4 創世の魔法の使い手
◇◇◇
「アリステア王国に行くって……」
ティアラの言葉に全員が言葉を失った。
「わかってるのか?これから戦争になるかもしれないんだぞ?国同士の争いに巻き込まれたらどうするんだ」
「ティアラが今この国を出るのは危険だと思う。どの国も今、ティアラのことは喉から手が出るほど欲しいはずだよ。手に入れるためにはどんな汚い手を使ってくるかわからない」
ジャイルとミハエルの言葉はもっともだ。二人がティアラを心配してくれているのは痛いほど分かる。だが、
「自分がどれだけ危険な立場かはわかってる。でも、行かなきゃいけないの。そのドラゴンは、私がずっと探し続けていた友達かもしれないから」
ティアラはパーティーのメンバー全員に向けて、きっぱりと告げた。
「ドラゴンが友達?何言って……」
ティアラの発言に戸惑うジャイル。だが、エリックは思い当たるところがあったようだ。
「ティアラがドラゴンに並々ならぬ関心があることは気が付いていました。良かったら、そのドラゴンについて私たちにも教えていただけませんか?」
エリックの言葉にティアラはしばらく考えた後、重い口を開いた。
「そのドラゴンは、500年前にアリシアと一緒にこの国を作ったドラゴンかもしれないの」
「ドラゴンが、国を作った?」
エリック、ジャイル、ミハエルが目を見張る中、それまで成り行きを見守っていたセバスが声を上げた。
「なんと……姫様は創世のドラゴンをご存じでしたか……」
「じいや、もしかして、フィリップのことを知ってるの?」
「はい。創世のドラゴンは、白金の翼を持つ美しいドラゴンで、この大地を祝福し、大いなる実りを与えたと……しかし、大賢者アリシア様の死後、忽然と姿を消したと言われてます。大賢者とともに天に召されたのではないかと思われておったのですが……」
「嘘、フィリップが姿を消した……そんなはず……」
「本当ですじゃ。大賢者アリシア様の死後その姿を見たものはいないと言われております。当時この国の守護者たるドラゴンが消えたことは不吉なことと言われて、その事実は歴史書の一部にしか記載されておりません。今ではわしらのように、王家に仕える特別な家系にのみ伝わっておる話ですからのお」
「そっか。じいやに聞いてたらもっと早く知ることができたのかもしれないね……」
「いや、待てよ。この国を作ったアリシア様が亡くなったのは500年前なんだろう?そのとき姿を消したドラゴンとはいつあったんだよ」
ジャイルの言葉にティアラは覚悟を決める。
「信じられないと思うけど……私がそのアリシアなのよ。500年後の世界に転生したの」
ティアラの言葉に言葉を失う三人。しかし、エリックだけは静かに頷いていた。
「多分……そうではないかと思っていました」
「エリック!?お前、今の話信じるのかよっ!」
「ええ。ティアラがそのことに気が付いているのかどうかはわかりませんでしたが。魂は同じだと」
エリックの言葉に今度はティアラが目を見張る。
「なんでそんなことわかるんだよ」
ジャイルの低い声にエリックはにっこり微笑んだ。
「初めて会ったときに虹色の魔力を目の当たりにしたからです。私の知る限り、創世の魔法を使えるのは、女神アリステアと大賢者アリシア、ティアラだけです。三人が同一人物、もしくは近い魂を持った人物だと思っても不思議ではないでしょう?」
「女神……」
「創世の魔法……」
「姫様が大賢者アリシア様の生まれ変わり……」
三人がそれぞれ難しい顔で呟くのをティアラは祈るような気持ちで見守る。
「急にこんなこと言って、信じられないのもわかる。でも、今は私を信じて欲しい。もし、アリステア王国のドラゴンが本当にフィリップだったら……この世界は滅びてしまうわ」
「「「世界が滅びる!?」」」
ティアラの悲痛な訴えに誰もが声を失った。
















