39 ノイエ王国へ
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エスドラドを後にしたティアラ一行は、一路ノイエ王国に向かっていた。
「エスドラドがすでにアリステアの手に落ちているとは思わなかった。ジャイル、ミハエル、今回ノイエ王国への公式訪問はできないが、できれば内密にノイエ国王と会談したい。頼めるか?」
「分かりました。僕たちとしても国内の様子が気になりますしね。ノイエ王国に入ったら、父上に連絡を取ってみます」
「ああ。頼む。それにしても、二人とも随分久し振りにお逢いするんじゃないか?最近はあまり帰っていないようだが」
ジャイルとミハエルは10歳からアリシア王国に留学しているが、小さい頃は機会をみてたびたび帰国するようにしていた。しかしここ数年は、冒険者パーティー「女神の祈り」としての活動を優先するあまり、足が遠退いていたようだ。
「アリシア王国ですべきことが沢山ありましたからね。でも、定期的に連絡は取ってますよ」
「はぁ、あの暑苦しいオッサンの相手をしなきゃならないと思うと、気が重いぜ」
そういうと、ジャイルは大袈裟に溜め息をついて見せる。憎まれ口を叩いてはいるが、その表情は明るい。二人の様子をみる限り、父王との関係は良好なようだ。
「ノイエ国王にお逢いするのは初めてよね。緊張しちゃうなぁ」
二人を初め国王夫妻から何度も国へ招待されたが、ティアラがノイエ王国に行くのは今回が初めてだ。両親と兄達が過保護、と言うのはもちろんあるが、ティアラの持つ能力を考えると、そう簡単に国外に出すことはできないと言うのも分かる。
ノイエ王国は元々軍事大国。今の王の代になってから随分強硬姿勢は改善されたが、ノイエ王国内部のみならず、周辺各国に置いてとも、無理矢理にでもティアラを手に入れたいと思う勢力があってもおかしくない。
だが、日頃から二人と親しくしているティアラにとって、単純に二人の両親に興味があり、会ってみたいと思うのも事実だった。
(ジャイルとミハエルはお父様似かしら。それともお母様似?)
「ノイエ国王は豪傑だと評判の御仁。お逢いするのが楽しみですな!」
「私は一度神殿の関係でお逢いしたことがありますよ。武勇に優れたお方だと評判ですが、高潔でとても気持ちの良い御仁です。王妃様もとても可愛らしくてお優しい方でしたよ」
「ふふ。二人のお父様だもんね。きっと素敵な方なんだろうな。王妃様にもお逢いできるかしら!」
ティアラの言葉にジャイルとミハエルは顔を見合わせる。
「あー、まぁ、親父と会うことになれば、母上も間違いなくくっついて来るだろうな」
「ある意味父上よりも面倒臭いかも……」
いつになく毒を吐くミハエルに首を傾げる。
「ミハエルはお母様のことが苦手なの?」
「いや、苦手とかじゃ無いんだけど……」
いつになく歯切れが悪い。
「まぁ、会ってみりゃ分かる」
「う、うん。会ってみたら分かるよ」
二人の反応にいまいち納得のいかないティアラだが、国王夫妻と面識のあるアデルとエリックも、にこにこして何も言わない。
(変なの。まぁ、良いわ。お二人にお逢いするのが楽しみね。公式な訪問ではないけど、アリシア王国の王女として恥ずかしくない対応をしなきゃ)
「この歳になってあの二人をセットで見るのは正直きつい」
「同感」
二人が小声でむにゃむにゃ言い合うのを不思議そうに眺めるティアラだった。
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