51 作戦会議
◇◇◇
「魔力を吸収されている?」
ティアラの言葉にアデルは驚きの声をあげた。
「ええ。そうでないと、あの魔力の枯渇状態は説明できないわ」
ただ加護が薄れたのではない。魔力を吸収されたことによって加護が消えたのだ。メンバーの中で一番魔力量の少ないセバスが倒れたことによって、ティアラは確信を得た。
「そうか。しかし、何のために。まさか王族が戦争に利用するためになんらかの魔道具を使ったのか?……いや、大地の魔力が枯渇して困るのはアリステア王国だな」
「そうね。魔力が枯渇したために大地は恵みを失い、魔物の被害が増えた。しかもアリステア国内だけじゃない。周辺諸国の魔物被害も、魔力が弱まったことが原因だと思う」
ティアラの言葉に誰もが言葉を失った。
「ノイエ王国も例外じゃない、か」
ティアラはこくりと頷く。
「……問題は、誰が何のために魔力を吸収しているか。ですね」
エリックがポツリと呟いたセリフに、誰もがあのおぞましいドラゴンの影を思い浮かべた。
「フィリップが、かかわっているのかもしれない。ううん。多分、きっと、そうだと思う」
ティアラもまた、苦しい胸の内を吐露する。
「フィリップが、自分の身に魔力を取り込んでいるということか」
「多分……」
「だが、何のために?フィリップは取り込んだ魔力を使って何をしようとしているんだ?」
「それは……分からない。今のフィリップが何を考えて、何をしようとしているか。私にも分からないの。フィリップが闇に囚われているのならなおさら」
「そうか。そうだな。すまなかった」
「ううん」
思い出すのはあどけない金の瞳と、甘えてくる可愛い鳴き声。いつだって、一緒にいた可愛い相棒。フィリップの気持ちが分からないことなんてないと思っていた。
「フィリップに逢わなきゃ。逢って、確かめないと」
「でもどうやって……」
「ああ、うかつにアリステア王国に足を踏み入れると、俺たちも魔力を吸い取られるかもしれないってことだろ?魔力がない状態でどう戦うんだ。それにアリステア王国の王族はそんな状態で無事なのか?」
ジャイルの言葉にエリックは何と言うこともないように頷く。
「今のアリステア王族に魔力のあるものはほとんどいませんからね。魔力がなければ一般人と同じように大した影響は受けていないでしょう」
「そうか……じゃあ、なぜ魔力量の多いエリックをこの時期に呼び戻そうとしたんだ?たとえ王族には少なくとも、国に魔導士が全くいないわけでもないよな?ある程度魔力のあるものがいるなら、この現象が分からないはずがない」
「そうですね。エリック様が帰国したら魔力を吸収されて枯渇状態になるのは目に見えているのに」
「ああ、いくら回復魔法や雷魔法が使えても、魔力がないんじゃ役に立たねえよな」
三人の言葉にエリックは静かに微笑んで見せる。
「その魔力が、もしかしたら必要だったのかもしれませんね……」
















