41「四人の女子会」
「初めまして。リザの祖母にございます」
「な、ななななな!? なんなのこのスケスケおばあちゃんトロル! お化け!?」
突然姿を現した私にカコナが盛大に驚いてくれましたが、スケスケおばあちゃんはちょっと語弊があって恥ずかしいですね。
服だけじゃなくて体も透けてるんですからね。
「カコナ! しーっ!」
リザの言う通り、大きな声はいけませんよ。王城の者に見つかるとややこしくなること間違いなしですもの。
だって、幸い紅茶を淹れに離れましたけど、ジル婆やは普通に、本物のリザの祖母を知っていますからね。
似ても似つかない私を見たらすぐに嘘がバレてしまいます。――まぁ、最初から嘘をつかなかったら良かったんですけどね。
「レミちゃんにカコナ。リザを心配してくれてありがとうございます」
「当然のこと」
「友達なんだから当然なんだけど……? なんでワタシには『ちゃん』無し……?」
カコナが小さな声でごもっともな疑問を呟きましたが、ホントですね。なぜかカコナは呼び捨てでしたよ私。
きっといつの間にかリザがカコナさん呼びからカコナ呼びになったからでしょう。
最初っからだったら御免なさいね。
「リザにレミちゃんにカコナ。まず先に言っておくことがあります。三人とも聞いて頂けますか?」
三人がそれぞれ、ウン、とか、ええ、と返事を返してくれましたので、速やかに話を進めます。
「私はカコナが言った通りにお化けです。その存在自体がややこしいですから私の事は秘密、ジルやアイトーロル王、アレク達にも秘密にして頂けますか?」
単純に驚いて頷くカコナに対して、レミちゃんは知的好奇心たっぷりに私を見つめてゆっくりと頷きました。
私の正体がバレるとしたら、それはレミちゃんにでしょうね。別に私としてはバレたって良いんですけど。
と、その時ドアがガチャリと開きました。
「あーぃ、お待っとうさーん。婆ぁ特製の旨ぇ紅茶だぜ――」
「ジル婆や! 大変申し訳ないのですけど、ちょっとお願いしても宜しいでしょうか!?」
ジルが部屋へ入る前、部屋に入らせない様にリザが紅茶の乗ったトレイを受け取って言いました。
「なんでぇ、姫様の頼みを聞けねぇ訳ねぇよ。どうした?」
リザはジルに、明日のお仕事は休む旨をニコラに伝えてくれる様に言付けました。もう夜ですし、ここから大声で伝えるのは禁止で、と付け加えるのも忘れずに。
「分った。ほんで? 娘っ子どもはどうすんだ? 泊まんのか?」
「あ、そうですね。二人には泊まって頂きますのでジルもそのまま寝んで下さい」
「わぁった。夜更かしすんでねぇぞ、姫様」
そう言ってジルが部屋から離れていきました。見つからずに済んで良かったです。
「なんだか悪いことをしてる様でドキドキしますね」
少し赤味の差した頬でリザがそう言って微笑みました。
ジルが淹れてくれたお紅茶を頂きながら、お話の続きを進めましょうか。
私だってたまには美味しいお紅茶頂きたいですからね。
「どうかしましたか?」
カコナとレミちゃんが私のことをジロジロと見詰めていました。
「いや、スケスケボディで紅茶飲んだらどうなるのかと――あれ、見えないね、紅茶」
それはそうでしょう。
透けてると言ったって、胃や食道が見えてるわけじゃありませんし、物理的に飲んでるわけでもないですしね。
紅茶から紅茶のお化けを取り出して飲んでいますから――って別に必要ありませんね、この情報。
「それでリザ、私に聞きたい事ってなんでしょう? 恋愛の相談ならば、よくぞこの私を相談相手に選んだと言わざるを得ません。かつて若い頃には私もブイブイ言わせ――」
「――その、恋愛の相談と言うよりですね」
なんだ、違うんですか。
このファバ――この私に恋愛相談に乗ってもらえるなんてそうそうない、勿体ないことなんですのに。
でも正直言えば、私だってきゃあきゃあ言いながら盛り上がりたかったんですけど……。
「その……、変身能力について、教えて頂けないかと――、あっ、いえ、この間偉そうなことを言ったのは分かっているのですけれど……」
……そうですか。
目覚めてからずっと明るく振る舞ってはいますけど、今回のことは相当に堪えたんですね。
「なになにそれなに!? 変身能力ってなに!?」
「レミも知りたい。教えて」
そうでしょう?
女の子なら誰だって、御自分が望む姿になれると聞けば知りたがりますよね。
特に、恋しちゃってる女の子なら、ね。




