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11 女神降臨!?

 ♢♢♢


「初めまして。私たちはアリシア王国からきた冒険者パーティー『女神の祈り』よ。私はティアラ。よかったら君の名前を教えてくれる?」


「ぼ、冒険者様ですか……。お、おら、あ、いえ、ぼ、ぼくはトムです」


「トム君かぁ。よろしくね」


「よ、よよよよ、よろろろろろ……」


 妙にキラキラとした目で微笑まれてしまい、真っ赤になって倒れそうになるトム。

(な、な、な、ち、近い~~~~!!!なんでこんなにキラキラしてるだっ!こげな女神様みてえなお人に見つめられたら、おら緊張で死んでしまうだ~~!!!)


 慌てふためくトムの様子に、ジャイルとミハエルは苦笑いしかでない。


「おい、ティアラ、やめてやれ。お前の姿は子どもには刺激が強いから」


「同感。この子、さっきからフリーズしてるよ?」


(ひ、ひいいいい!!!こっちの兄さん達も見たことねぇぐれぇの男前でねぇか!なんなんだべっ!この人ら一体なんなんだべかっ!)


 緊張すると訛ってしまうが、身なりからして身分の高そうな人達なので必死に言葉を選ぶ。ちなみにこの世界は大陸共通語のため、多少の訛りはあっても言葉は通じる。


 見たこともない怪物とともに侵入してきた人間に、森に隠れ住んでいた獣人達は震え上がった。空飛ぶ魔物を使役する恐ろしい人間だ。戦争が始まり、次々に消えた仲間たち。村に残されたのはろくに動けない年寄りとまだ幼い子どもばかり。


 人間に獣人の村の存在がバレたら、何をされるかわからない。このまま何事もなく立ち去ってくれれば、と願っていたのに、大切な湖の側で何やら怪しい動きをしているではないかっ!


 そこで村の子どもの中でも年長者だったトムが、勇気を振り絞って近くまで偵察にきたのだ。なにしろ逃げ足の速さだけには自信があった。


 貴重な水源であった湖が汚染され、村では深刻な水不足に陥っていた。食べ物もいよいよ底をつく。こんな状況では、いかに屈強な獣人族とは言えまともに戦うこともできない。


「なるほどな。で、隠れて俺たちの様子をうかがってたが、セバスの飯に釣られて出てきたと?」


 アデルの言葉に涙目になるトム。


「う、うう、しっかり見張るつもりが、気が付いたらふらふらと吸い寄せられるように……」


「ハハッ、まぁいいじゃねえか。俺たちは略奪者なんかじゃねえから安心しろ」


 ジャイルの言葉にトムはほっと胸を撫で下ろす。


「は、はい。でも、じゃあ、皆さんはどうしてここに……」


「私たちはノイエ王国に向かう旅の途中なの。この大陸が見えてすぐに森が焼けているのが見えたから、気になって降りてきたんだけど……」


「そうだったんですか……」


 トムは悔しそうに唇を噛み締める。


「あの忌々しい蛇どもが!森を焼き尽くしてしまったんですっ!大切な湖まで毒で汚染されてしまってっ……くそっ!た、大切な森と湖が……」


「ヒートスネークか……これまでにもこんなことが?」


 アデルの問いにトムはふるふると首を振る。


「いえ。こんなことは始めてだってじっちゃん達も言ってました。突然見たこともない数の蛇があっという間に森を埋め尽くしたんです」


「うわぁ。ちょっと想像したくないな……」


 顔をしかめるミハエルにティアラも真っ青な顔でコクコクと頷いた。ドラゴンは好きだが蛇は苦手なのだ。


「湖の様子はどうだ?」


 アデルの問いにティアラとエリックはにっこり微笑む。


「エリックが助けてくれたからバッチリよ!」


「いえいえ、ティアラの浄化能力が高いからです」


 二人の言葉にトムは首を傾げる。そう言えばこの二人は湖で何をしていたのだろう。以前は貴重な水場だったが、今では近付くだけでも危険な場所だ。


「あ、あのう……湖は今蛇の毒に汚染されてて……」


「あ、それ全部浄化しといたから。もう大丈夫だよ」


「……へ?」


 ポカンと開いた口が塞がらないトム。だが、


「ほらほら、取り敢えず皆様、食事の用意ができましたぞ。難しい話はあとあと!さぁ、坊主ももっと食べて力を付けんとなっ!」


 次々と運ばれる美味しそうな料理を前に、思わず尻尾をブンブン振ってしまうのだった。

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