10 初の専属クエスト!森の平和維持活動!
◇◇◇
「何か変わったことはあったか?」
「無いな。ここは本当に戦闘があった場所なのか?そんな風には見えないが……」
大量の魔物発生の報を受けて調査に向かった王国騎士団の面々は、現場の様変わりした光景に困惑していた。雷撃で一面焼け野原になったと報告を受けた場所は、辺り一面花畑となり、白い可憐な花が咲き乱れている。
元々少し開けており、一時的な休憩の場所として使われることもあった場所だ。しかし、周囲を背の高い木がぐるりと取り囲んでいたことから光の届かない陰鬱な場所だった。それが今では、周辺の木々が無くなったことで明るい柔らかな日差しが差し込むようになり、この森の陰鬱なイメージとはかけ離れた場所になっている。
「なんていうか、のどかだな」
「ああ、今度彼女とピクニックにこようかな……」
騎士たちが困惑しているなか、カミールとアデルがやってきた。
「こっちの様子はどうだ?何か変わったところはあったか?」
「はっ、それが……戦闘の痕跡は見当たらず、報告のあった場所は見たことのない花の群生地となっているようです」
辺り一面の花畑を見てカミールは溜め息をつく。
「ああ、ここも花畑になってるな。問題無い。害のある花ではないから安心しろ」
「はっ!この花はいったい……森で見たことはないと思うのですが新種でしょうか?」
「なんでも……森の瘴気を吸収して清浄な空気に変える作用があるそうだ。今後この花の群生地は保護地とする。冒険者にも通達しておくように」
「「はっ!」」
(全く、またとんでもない花を作ってくれたな……)
カミールが花をみて溜め息を付いていると、それを察したアデルが肩を軽く叩いて慰めてくれる。
「ティアラいわく妖精の仕業らしいぞ?森の中でも瘴気の強いところに根付いて瘴気を吸収してくれてるらしい」
「妖精が?」
「ああ、森のあちこちに住み着いて花を育ててくれてるそうだ」
「そうか。それは助かるな。以前来たときよりも随分瘴気が和らいだ気がする」
「そうだな。ここは特に花が多いから、瘴気も多い場所だったんだろう。より瘴気の多い場所に群生するそうだ」
「この様子だと森の復旧作業は必要ないな。むしろ果実やキノコ、薬草などの実りも例年よりいいと報告を受けている。まるで森全体が活性化しているようだと。魔物たちの様子はどうだ?」
「はっ!通常森に生息する魔物との遭遇は数件あったものの、瘴気の渦や新たな魔物の発生は確認しておりません!」
「そうか。ご苦労。城に帰って報告書をまとめてくれ」
カミールとアデルは先日の一件から森の調査を続けていたが、その後魔物の異常発生は起こっていない。森はすっかり平和を取り戻していた。
「しかし、結局魔物が異常発生した原因は分からなかったな」
城に帰って報告書を読んでいたカミールは小さく溜め息をついた。
「エリックによると、まるでティアラたちを取り囲むようにして魔物が生み出されたということだ。たまたまなのか、ティアラとエリックに何か原因があったのか……」
「2人の強すぎる聖属性魔力に即発されたという可能性もあるのか?」
ソファーで腕組みをして考えていたアデルがふと思い付いたことを口にする。二人の共通点と言えば、二人とも類をみないほど高い聖属性魔法の使い手であることだ。
「まだ何もわからないな。ただ、こうした現象が続くようなら可能性はないとは言えない」
「そうか。ただ、森の浄化作業を辞めるわけにもいかないよな」
「ああ、あの花のおかげで随分瘴気が減っているらしいが、定期的な見回りは必要だな。花や妖精の管理にはティアラが適任だろうし、森の浄化作業は元々神官であるエリックの管轄だ」
「まぁ、二人がいれば何かあったときも対応できることは今回のことで証明されたよな」
「かといってティアラが危険な目に合う可能性がある以上二人だけに任せるわけにはいかない」
「だな。どうする?セバス、ジャイル、ミハエルの三人には取りあえず今後は毎回同行するように話してあるが、腕利きの冒険者か騎士団も同行させるか?」
「いや、見たところ以前よりも森の状態は良くなっている。大人数を派遣していたずらに人民の不安を煽るのは避けたい。ティアラとエリックにはチームとして活動して貰うのが良いだろう。お前もなるべくついていてやってくれ」
「了解。冒険者ギルドからもまだ森に入れないのかって苦情が届いてるしな。森での活動許可を出しても?」
「許可する。ただし、報告は定期的に行ってくれ。王室としてティアラたちのパーティーに正式に依頼しよう」
「初の専属クエストだな」
「クエスト名は『森の平和維持活動』ってとこか」
「平和維持ねぇ。ま、破壊活動って言われるよりマシだな」
「違いない」
不名誉な二つ名に落ち込んでいたティアラを思い出し苦笑いする二人だった。
大変お待たせしました!
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