34 アリシア・エスドラド同盟締結
♢♢♢
「こ、これは……」
光が収まった後、ギルドマスターはむくりと身体を起こした。今まで鉛のようだった身体が嘘のように軽い。手を軽く握ってみると、指先まで力が漲っているようだった。
「嘘だろう……傷が全て綺麗に治っている。それに……」
そっと心臓に手をやるギルドマスターをみて、ティアラは小さく頷いた。
「大丈夫。不調の原因は全て治っているはずです。病に犯されていたこと、周りの人には黙ってたんですね」
病は、通常のポーションでは治すことが出来ない。精々体力を回復させたり、自己免疫力を高めたりする程度だ。だからこそ、頑なにポーションを使うことを拒んだのか……。
正直ティアラが後少し遅かったら、間に合わなかったかもしれない。あの状態で良く過酷な牢獄生活に耐えたものだ。
「あんた……聖女様か?」
「いいえ、私は聖女ではありません」
「聖女……いや、聖女でも無理だ。この沸き上がる力は一体……」
それは今まで感じたことの無い力……恐らく≪魔力≫を自分の身体の中に感じるのだ。
「貴方ならきっと、その力を正しいことに使って下さると信じています」
「女神様、なのか……」
「私はただの冒険者。今の私には、それが精一杯の贈り物です」
それ以上聞いても無駄だと思ったのか、ギルドマスターは深く頭を下げた。
「あんたが拾ってくれた命だ。あんたに恥じない生き方をすると誓う」
♢♢♢
「あ、あの!父はどうでしたか?」
下に降りると、心配したマリーが駆け寄ってくる。と、そこに、着替えを済ませたギルドマスターが姿をみせた。
「おう、マリー、心配かけたな」
すっかり回復したギルドマスターを見て、マリーの目に涙が浮かぶ。
「お父さん……馬鹿!馬鹿馬鹿!いつも無茶ばっかりして!」
「すまんな……」
「おやっさん!待ってましたぜ!」
「なんだなんだ、前より元気じゃねえかっ!」
マリーと、口々にギルドマスターの回復を喜ぶ冒険者たちを見て、ティアラは微笑んだ。
(やっぱり、この人を選んで間違いなかったわ)
「あ、あの!父を助けて下さってありがとうございます!」
「いいえ。素敵なお父様ですね」
「はいっ、はいっ」
「取り敢えず、俺が寝込んでる間に何がどうなってるのか、詳しく聞かせてくれるか?」
♢♢♢
アデルから説明を受けたギルドマスターのジムは、大きく息を付いた。
「つまり、俺がこいつらを纏めて国を興すってことか?」
「ああ。どうだ?やれるか?」
「そうだな。それしかねぇだろうな。後はおいおい、各ギルドから信頼できる人材を引っ張ってくるか。おいお前らっ!しっかり働いて貰うからなっ!覚悟しとけよっ!」
「ひぃぃぃ、ほんとに元気過ぎねぇかぁ?」
「たく、元気になった瞬間から人使いが荒いぜ」
文句を言いつつも、冒険者たちの顔は明るい。
「よし、じゃあここに署名してくれ」
アデルが急いで作成した書類を確認すると、ジムが署名する。
こうして、新生エスドラドとアリシア王国の同盟が新たに結ばれた。
















