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異世界転移の寄生虫(パラサイト)  作者: 黄田田
第1章:寄生虫の世界 A cruel world
2/25

目覚め

―――――初めから、決まっていたことだった。





チチッ、チチッ、ギャー、ギャー


(なんだ…?鳥の声か?うるさいな。こっちは寝てんだよ。暑いなかな、寝心地も最悪だしまぶしいんだよ糞)


妙に体が不安定だ。身の置き場がないというか、ごつごつとしている


(にしても熱い、暑いな、暑すぎる!)


「はっ」


舞村が目を開けるとそこは巨大な密林だった。木々からこもれる太陽が覚醒を早だたせる


(え?)


暑さにいらだっていた彼だったがとんでもない状況に怒りすら忘れる。振り返るとこれまた巨大な木があり、ここに寄りかかるような形で寝ていたらしい


「えーと、どういう状況?」


舞村久遠、起き抜けの異世界転移であった





***


(昨日は先輩と飲みに行ってそっからどうしたんだっけ)


少なくともこんなに暑い密林に来た思いはない


(ここはまじでどこなんだよ…)


どんな感情よりも困惑が勝る。明らかに樹海の木は日本のそれよりとははるかに高く、屋久島の縄文杉がかわいく見えるレベルだ


そして次に気温、日光にあたっりぱなしだったとはいえこの気温の高さはどう考えても異常だ。汗はどっぷりとかき、もうすでに舌が乾きはじめていた


普通ここが日本だったらヒートアイランド現象で森林部より都市部の方が気温が高くなるというのに、真夏の東京よりはるかに熱いこの気温。熱帯のアマゾンのような湿気と熱気だ


舞村はここは日本ではないのかという最悪の予想をし、ある結論にたどり着いた


(異世界転生、いやこの場合は転移か?)


(いや、ないない拉致されて東南アジアに送られたとかいろいろあるだろう)


それも問題だと思うが、舞村はどうしてもこの混沌とした状況をさらに加速させる要素を省いておきたかった


(とりあえず水の確保…だよな。こういう時は何よりもまず水を確保しろってBoutubeで見た)


巨大樹の根が張り足場が悪い大地を進む。進む、10分くらいそうしていると少々濁ってはいるが小川を発見することができた


(これ、このまま飲んでも大丈夫なんかな)


汚水ギリギリの濁り具合で、どう考えても大丈夫ではないが、喉が渇いていた舞村は飲む以外の選択肢はなかった


(あぁー水うめぇ)


苦味に少しの土の味は感じるが目覚めからずっと求めていた水であるのでずっとうまく感じる


(ん?)


なんか細いにゅっとした糸みたいなのも飲み込んだ気がするが気にしない。寄生虫という単語がよぎるがすぐに消して水をひたすら飲む


(これからどうしよう…)


飲み終わり天を仰ぎ見るとどうしようもないほど高い密林の木と、絶望が広がっていた





***


結局あの後腹を壊してしまい30分ほどの格闘の後、また水を求めることになってしまった


(最悪だ…)


当然葉っぱで尻を拭くのも初めての経験である。その葉っぱが妙にギザギザしていたいのってもういろいろと限界だ


(何も持ってきてないのが痛すぎるよなー)


探索の助けになりそうなものは何一つなく、ケータイと財布だけ、服装は白シャツに黒いスラックスと非常にシンプルなもの


舞村は比較的体力がある方だがあと何十分歩けばこのジャングルを抜けられるのかと思うと気が滅入る


だが今はひたすら歩くしかない。濁った川を抜けひたすら適当にまっすぐ進む


不気味だったのは今の今まで生物らしい生物を見ていないことだ。小さい虫なんかはいたが、目覚める前に鳥の鳴き声らしきものは聞こえたのに空に一羽もいない


こんなジャングルなのだから多種多様な生物が蔓延っていてもおかしくないとは思うのだが


まぁいいと思い、ひたすら出口を求めて舞村は歩く


汗がびっしょりとシャツにひりつく、もっときれいな川を見つけたら水を飲むほかに洗濯もしたいと思った


(にしても…)


周りに生える奇怪な植生を見るたび、ここが異世界であるという証拠を裏打ちしてくれる。いっかいの食虫植物にしては大きすぎる代物や、異臭を放つ奇妙な色の花など。これで食べれそうな果物が生えている植物は一切ないというのだからかわいげがない


(とにかく早く汚水じゃない水分を確保しないと…)


雨でも降ってくれないだろうか、人生でこれまで雨を待ち望んだ瞬間は初めてだった。高温多湿なジャングルなんだからすぐに天候が急変してもおかしくないとは思うのだが、望みとは反対のカンカン照りである





***


ひたすら歩き続けていくほどか。ジャングルの終わりは見えないが食えそうな果物なら見つけることができた。見た目もにおいもマンゴーのようなフルーツだ


(地面に落ちてたやつだがな…)


木になっているものには届かないので仕方ない。基本的にこの世界の木は高いのだ。高い分落ちた時の衝撃でつぶれてしまっているがまぁこれで水分が取れるなら構わない


汚水の件があったので心配したが大丈夫だった、味はしなかったが。見た目はマンゴーなのに


ポケットにほかのつぶれた果物をいれ、再び歩き始めるもこのジャングルの終わりは見えない。ひたすら東に向かっているつもりなのだが、この判断は間違っているのだろうか


そもそもいきなり妙な場所に飛ばされたのだから正解とかあるのか?舞村は思案する、目標はなんだと


(今はとにかく町を見つけるのが目標か?ここが異世界にしろ南アジアの辺境にしろとにかく人と会わないと)





***


歩く、ひたすら歩く。もう舞村は疲れて果ててしまった。いつまでも同じ景色が続くような感覚、花は生えているのに虫、その他生物がほとんどいないという異常な環境に


幸いだとすれば日が落ちてきたことか、気温が下がってきたことを感じ、舞村はここで休むことに決めた


(日が落ちる、今日一日ずっとこうして歩いてきたのか…)


この世界の夜がどんなに恐ろしいものか知らずに…






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