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45「変身、やれそう」


 夜が明けました。

 さぁ、ここまでは至って順調でしたが、ここからは魔の棲む森ですから、ようやくカコナの出番ですね。


「ではカコナ、申し訳ないですけどよろしくお願いしますね」


「任せといて!」


 斥候(スカウト)としてのカコナの腕の見せ所です。


 先日のマナスポットを目指している訳ですが、リザでは魔力の探知ができません。


 そうは言ってもマナスポットですから精霊力(マナ)を探知すれば良いのですけど、マナはこの森のどこにでもありますし、マナスポットも一つではありませんから逆に探知が難しいんですよ。


 加えてリザだけでなくレミちゃんも方向音痴だそうですからね、はっきり言ってカコナ無しではちょっと難しかったでしょう。


 かく言う私もあまり道を覚えるのは得意じゃないのでカコナが協力してくれて良かったです。




 どうやらね、カコナは本当に期待以上に斥候(スカウト)としての才能があるようですね。


 魔獣や魔物を()()()避けつつも、順調に目的のマナスポットへ近付いている様ですのよ。


「順調?」


「……うーん、多分」


 自信なさげなのが更に良いですね。勝手なイメージで申し訳ないですけど、調子に乗るとミスするタイプな気がしますから。



 その後も本当に順調でね、二、三度魔獣に出会(でくわ)した程度で道に迷う事なく、お昼前にはマナスポットまで辿り着いて見せましたよ。


 森の中の、少し木々の拓けたところ。

 この間、やけにキャラの濃い若い魔族レダ・コルトをアレクが屠った場所ですね。


「本当に優秀。レミたちのパーティに欲しいくらい」


「ホント!? そしたら毎日ジン様と一緒じゃん!?」


「でも武力的に難しい。あと加入だと勇者パーティのバフが効かない」


「……残念。ぬか喜びじゃーん……」


 ごめんなさいね。

 ずいぶんと昔にわた――女神ファバリンが(こしら)えた仕組みがそうなっているんですよ。


 かつてアネロナを含む幾つかの国に用意された、一国につき一人だけに与えられる勇者認定の仕組み。

 その勇者認定を受けた者のパーティにまでバフの効果は及ぶのですけど、あとから加入してもダメなんですよ。


 そうでないと、各国で『国民総勇者パーティ』なんて事になりかねません。


 魔族の国ロステライドに対抗する力としての勇者認定が、各国の軍事バランスを崩壊させてしまうのは本意じゃないですからね。


 ま、仮に国民全てにバフを与えたとしたら、全員がほんのちょっぴりのバフになってしまって屁のつっぱりの本末転倒ですけどね。



 さ、とにかくマナスポットに辿り着きました。ここからは私の出番ですね。



「あ! おばあちゃん!」


『ご苦労様でしたね、カコナ』


「お二人のお陰でここまで来れましたわ。お祖母様、ここからどうすればよろしいですか?」


『ええ。とにかく貴女の精霊力を空っぽにしなければなりません』



 リザが精霊力を使い切るべく、癒しの精霊術を使って使って使いまくります。

 カコナもレミちゃんも、どこにも怪我なんてありませんが、何度も何度も重ね掛け。


 小一時間ほどそれを繰り返し――


「――ふぅっ。こんなものでしょうか。恐らく蓄えていた精霊力は使い切ったと思うのですけど」


『リザご苦労様。では今度は少し休みなさい』


 精霊力は魔力と違って使うそばから回復しますが、マナスポットの中央、特に何もない地面にリザを座らせてさらに馴染ませます。

 


「あのさ、なんだか体に元気が漲ってしょうがないんだけど」


「レミも」


 なんだかいつも以上にお肌の張りがピカピカの二人が揃ってそんな事を言いました。


『リザの癒術は精霊力を使っているからでしょうね。魔力による癒術と根っこは同じですけど、僅かにバフの効果が出る筈ですよ』


「へぇ、そうなんだ」


「興味深い。今度調べてみる」


 そしてさらに十数分――


 この地のマナがリザの体に満ちたでしょう。


 ――さぁ。そろそろやってみましょうか。



「いよいよですか?」


『ええ、精霊力の使い方を教えます。口ではちょっと説明が難しいので直接教えますから、貴女の額を私の額へくっつけて下さいな』


 小さな体の私のオデコに、リザが膝を折って腰を曲げ、自分のオデコをくっつけようと大きな体を出来るだけ小さくしようと頑張ります。


「――きゃっ!」


 ぐらりと体を倒してしまったリザが、私の体へ倒れ込み、あわや下敷きかと皆んな息を呑みましたが全然平気です。

 リザの体はスケスケの私の体を通り抜けてしまいましたから。


『リザ、貴女は膝をついてじっとしていなさい。私がくっつけますから』


「はい、お祖母様」


 リザは前受け身のせいで掌についた砂を払いつつ、良い返事でそう言って膝をつきじっとします。

 そのオデコへ、私のオデコが触れる――と言っても触れはしませんが――瞬間、『変身の仕方』の知識を流し込みました。



『どうです? やれそうですか?』


「変身……、やれそう、です」



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