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異世界転移の寄生虫(パラサイト)  作者: 黄田田
第1章:寄生虫の世界 A cruel world
15/25

変異体

「マイムラ、起きろ。いない?」


朝の日光がささる日当たりだけはいい殺風景な一室。カーテンも閉めず、窓から吹き抜けた風が入ってくる


モーニングコールのつもりで声をかけたが部屋主は留守のようだ


「おかしいな、逃げられるわけがないんだが」


セツナは不思議そうに考え込むが、すぐになんてことなさそうにその無表情のまま外に出る


すると男たちの騒がしい声が聞こえ、そこに答えがあった


「全く、お前ってやつは本当にすごいな。まさかこの量の解体ができるなんてよ!」

「いやいや、監督が一夜まるごと付き合ってくださってくれたおかげですよ」

「謙遜するなって!丸一日つるはし振れるやつなんてお前だけだぜ」


村の外壁を解体しにきた業者に混じっていたようだ。朝っぱらから数人で地べたに座って酒を仰いでいる


「おい、何をしている」

「あっセツナじゃん。おはようございまーす」


セツナが後ろから声をかけるとやたらのんきな声が返ってきた


「おはようじゃない。お前は自分が一応囚人ということを理解しているのか?」

「すまん。でもあまりにも夜暇なもんだから、昼夜問わず忙しそうに飛んでる解体業者さん見て混じりたくなっちゃんだよ」

「夜が暇?寝ればいいだろ。だいたい翼がないのにどうやってあの高さの壁の作業ができたんだ」


「いや、なんか寝れないっていうかもう寝る必要なんてあるのかって思ってな。作業はこの爪ではりついてした」


そういって恐竜のようなかぎ爪をセツナに見せつける舞村。つくづく化け物になったと自嘲するが、セツナはあきれて言葉も出ていなかった


「まぁいい。とりあえず今日は大事な遠征のための会議の日だからそのままついてきてくれ」


遠征。寄生虫の討伐及び、里の寄生された翼人の治療のため行うもの。あの時協力するといった舞村に参加しないという術はない


(まぁ協力しないなんて言ったらその場で首切られててもおかしくなかったがな)


セツナに連れられ朝の街を歩く、砂色の建造物とすぐそこにある海を見て改めて遠いところに来たと舞村は実感した


(地形や気候は北アフリカのそれに近い感じか?あの海がさしも地中海に例えられなくもないか)


翼人の髪の毛を回収してしまえば、いつでもあの海の向こうを見に行けるのだろうか。そうも考えたが、人がいた時点でわざわざ移動する必要もなかった


最もこの里の人口は少ないのか、これだけ人が集中しそうな構造なのに人通りはまばらだが


そんなことを考えながら案内されたのが村の一番高い位置にあり目立っていたモスクのような豪華な建物


「この中だ」

「入っていいのか」

「あぁこの先にお偉いがたが待っている。お前は初めて会うな」


お偉いさん。セツナと同じような翼が生えた翼人なのだろうか、だとしたらチャンスである。密接できる機会さえあれば、簡単に髪の毛を抜いて【模倣】の材料にできる


顔が利く人物なら何か困ったことが起きても損はないだろう。舞村は今のうち瞬時に毛を抜くべくウォーミングアップを始めた


「なにしてるんだ?」


が、振り向いたセツナに見つかってしまった。本当に何をしているんだというような表情で見つめてくるが何でもないと言い返す


セツナの目線がいっそう冷たくなった気がしたものの、そのまま舞村は会議室に案内された


扉が開くと一斉にこちらを見る目


「おぉ驚いた。本当に人の姿を保っている」

「瞳の方は…、間違いない彼らと同じ紫だ」

「待て片方は緑だぞ。違いはなんだ?」


壮年の翼人たちがその蓄えた髭や、立派な羽を主張しながら話し込んでいる。ここで初めて容姿の指摘をされた舞村だが本人は驚いてはいなかった


(まぁ水場とかで確認する術はあったからな。我ながらオッドアイとか中二くさくなったもんだ)


紫は寄生虫由来なもので、緑はもともと持っていた母親の遺伝だ


「この男が此度の騒動を引き起こしたマイムラクオンです。寄生虫に寄生されてなおかつ理性と人の形を失っていない貴重な存在でもあります」


罪人を紹介するような口ぶりだが、しっかりフォローはしてくれている


(ん?彼らヒトガタ自体は保ってなかったか?)


閉じ込められたままの変異体三人、黒く変色し、変わり果てた姿ではあったが人の形を失うほどそこまで容姿の劣化はひどくなかったはずだ


「それでだなマイムラ。此度お前を呼んだのは事前調査のためだ。セランガという生物、何度か調査を行ったものいまだに全貌がつかめていない。お前のいう特殊能力といい知らぬことだらけなのだ」

「報告書にお前の発言はすべてまとめてあるが、改めて知っていることをすべて話してもらう」

眼の隈がひどい翼人と小男風の翼人がまたここに来てからの話をしろと言ってきた


「あぁいいぞ。そのかわりこっちの質問にも答えてくれ。この世界について知らんことだらけなんだ」


舞村はここで知りたかったこの世界の情報を得ようとした。セツナに聞くという手もあったがどうせまた尋問されるというのはわかっていたので、せっかくなら立場が上の者に聞いた方がいいと思ったのだ


「転移人だったか、あぁいいぞ」


こうして二回目の尋問が始まった。あまりにも質問攻めで、舞村は途中で自分が罪人のように感じるも寄生虫関連で知っていることをすべて話した


「なんておぞましい生物だ…」

「だが、それを破壊すれば…」

「おい報告書にも乗って内容が出ていたぞ。一回目からすべて話せ」

「それはすまん。とにかくやつらが自然発生する前に黒い樹みたいなスポナーを破壊すればいい」


翼人たちは特に寄生虫の共食いを続けることで存在を進化するその特異性に驚いているようだ。なぜ共食いが存在意義といってもいいほど共食いするのに、存在が一向に減らないのかといった疑問はスポナーの話を出して解決した。同時にそれを破壊することがやつらの討伐に近づくと。


