセツナはその深紅と蒼、異なる二色を纏った剣気を吐血しながら極大まで向上させる


「誰かのために力を振るえる、そこにサムライとしての高潔さを、知ってしまったから」


舞村はやめろ、と叫びたかったが血化粧のまま究極剣を完成させたセツナのあまりの美しさと、最後に紡がれた言葉が衝撃的でただその絶技を見ることしかできなかった


「お前はその存在を誇れ、マイムラ」


彼女は、彼女は――――――


『一刀直心流、最終奥義 極彩色-零』


刹那、音がすべて世界から失せ、彼女と蝙蝠型は朱と蒼と入り混じる双極の光のなかにかき消えた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