37 戦鬼解放
♢♢♢
「うわぁぁぁぁ!なんだコイツはっ!」
「ひ、ひぃぃぃ」
「た、助け……」
騎士たちの阿鼻叫喚の声がエスドラドの首都にこだまする。
「うぉぉぉぉ!かかってこいやぁぁぁぁ!!!」
怒号を上げながら重装備の騎士たちを次々とふっ飛ばしていくのは、ジムだ。
突き出される槍や剣をものともせず、巨大な斧をぶんぶんと振り回すその姿はまさに戦鬼。鬼気迫る迫力に、騎士たちは完全に呑まれていた。
「こ、こんな化け物がいるなんて聞いてないぞ!どういうことだっ!」
「ギ、ギルドマスターは満身創痍のはずで……」
かつて「冒険王」として世界に名を馳せたSクラス冒険者ジム・リー。エスドラドの英雄である彼の名を知らないものなどいない。だがそれも、十年以上昔の話のはずだった。
年を取り、病に蝕まれ、数多の傷を負った男の戯言など、一笑に付すようなもの。
しかし今のジムは、圧倒的な豪腕でどんな敵も凪払うと恐れられた伝説の戦鬼そのものだった。
「か、勝てない……」
「て、撤退の命令を……ぐっ!」
弱気に転じた騎士たちに、勢い付いた冒険者たちが容赦なく襲い掛かる。
「オラオラオラ!耳にタコができるぐらい聞かせてくれたアリステア騎士の誇りはどうしたぁ?」
「ヒャハハハ!ほらほら、逃げないと怪我するぜぇ」
もはやどっちが悪人かさっぱり分からない。だが、数の利は騎士たちにもある。首都は大混戦に陥っていた。
「くっ、負けるな!押し返せっ!こっちはあいつらの三倍以上の兵力があるのだっ!寄せ集めの冒険者どもに何ができる!しかもポーションも持っている!我々の優勢は揺るがないっ」
叫ぶ隊長に再び奮い起つ騎士たち。しかし、冒険者たちは不敵に笑った。
「ポーション?それならこっちにも準備はある!舐めんなっ!こちとら根性が違うんだ!何日だって戦ってやらぁ!」
傷付き倒れたと思った者が、ポーションを一気に飲み干すと再び突っ込んでくる。
「なぜ、ポーションまで……」
「ま、まさかすでにポーションの保管場所を抑えられていたのか」
騎士たちに動揺が走る。明らかにおかしい。一体何本持っていると言うのか。戦っても戦っても数が減らないのはそのせいか。
一方ルート侯爵の騎士たちは、そこまで潤沢な量は確保していない。ポーションを持っていない、あるいはすでに使い果たした騎士たちは、徐々に動きが悪くなる。
半日以上に渡る激闘の末、先に撤退を決めたのは私兵団のほうだった。
「くっ、もはやここまでか。撤退だっ!動けるものは速やかに撤退しろ!」
隊長の叫びに冒険者たちの雄叫びが上がる。
「「「ざまぁみろ!俺たちの勝ちだぁぁぁぁ!!!」」」
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