逆にすべてのスポナーを破壊するまで、そこまでしないとやつらの絶滅など不可能だろう


他にも翼人たちは中の本体を抜かないと討滅できないことは知っていたが、その本体に憑りつかれると寄生されて変異体になることはしらなかった


どうやらステージ1の最初の寄生虫自体知らなかったらしい。舞村は懇切丁寧におのが概念。寄生ステージ、共食いを続けることでの進化段階について解説してやった


そして自分がおそらく今ステージ4にいることも


「おかしくないか?ステージ4は完全に異形に変異するのだろう?なぜ貴様は人の形を保っている。そもそも我らから見ればすべて異形だあんなものは」

「こっちが聞きたい。そもそもあんたらがいう異形といっても曖昧だな。今封じ込められている彼らはまだ人の姿はしているだろう、異形っていうのは空母型みたいなもっとおぞましい、目に入れるのも汚らわしいようなそんな姿をしているんだ」

「貴様はあれらが異形に映らないのか。あの“常に揺れ動く不定形な角度の集合体”を」

「は?」

「住人の名簿から消えている名簿がなかったら判別できないはあんなもの。かろうじて体格から元が翼人だとしぼれたものの…」

「待てどういうことだ。おれが見てきたものとあんたらが見てきたもので認識の違いがあるのか?」

「…共通するのはどれも紫水晶のような瞳を持っていることだ。あのような不定形の虚ろう影でも、両の目はあるらしい」


(????)


舞村は目の前の小男風の翼人が何をいっているのかわからなかった。舞村の目には彼らは確かに悪鬼だが、少し肉体がただれて荒んでいるだけでヒトガタ自体は保っているように見えた


少なくとも不定形だの角度の集合体だのそんなふざけた姿ではなかったのは確かだ


(まぁいいか)


舞村は考えないことにした。このことをこれ以上掘り進めてももっと恐ろしい目に合いそうな予感がしたからだ


「じゃあ約束通り今度はこっちの質問に答えてくれ。まず最初にここはどこだ?」

「なんだまだ聞いてなかったのか?ここは我ら翼人たちの里にして、暗黒大陸に位置する最果ての集落、ナギド村だ」


暗黒大陸、最果ての集落。不穏なワードだ。舞村が目をほそめると男はさらに言葉を続ける


「あぁこの大陸には我ら翼人以外の知的生命体はいない。恐竜と野生が闊歩する暴力の大地よ」


(つまりゲームで例えるところのラスボス前、どころか裏ボス前のエンドコンテンツ級だな。まったく難易度高すぎだろ初期位置)


皮肉なことにあれだけ苦しめられていた寄生虫がいなければ舞村などあっという間に恐竜や怪鳥に食われていたかもしれない


「最もお前のような人族…いやお前は人間ではないのか。が勝手に我らをこの土地に追いやった挙句、暗黒大陸だの不浄の地だの呼んでいるわけだがな


人族。やはりほかに“人間”という種族がいるのか。異世界の人間だから少し道理が違うかもしれないがやはりそれでも人間だ。舞村はこんな愛想の悪いミミズク人間よりも見知った人間に会いたくなった


だが寄生虫をこのまま放置するわけにはいかないし、そもそも共食いしないとどうなろうかわからないからしばらくこの大陸からは出ないが。寄生虫を根絶出来たら外を見に行ってもいいかもしれないと舞村は思った


「そういえばあんたらってなんなんだ?天狗かなにか?」


褐色の瞳と肌から南米系の人種にも見えるが日本風の名前に鷹のような巨大な翼。そして腰に収める母国で見知ったもの


(こいつらいっつも帯刀してるんだよな。しかももろ刀を)


ここまでの要素で初見天狗だと思ったが、翼人翼人と彼らは語る。ハーピーみたいな感じだろうか


「天狗?天狗だと?我らをそんな下賤な種族と一緒にしないでもらいたい」


天狗と聞いた瞬間一斉に声に怒気をはらみ始める翼人たち。そんな怒りもともかく天狗もいるのかこの世界ととのんきに思う舞村


「天狗、やつらはこの世で二番目に忌み嫌われている種族だ。こそこそと群れ、独自の社会を形成し、その傲慢さをいまも肥大し続けている」

「最近のやつらは人狼の領域まで入り込んで支配域を広げているぞ。おぞましいことじゃて」


この場では珍しい老齢の女性翼人も初めて口をきいた。この天狗という種族はそうとう嫌われているらしい


(人狼?といい妖怪みたいな連中が一種族やってるのか。そうとう変わってるなこの世界)


寄生虫の居場所はあるのだろうか?いやないだろう。即決した


(寄生虫はなんとしてでも駆逐するしかない…)


「じゃぁ寄生虫…セランガについてはよく理解できたな?遠征はスポナーを見つけて破壊する方針でよろしく。いやそれをやらないと意味がないからな」


(よしよし、確保)


話を片付けて、さっさと部屋を出る。正式な引継ぎかなんかで引き留められたがどさくさに紛れて髪の毛も回収もできたし、聞きたいことも聞けたしもう用はなかった


これでいつでも小男風の翼人に変身できる。寄生虫を根絶できたらさっさとこんな大陸高跳びだ。それで人族の世界だか人狼の世界だか天狗のテリトリーに行って元の世界に戻る方法でも探してみようかと舞村は考えた


まぁ寄生虫を根絶できるのかという話だが



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