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10.5『アレックス・ザイザール 1』


 ……結婚かぁ。


 爺やさんと婆やさん、どう見ても仲が悪そうに罵り合ってるけど、どことなく楽しそうな気がするんだよね。


 もちろん離婚するのは嫌だけど、二人みたいにいつまでも仲良しでいたいな、リザと。



 そう言えばさっきのリザ、いつもよりオシャレで可愛かったなぁ。

 オフショルから覗く逞しい肩周りなんて僕、もう我慢できなくて飛び付いちゃいそうだったよ。


 …………あれ?


 なんだかはっきり覚えてないんだけど、僕どうしてたんだっけ?

 リザのオフショル以外が思い出せないぞ?


 こういう時は順番に思い出してみるのが良いんだよね。僕知ってる。


 えっと、この何日かはいつもみたいに魔の棲む森で魔物の強さレベルの調査だったよね。

 魔王を倒す前と比べると強くなってるけど、最近は魔王を倒した直後よりはちょっと弱くなってた。


 魔王を倒したあと、アイトーロルに戻る時が一番大変だったもんなぁ。


 たぶん魔王のバフの関係だと思うけど、魔王が死ぬ事で強くなるバフなのか実は死んでなかったのか、その辺りは分かんない。

 だけど森で見た通り間違いなく魔王は生きてた。


 生きてたのに、魔物がちょっと弱くなってるのが分かんないんだよね。


 なんでだろ? ま、ちょっと考えたぐらいじゃ分かんないだろうからあんまり考えないけど。



 えっとそれから……魔王と会って、慌てて魔の棲む森から戻って……、そう、けどなんだか嫌な予感がしたから王城を素通りして街へ行ったんだ。

 そしたらオフショルのリザが居て……、飛び付きそうになって……、なんだっけ?



 なんだか頭のてっぺんがズキズキするし、なんとなく胸の辺りが薄ら寒い気もするし。

 アイトーロル王がアネロナ宛ての手紙を書き終わる迄には思い出したいんだけど――


 あ〜でもリザのおめかし可愛かったなぁ。



 広場にある女神ファバリンのおっきい木の下で待ち合わせてさ、それで僕も大人っぽいカッコしてさ、早めに行ってリザが来るのを待つの。


 約束の時間通りに来たリザはきっとこう言うよね。

 『ごめんなさい、待たせたかしら?』


 それにこう返すんだ。

 『ううん、ちっとも。僕も今来たところだよ』


 でニコッと微笑んで、『さっ、行こ』ってね。


 そっと肘を張ってリザに差し出す僕、緑の頬をちょっとピンクに染めたリザが僕の腕を取って言うんだ。


 『ええ。アレク、行きましょ』




 ――これ違う。思い出した――


 腕を組んでたの僕じゃない。

 トロルの男だ。

 オフショルのリザと腕を組んだトロルの若い男。



 ……今はもう、魔王なんてどうでも良いや。

 こんな事してる場合じゃないよ!

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